東京レイヴンズ 15 / あざの耕平

 

 久しぶりの新刊は転生した夏目の視点から、夜光の時代を描く過去編。これまで現代の視点から語られてきた、夜光や飛車丸、角行鬼、そして夜光の周りにいた当時の相馬や倉橋について、改めて本人たちの視点から語られた時に何が見えるのか。

「帝式」と呼ばれる夜光の確立した陰陽術が、そもそも軍用であったことから分かってはいたのですが、戦争の真っ只中を歩む日本の中で、否が応にも使えるものはなんでも使おうとする軍部の内と外の争いに巻き込まれていくのが読んでいて辛いものがあります。そこが主題ではないので深く触れるわけではなくとも、思った以上に時代背景が暗い影を落としているような感じ。

そんな中で忠犬(狐だけど)のような飛車丸の忠義っぷりがおかしかったり、陰陽術の天才である勝手気ままな夜光と、相馬の若き当主である不良軍人の佐月が、反発しながらも協力していく相棒っぷりが良かったです。

過去編のまま終わって続くの!? と思ったものの、あとがきによれば次巻で現代に戻る模様。過去と現在を繋ぐ物語と、魂の呪術によって現在から過去に繋がった物語、夜光と飛車丸、春虎と夏目。その2つの流れが果たしていったいどういうひとつの形を描くのか。スケールの大きさ、話の複雑さからもうどんな景色が待っているのか想像のつかない感じですが、作者を信じて、また待っていたいと思います。