【映画感想】シン・エヴァンゲリオン劇場版:||

 

One Last Kiss

One Last Kiss

  • 発売日: 2021/03/09
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 エヴァンゲリオンを終わらせる映画。清算する映画。社会現象にまで広がった25年に、けじめを付ける最終作。

私は大学時代にTVシリーズと旧劇場版を一気観したところからなのでリアルタイムで見ていた訳ではないのですが、それでもエヴァが終わったということへの感慨がありました。

 

以下ネタバレありです。

 

 

 

 

 

これまでの全てを回収していくのですが、難解な用語など分からないことは分からないままどんどんエスカレートしていくところはエヴァだなあと。でも必要なことはちゃんと回収する。TVも映画もこれまでの全部を踏まえて、ちょっと説明過多になったり説教っぽくなったりしても全部ちゃんと答えの方向に導いていく。まさかこんなに真正面から落とし前をつけるとは思っていなかったです。そこはもう本当にすごい。逃げちゃダメだを地で行ったような感じ。いやなんかもう、めちゃくちゃにえらいと思いました。

面白かったかと言われるとなんとも言えないところはあるのですが、そうやってきっちり向き合ったからこそ、ああ終わったなと、観終えて妙に清々しくなる映画です。

ただ、これはエヴァを終わらせるものだけど、観客のエヴァを終わらせてくれるものではないと感じます。どちらかというと、お互い25年考えてきたことの庵野総監督との答え合わせ。これまで色々あったのだろうけれど、人間とこの社会と未来に対して監督がとても前向きになったように感じるところがあって、それを含め、俺はこう生きてきたよ、君たちはどう生きてきた? みたいな。

なので、お前が悩み始めたからみんな悩んでたのに一人解決してスッキリみたいな顔してるんじゃねーよという気持ちがなくもないです。なくもないのですが、猶予期間は25年あった訳だしなあ……。

 

お話としては、ものすごく普遍的で、真っ当な物語に落ち着いたという感じはします。少年が父親を超える物語、母親から巣立つ物語。子どもたちはちゃんと大人になって、それぞれの人生を生きていく。

終盤にゲンドウが突然の長尺自分語りを始めたのは面食らったというか、笑っちゃいそうにもなったのですが、今までシンジから見て恐怖と超越の象徴みたいだった父親が、結局ただの人間であったということが見えるのは、父親超えのテーマとしてしっくり来るものではありました。それにしてもあのシーンは圧が強くて、監督の自分語りかと。

序盤に出てきた第3村は、作中でも一番フィクショナルな人類の未来への希望が託された場所だと思います。やっぱりどうしても、アフター3.11とかアフターコロナみたいなことを考えちゃうシーン。その被災後に不安定な環境下でもしぶとく生きる人たちの中に、人ではないレイ(そっくりさん)を放り込んで、人が生きることの象徴としてやらせることが農業なのも、生命の未来の象徴として描かれるのが赤ん坊なのも、素朴でベタすぎるくらいだと思いますが、最後まで見るとめちゃくちゃベタをやりきっている話ので納得感はあります。

それはそうと、レイ(そっくりさん)が村の人々と触れ合うことで自我を育みながら幸せに暮らす話で良かったじゃんみたいな気持ちが、どうしても捨てられない。つらい。レイの可能性の一つとして結末で描く未来に繋がっているのは分かるけどつらい。

アスカは今回も不憫で難儀な子で、大人にもなれないし、子供でもいられないまま、ずっと一人で頑張って頑張って頑張って、死装束着て特攻して最後は敵に利用されて、でも彼女にケンスケがいて本当に良かった。子供のままに大人にもなったようなケンスケが側にいるなら、アスカはこれからきっと大丈夫だと思えました。

そんなアスカ含めて終盤の子どもたちカウンセリング&自立RTAみたいになっていたところは変な面白さがありましたが、でも絶対に誰もエヴァに置いてはいかない、全部責任は取るし全部決着をつけるという作り手の強い気持ちを感じます。大人たちの抱えてきたものへの決着の付け方も含めて、そこは執念だと思いました。

そうなると確かにシンジがレイやアスカと一緒になるのは違うのですが、マリと一緒のエンディングはちょっとびっくりしました。というかこの人、アスカが14年先に生きちゃったからもう好きではいられないって言っている横で、14年どころか親世代なんですけど。同世代の仕事仲間の息子にちょっかいをかけてるのちょっと事案では。でも、最後の駅のシーンの少し大人になった姿で好きって思っちゃったので負けです。

そしてシンジくんはすげーよと。Qであんな事があったのに、それで立ち直れるのも、そこから一足飛びに成長したのも、覚悟が決まったらとんでもない突破力を持っているのも全然普通じゃない。ウジウジしているところが目立つけれど、やっぱりヒーローでまさしく主人公なのだなと思いました。特別だからこそ、特別じゃないサクラやミドリと対峙するシーンが際立つのだなとも思います。

 

全体的に言ってることは分かるが釈然としないみたいなところもあるのですが、まあ私はエヴァに人生乱された人ではない(エヴァの影響を受けた作品には散々乱されてきたけど)ので深くは考えないことにして、最後に駅から駆け出した二人を見て、ようやくだな、清々したな、さて今日からいっちょ頑張って生きてくか! という気持ちでいようと思います。終わった! 良かった!