- 作者: 森田季節,小山鹿梨子
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2012/03/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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神様や魔女や都市伝説の話だったり、自分と全く同じ自分が出てくる話だったり、かと思えば普通のクラスメイトや姉妹、さらには小さな女の子とお姉さんの話だったりとバリエーション豊かな作品ですが、どこか少しだけ踏み出したり、踏み外したりしたところで描かれる、二人の関係というところは通じているような感じです。
話の中では、いじめっこといじめられっこという二人の関係が、いじめられることで逆に惹きつけて支配していくような「飼い犬よ、手を噛め」がツボでした。こういう外から見える関係とは逆に、精神の部分で逆転していくような関係はたまらないものがあるなと。ただ、弱気なだけに見えた子が見せる底知れない何かに、強気な子が動揺するというシチュエーションは美味しいです。
ただ、全体的にはあとひとつというか、淡々とした空気が物足りなく感じる部分も。おそらくもうこれは趣味の部分になるのですが、百合作品的にはもう少し理性ではない何かというか色気というか深さと暗さというか、計り知れなくていつ壊れてもおかしくないからこそ輝く何か、みたいなものがあって欲しいなという感じ。この作品はどの短編もすごく理性的なように見えるので、これはこれですごく好きではあるのですが、もうちょっと何かが壊れていてほしいと思ってしまうのかなと。
そういう意味では、どろっとした得体のしれない何かみたいなものを感じられた「池姫」が好き。女の子だけのサークルの中で、池姫という存在が繋がっていく、その存在に魅せられていく、美穂という情念の系譜は、この時だけにある、世間から外れた、何かとても後ろ暗いもののように思えるのです。