魔法少女育成計画 QUEENS / 遠藤浅蜊

順調に生存者が減っていき魔法少女になんかされた瞬間もうあかんかったんや……感が止まらないアニメのまほいくも大概にクソみたいな話をやっておりますが、原作最新刊はまたスケールのでっかいクソみたいな話ですね!!! しかし恐らくこれまでのシリーズで話としては一番面白かった。

一応以下ネタバレありで。


という訳でJOKERS、ACESからの三部作完結編。広げに広げた風呂敷をどう畳むのかと思っていましたが、なるほどこう畳みつつ畳まないところは何も畳まず、そして多くの問題は何も解決しないのかっていう。オスク派vsプク派の実質的に存亡をかけた戦争に独自の思惑で関わる人達、裏で暗躍する人たち。正面からぶつかる魔法少女たちの闘いは多くは語られないものの過去最大数の死体を積み上げる凄惨なもので、そのくせ戦場では可愛らしく歌い踊るプク様の映像が流されまくってて何だこれ。まあ、洗脳兵器なのですが。
あらゆる勢力の思惑が入り乱れ、それが最低に胸糞悪いストーリーを描き出すのですが、こうなってしまって魔法の国はどうなるのか。正直もう破滅の未来しか見えていないんですけど。そしてその未来の中で、フレデリカや暗躍するラピス・ラズリーヌ、まだ健在だろうカスパ派、そして生き残ってしまった彼女たちが何をしていくのかが楽しみにはなれないですが気になります。このシリーズ、意味もなく報われることもなく人が死ぬと思っていたのですが、本人にとっては無意味であっても、残された者たちを呪いのように縛る死を遂げる魔法少女多いですよね……と生き残った面々を見て本当に。
しかしまあ今回最大の見所はラストのプフレとシャドウゲールの最期でしょう。プレミアム幸子の契約書は契約者に最高の幸運をもたらすと引き換えに最大の不幸を運ぶ、だから最高強度で洗脳されたシャドウゲールにとって最大の不幸は「プク様の死亡」と踏んで、ギリギリの状況でプフレは賭けに出た。でも、野心家で陰謀家の人小路庚江という人は、全てを投げ打ってまで魚山護という1人の人間を助けたいと思いながら、彼女が自分に対してどういう気持ちでいるのかが読めなかったのだと思います。魔法が導いた答えは「プク様の死、及び洗脳されたシャドウゲールがプク様を庇ってプフレを手に掛ける」というもの。そしてそれが魚山護にとっての最大の不幸。
逆に従者として人小路庚江に振り回され続けた魚山護は、彼女を危険の中に置きたくなくて彼女の記憶を隠すという主人への反抗を行った訳ですが、色々なものを踏み潰してでも己の野心を実現させてきた人小路庚江という人が、全てのチップを賭けてでも自分を救いにくることだけを目的とする未来があるなんて思ってもいなかったのでしょう。誰よりもお互いを大事に思って、それでも互いに相手がそう思っているとは思い至らなかった。少し自分勝手すぎた二人の関係の最期は、失われた彼女にとっても、生き残ってしまった彼女にとっても、決して望むものではなかった、悲しい結末だとは思いますが、何故だかとても美しい悲劇だと感じました。
プクプックの魔法については、魅了というか最早洗脳の域に近いもので、本人もその作用は分かっていながらそれを「お友だちになる」ことだと捉えて最後まで疑わず、魔法の国のため、お友だちのためを想って最期まで動いていたのがとんでもなかったです。純粋が故の邪悪という意味ではスイムスイムと同系統なのですが、三賢人の現身、ちょっとそのスケールが違いすぎる。そして精神的に追い詰められたスノーホワイトが洗脳されて魔法を使ってくれてありがとうというシーン、自ら洗脳したスノーホワイトの遊びを省いた的確な進言に心酔していくプクプックという構図がヤバい。自ら洗脳しておいて、その相手に心酔するって自家中毒にもほどが……。
あとグリムハートが捕らえられたオスク派を率いたレーテさんがただ偉そうなだけの無能かと思ったら、立派な指揮官過ぎて見誤っておりましたと。ただ偉そうなんじゃなくて偉いから偉そうなんだこの人。
群像劇の色合いが強まってもう誰が主人公だかわからないのですが、ちょっと今回でも死ぬんじゃないかと思って読んでいた主人公のはずの魔法少女狩りさんについては、本当にどこかで退場してしまいそうな気配が。今やっているアニメのあの惨劇から始まった魔法少女としての彼女の物語が、ここまで引っ張った上で何も報われること無く閉じるのはあまりにも虚しく、でもそれをやってきそうなこのシリーズだから怖いものがあると思いました。

GOSICK GREEN / 桜庭一樹

GOSICK GREEN

GOSICK GREEN

「わたしは普通の人間になりたいのだ。いつの日か、このわたしも普通になれたらそれが幸福だ。しかし遠い道のりである」
「……でも君は君だよ」

「そうだとも。わたしはいま善意の話をしたのだ。悪いかね……。貧しい、なにもない。お金にできるような取柄もなく。でもこの新しい世界でわたしたちみんな生きのびようとしてるのだ。それなのに、貴様が……」

私たちの愛した旧世界の、オカルト的な、恐ろしい灰色狼はもうどこにもいない。けれど、小さなグレイウルフは確かに、新しく騒がしい世界で、薬物中毒の後遺症と貧しさの中でも、人間として彼とともに生きていこうとしてるんだと、読んでいる最中に痛いくらいに伝わってくる一冊でした。
久城がいたから彼女は変わった。旧世界、非日常の象徴だった彼女は、強大な頭脳はあれど、普通に生活していくにはあまりに弱く、そもそも普通に暮らすことがどういうことかも知らず。それでも、久城がいるから、彼女は生きていく。そして、ヴィクトリカがいたから久城はここまできた。相変わらず出会ったばかりかのような初心な二人のやり取りの中に、時折垣間見える共に修羅場を生き抜いてきたからこその絆の重みが生々しいくらいに際立って、ゾワッとします。
そして彼女の書いた手紙。久城が書いたように、彼女も手紙を書くのならば、その相手は1人しかいなくて、でも昔の彼女であればそんなことは絶対にしなかった。だから、それは開かれた未来の扉の先。書き方もわからない不器用なたった一言が、Lady Vからの手紙として旧大陸に渡る時、10年以上もこのシリーズを追いかけて来て本当に良かったと思いました。だってもう彼の反応を見たら泣くしかないじゃないですか。
このシリーズは毎年のご褒美で、ボーナスステージくらいに思って読んでいましたが、違うんだなと。新シリーズの中ではお話としても一番面白かったですが、それ以上に、彼と彼女には未来がなくてはいけないんだと、そのためにこのシリーズは無くてはならないのだと、改めて感じた一冊でした。素晴らしかったです。

BanG Dream! Second☆LIVE Starrin' PARTY! 11/13 @ TOKYO DOME CITY HALL

1stライブよりもアニサマは上手くなっていて、アニサマよりも2ndライブは上手くなっていた。特に披露回数の多い「Yes! BanG_Dream!」は完成度がめっちゃ上がっていたし、今回初だったアコースティックコーナーもとても良かった。特にベースがめっちゃ良かった。何かそういう、現在進行系で成長していくのを見られるというのはとっても幸せなことだなあと思いつつ。
そんな訳で、バンドリの2nd。前回からは初出しの1曲しか増えていないし、アニメ直前ということでコンテンツ的にも大きく動き出す前夜という感じ。なので1stで引いたスタートラインから、現在地を確かめるようなライブだったのかなと思います。助走を取ってスタートラインを超えて、さあ今飛び立ちますという瞬間を切り取った、みたいな。
そしてやっぱりバンドでやって映える曲が揃っていて、キャラクターを演じている人たち本人が生演奏でやってくれるというのは良いものだなと思いました。演奏にノれるタイプの曲が多くて単純に気持ち良いです。後はもうあれですよ、推しがね、ドラムを叩いているんですよ、バンドで。なんかそれだけで満点じゃん、っていう。
とはいえ、単純にバンドとして見るならば上手くなっているとは言えまだまだ伸びしろがありますって感じですし、やっぱりこういうコンテンツはキャラクターと演者の関係性の中で何かが生まれてくるものだと思います。そういう意味では、コミックの連載追いかけていない私が悪いのですが、やっぱりアニメ前のバンドリはまだキャラクターの方の物語があまり出てきていなくて、回るべき両輪の片側で走り出しているという印象もあって。これが両輪がっちりと噛み合ってきた時に、そこで一体どんなものが表現されるのか、それが楽しみです。新しくCDの出る「走り始めたばかりのキミに」のアニメMVでは、本人たちのライブでの仕草が割とキャラクターのCGの動きに反映されている感じがあって、そっちからくるのか!! と既になっていたりとか。
プロジェクトとしてこれ本当に上手くいくのかなあと見ていて不安になるような所も多いバンドリですが、とにかく生でライブを見てああ良かったなあ、また見たいなあと思える、そして次に見に来ればもっと進化した彼女たちを見られるものだと思うので、3rdライブも本当に楽しみにしています。期待。

魔法少女育成計画 JOKERS、ACES、episodesΦ、16人の日常 / 遠藤浅蜊

魔法少女育成計画 ACES (このライトノベルがすごい!文庫)

魔法少女育成計画 ACES (このライトノベルがすごい!文庫)

アニメ放送開始ということで既刊の積読していたものとアニメ合わせ短編集をまとめて読んだのですが、いや本当にまとめて読むと気持ちが荒んでいくシリーズだなと思いました。


以下の感想はアニメ、というか初作のネタバレを含みます。


やはりこう、とにかく死ぬ、容赦なく死ぬ、そこまでで描写を積み重ねたキャラクターの背景も使う魔法も関係なくあっさりと死ぬ。キャラクターの抱えたものを解決するのではなく、キャラクターの死を積み重ねることで物語が駆動するこの感じ、ああ、魔法少女育成計画読んでるなあと。そしてそんな当たり前のように逝ったキャラクターたちのエピソードが短編集で後から出てくるのですが、ちょこっといい話みたいなエピソードを今更与えられましても、この子もう死んでますよね……みたいな気分になれるのが何というか。これを読むことで私の中でキャラクターの厚みが増して形になっていくけど、でも。
まあそんな魔法少女育成計画ですが、世知辛くきな臭い魔法の世界絡みの大きな動きがあったのがJOKERSとACES。人事部でスピード出世をしていたプフレに汚職調査の横槍が入ったところから、彼女が自分から切り離した記憶をめぐる物語と、彼女がその後に打った手によって物語は動き出します。正直広げた風呂敷の大きすぎる話で、JOKERS、ACES単品の話では完結しないどころかまだ全体像も見えてこないのですが、魔法の国の三賢人の現身が2人直接登場したり、スノーホワイトがそのうち一人の側についたり、プフレはフレデリカを使って何をし用としてるのかだったり、人造魔法少女という新たな存在や魔法の国の危機が浮き彫りになったりと、各勢力入り乱れた大きなうねりが起きている状況。このあたりは刊行が延期してしまったQUEENSの中でどういう結末を迎えるのか、楽しみにしていたいと思います。
単巻の物語としては、JOKERSの人造魔法少女たちがやるせなかったです。何者か、というかおそらくあの人の関連で魔法の国の関与無しで生み出された魔法少女たちは、研究所をベースにピュアエレメンツを結成。これが所謂プリキュア的なキラキラとした魔法少女として謎の敵と闘っていた訳ですが、何もかもが作られ与えられたものだったというのを本人たちだけがあずかり知らぬまま、本物の魔法少女による魔法の国の血で血を洗う勢力争いに放り込まれ、翻弄されていくのがなんとも。大きすぎる流れに、期待とか希望とか恋心とかそういう正の感情がすり潰されていくのは結構くるものがありました。
あと、彼女たちを前にしてもはや魔法の国側の存在となったスノーホワイトさんが何を思うのか。強力すぎる敵を前にして生き残るための最善を尽くした彼女は、確かに正しく、ただそれでも救えたかもしれない何人かを救わなかったことも確かで。ただ困っている人を助ける正しい魔法少女であろうとした彼女が、正しくない魔法少女と闘うという修羅の道を選んだ先に何があるのか。ACESでのリップルとの悲しい形での再会も含めて、どうしてもあの試験から始まったその道の先に光があるようには思えないことが気がかりに思います。
しかし、クラムベリーの試験最後の生き残りにして、今となっては大物犯罪者であるフレデリカに師事、後に悪事を告発し捕縛、その後「魔法少女狩り」となって魔法少女を捕まえて回り、あの戦闘力に特化した魔王塾出身者をも倒し、今度は魔法の国の三賢人が1人の現身を捕縛って、スノーホワイトさんマジスノーホワイトさんって感じ。羅刹か何かか。思えば遠くに来たものだと、ラピュセルに守られねむりんの死に涙を流すアニメの彼女を見ながら思います……。

ZAQ LIVE TOUR 2016 「NO RULE MY RULE」 10/22@STUDIO COAST

ZAQライブは最高に楽しいと毎度毎度言っているのですが、今回も本当に楽しかったです。ライブハウスで、様々な色があってどれもキャッチーなZAQの曲と、それを一つに繋ぐZAQのパフォーマンスと、めっちゃ上手いZAQ JAPAN(バンド)があれば無敵! みたいなやつ。色々とライブを見に行っている昨今ですが、細かいこと考えずに楽しいいいい!! ってなっているライブとしては私の中でZAQのライブが図抜けてると言ってもいいんじゃないかなと思います。
開幕『NO RULE MY RULE』から『絶好調UNLIMITED』『Alteration』『行きたいイベント重なりすぎてコンプできないオタク葬送曲 feat.遠藤ゆりか』へと続くいきなり全開のセトリで始まり、本家より先にライブでカバーが披露されるという『ヴィヴァーチェ!』あり、Pとしては最高に高まるミリオンライブカバーメドレーで本家でも聞いたことなかった『追憶のサンドグラス』を聞き、中盤はアッパーなだけじゃない色合いを見せて、インストの『僕たちはひとつの光』で合唱し、『GLITCH』のゴリゴリのラップも楽しかったし、『KURUIZAQ』『カタラレズトモ』『Seven Doors』『ONE WAY ROAD!!』という終盤の畳み掛けも最高でした。
ZAQという人はソングライターとしては凄く職人的で、アニメ作品にかなり入れ込んだ曲を作ってくる人だという印象なのですが、今回のライブでそれは間違っていないけどちょっと違うんだなと思いました。どんなアニメの曲を歌っても、どんなにその作品に寄り添ったとしても、この人は自分の言葉で自分の歌を歌っているんだなと。MCでライブができないかもしれなかい状況だったという喉の不調の話があって、アンコールはもうやれないから最後の曲だと歌いだした『hopeness』。そこに込められたものに、これは紅殻のパンドラというアニメの曲であると共に、ZAQZAQの言葉で歌うZAQの曲であるんだなあと、このパフォーマンスは目と耳に焼き付けなければならないやつだと思って見ていました。
私は提供曲含めてソングライターとしてのZAQは本当に天才だと思っていて、それでも本人が歌う曲が特別好きなのはどうしてかと思っていたのですが、何だかそれがようやくわかった気がしました。この人はどこまでも自己表現の人で、だからZAQの曲はZAQが歌わなくちゃいけないんだと。
喉の不調でシングルの発売が延期して、いつ次のライブができるのかもわからない状況なのかもしれませんが、それでもこの人の歌をまた聞きに来たいと思ったし、次のライブを楽しみに待っていたいと思います。

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 4thLIVE TriCastle Story10/15・16 @さいたまスーパーアリーナ

1stライブからずっと見てきていますが、私の中でシンデレラは純粋にライブパフォーマンスを追い求めるものではなくて、もちろん個人のパフォーマンスが凄ければそれは当然満足するのですが、それが目当てかと言われるとちょっと違うという感じ。じゃあ一門と言われるようなバラエティ性を求めているのかというと、それはそうなのだけどやっぱりちょっと違う。それで少し考えてみて、私がデレマスというコンテンツに求めているのは、この先180人超の誰が出てもアイドルになれる、そういうライブの完成度なのだろうなと、神戸の2日間を経て改めて思っていました。
なので、このアニメメインキャスト=今まで主にライブに出てきたメンバーを外してきたSSA1日目でシンデレラガールズを見せられるかどうかが個人的な最大の注目点だったんですが、最初に全員違う衣装着て出てきた時点でもうね、あかんですよね。あるべきものがあるべきところにハマった感じがして涙腺が。これほど見事に十人十色だけどみんなシンデレラガールズっていうのを体現する方法はないんじゃないかと思います。それぞれ全然違う衣装で同じ曲を歌ってるの、この感じがシンデレラなんだよっていきなり回答を見せられて、まだ半分以上のキャラクターに声がついていないシンデレラガールズは、この先誰が出演したってシンデレラガールズなんだって思えました。あ、大丈夫だって。「Brand New Castle」はとにかくこれに尽きます。


そして2日目は「346 Castle」。アニメがテーマということでいつものメンバー。1日目も凄かったしもう誰が出てもシンデレラのライブだと思っていましたが、ちょっと主力メンバーを舐めていました。場数の違い、積み重ねてきたものの違いがステージングの違いになって見えると、やっぱり彼女たちは先輩なんだなと思います。シンデレラのライブはパフォーマンス的にはまあこんなものっていう印象を吹き飛ばす、単純に凄いライブだったと思います。
そして『Star!!』『Shine!!!』から『STORY』をセトリの最初に持ってくることで、アニメを完結させるためのライブだった3rdと違ってこれはそれ以後のライブなんだと現在地を確かめながら、3rdでできなかった忘れ物を埋めていくようなライブでした。LOVE LAIKAやRosenburg Engel、3人のTriad Primusと、あの時見れなかったものが見れて良かったなあと。そして万感を込めた涙のライブではなくて、あくまでも余裕のある笑顔のライブとして346Castleを駆け抜け、宣言されたのが4つ目の城「Future Castle」。内容的には新CDシリーズに収録されているソロ2曲目の初お披露目だったのですが、ここでアニメにきっちり幕を引いて、デレステメインだった神戸、新しい子メインだったSSA1日目もひっくるめた5年目のマイルストーンとしての「Future Castle」を提示してきたことは大きいんじゃないかと。そしてこれこそが4thライブをこんなにコンセプチュアルな方向に振ってきた意味であったのだと思います。この4thで全部ひっくるめて一回まっさらにして、初心に戻ったような気分で新曲を歌って、さあこれから6年目に入っていくんだぞと。
そしてそこで歌われる5周年記念曲『EVERMORE』の歌詞が、初めてのステージ覚えてる? とここまで歩んできた道のりを振り返りながら、ここがゴールではなくて、更に先へ先へ進めと歌う曲で本当にグッと来るものがありました。これだけのものを総括するようなライブをやって、まだここは集大成じゃないんだな、通過点なんだなと。広がっていく、増えていく、進んでいく、終わらないという明快なテーマ。そして、この歌詞に説得力をもたせられるだけ積み重ねてきた物語がここにはあって、それならばこの先にはどんな景色を見ることができるのだろうと。

そういう意味で、今やらなければいけなかったことを、今のアイドルマスターシンデレラガールズでやりきって、これからのシンデレラガールズに繋げていく、シンプルで強烈なメッセージ性のある4thライブ4公演だったと思います。3rdも凄いライブだったとは思いますが、シンデレラ凄いなとこんなに素直に思ったのは、これまでで初めてだったなあと。



後は曲ごとの感想とか。

<演出とかステージとか>
・センターステージがシンプルな構成だったので今回はステージは大人しいかなと思ったら、メインステージに城が建ってた。どう見ても2階に登る階段があって、テラスがあるぞ……ってなりました。
・贅沢に液晶を使っていて、後ろのVJが曲ごとに世界観を作っていてすごく良かったです。2日目のアニメユニットのロゴが出る演出も素晴らしかったし、1日目のHotel Moonsideの演出の素晴らしさといったら。それからダンサーの皆様、レーザーや照明も含めて、今回はすごく演出が豪華で凝っていたように感じます。それが誰が出てもシンデレラガールズなライブを下から支えていたんだなと。


<開演前>
・ちひろさんの諸注意で「今日はライブが長いので……休憩はありません」と言われて困惑する。


<1日目>
・『恋のHamburg♪』でフライ返しを持って出てきた種崎さんはなんかずっと可愛かった。
・志貴さんはステージに飛鳥がいるぞっていう。他のキャストとは違って完璧なコスプレで、しかも本人の声が出るというチート。
・ 下地さんは歌が上手くてびっくり。流石にソロデビュー組は違うなと。そして衣装をよく見ると、あれ黒帯だな……黒帯だよな………? って。
・ずっと聞きたかった『秘密のトワレ』。めっちゃ良かったです。ああ、志希はこの曲をこうやって歌うんだなあと。
・『青の一番星』の羽衣小町。衣装的にもバランスが取れていてビジュアル的に映えるなあと。そしてりっか様は先輩としての自覚なのか、ちょっと今までと違う覚悟みたいなのが見えたのが良かったです。最後まで紗枝はんを表現しきろうとする気迫みたいなものが見えた。
・『き・ま・ぐ・れ☆Cafe au lait! 』、ルーブル美術館? を舞台に銃器を持ってきた軍曹を早苗さんが追っかける劇団フレデリカが展開されてて面白かったです。高野さんはキャラに寄せているのかキャラに寄っていっているのか、そこかしこに凄くフレデリカを感じる。
・『Bloody Festa』に『Lunatic Show』。カッコ可愛いメタルな小梅を見せてくれた桜咲さん良かったけど頭を振っていたらあまりステージを見れていないという。
・『Radio Happy』『気持ちいいよね 一等賞!』『Can't Stop!! 』の流れは最高に盛り上がった。『Radio Happy』は絶対ライブでやったら最高だと思っていた期待通りのパフォーマンスでとても良かったです。とりあえずサイリウムは投げ捨てて、途中のクラップからのNANANANANAのシンガロングが最高に気持ち良い。あとこのサビは絶対周りを気にせずに飛び跳ねるものだと思うので、いつか野外フェスみたいなところで披露して欲しいです。
『気持ちいいよね 一等賞!』は応援歌なんだよなあそりゃ楽しいよなあと、『Can't Stop!! 』はもう踊るしか無いでしょ扇子振っちゃうでしょこれっていう。
・『ミラクルテレパシー』、堀裕子役の鈴木絵理という人の醸し出す天然のアホっぽさはまさにユッコという感じで、今回衣装がオリジナルになったこともあってユッコ度が更に凄かったです。相変わらず楽しい曲なんですがその後のサイキック召喚で……。
・まあ流石にここまでくると、竹達さんは何らかの事情があって(事務所とか)、アイマスのラジオやライブはNGなんじゃないかと思っていた訳ですよ。だからイントロかかった瞬間も聞き覚えのある曲だけどこんな曲今回あったっけ? と思ったし、せり上がってきた時もあの衣装いたっけ? 誰だっけ? と思っていたし、モニタに「To my darling… 竹達彩奈」の表示が出た瞬間に!!?? ですよ。会場も戸惑いどよめき大爆発みたいな反応で、熱狂度合いが凄かったです。
・3rdを踏襲する『Absolute Nine』『Hotel Moonside』『in fact』の流れ。正直あれにもう一度勝負を挑むの? って思ったのですが『Hotel Moonside』、それはハードルが高いんじゃ……からの見誤っていましたすいませんでしたっていう。パフォーマンス、演出、素晴らしかったです。ちょっと一線を画すレベル。飯田さんも前回より硬さが取れて素晴らしいし、脇を固める2人も非常に良くそして3rdの震えて消え入りそうになりながら必死に立って歌うありすから、しっかりとステージに立って気持ちを込めて歌うありすへと、一年分の成長を表現しきった『in fact』でした。良かった。
・『あいくるしい』オリジナルメンバー! 牧野さんのままゆ、ゾワッとさせる情念が垣間見えるの素晴らしいです。
・『生存本能ヴァルキュリア』の盛り上がりも、LiPPSの『Tulip』も素晴らしかったですが、『純情Midnight伝説 』の炎陣は本当に良いなと。デレステは色々なユニットを生み出しましたが、その中でも図抜けていると思います。このメンバーが揃えば炎陣の世界にできる、空気を変えられる、そういうチーム。中でも頭を張る原優子という人のパワーは逸材だと思います。あの人がいれば軸ができる、あの人の背中についていけば大丈夫、そう思わせる立ち居振る舞いは流石向井拓海の中の人だと。
・るるもやすきよさんも生えてこなかったんで油断してたんですよ本当に。なんか真ん中のリフトが下がったんですよ。なのに麻夏さんとなっぴーが両側から登場したんですよ。『ハイファイ☆デイズ』ですよ。サプライズはもうないんじゃなかったっけあっれーって。あっれーってなってたら仁奈ちゃん! の声と共に久野美咲が、久野美咲が……。いやもう「久野ちゃーーーーーん」って叫ぶしか無いでしょ。で薫ちゃんにしか見えないなっぴーと、成長した千枝ちゃんみたいな麻夏さんがいる訳ですよ。有り体に言ってやばい。語彙力が失われる。そして『みんなのきもち』。わんわんでぱおぱおでぴょんぴょんでうっききーなSSAシンデレラ動物園でした。歌っても喋っても常時仁奈ちゃんの声が寸分違わず出てくる久野ちゃん半端ないです。MCでは今日は保護者いないけど大丈夫かなと思ってました久野ちゃん。
・そしてアニメを超えてシンデレラにおいてこういう立ち位置の曲になったんだという『GOIN'!!!』からラスト『お願い!シンデレラ 』。そうだよ誰もがシンデレラなんだよ。誰が出てもシンデレラなんだよ。そして私だけじゃ始まらないんだよ。このメンバーでこの曲を歌えることにシンデレラガールズの意味があるんだよって何かを噛み締めていました。このSSA1日目が成功して良かった。本当に良かった。


<2日目>
・冒頭の『Star!! 』『Shine!!! 』『STORY』とはっしーの衣装がかわいいと思ってみてました。ニュージェネ+卯月衣装。かわいい。
・問答無用で上げていく『LET'S GO HAPPY!!』。とにかく盛り上がる、のじょさんお腹出してる、とにかく盛り上がる。
・『Memories、アニメでの披露もあんな形だったし、ライブでは揃わないしだった2人が揃って、LOVE LAICAのロゴが後ろの液晶に映る中踊っているもうそれだけで感慨深くて……。ラブライカって尊いんだなって思い出しました。「ミナミィ、ニエェェット」って言ってる二次創作イメージが強すぎた。そしてラスサビで蘭子登場。ラブランコ。
そこからの『-LEGNE- 仇なす剣 光の旋律』は蘭子ができるのは内田真礼だけだし、内田真礼は蘭子なんだと1stぶりに思い知らされました。完全に蘭子だった。凄かった。
・私『Nebula Sky』好きなんですよ。アーニャの決意の歌という感じで。だからまず聞けてよかった。そして2階テラスで歌うすみぺと背景に広がる星空の演出が美しかったです。良いもの見たなあと。
・オリジナルメンバー『Wonder goes on!!』。そうかこんなに盛り上がる曲だったんだと3rdのときも思った気がしますが、今回も思いました良かったです。
やすきよさんめっちゃカッコよかったです。前回は緊張が見えたけど、今回は余裕が見えて、それが夏樹らしいカッコよさに繋がってて素晴らしかった。『Rockin' Emotion』も良かったですが、『 ØωØver!!』の歌い出しを夏樹が歌ったのが最高にカッコよくて、ああこの曲ロックだったんだなって思いました。
・『Trancing Pulse』の3人揃ったフルバージョンを聞くのは初めてですが、とにかく圧が凄かった。一番攻めている時の上松サウンドに万感の思いが込められた歌がのって、3rdの忘れ物を今まさに拾いに行っているんだなあと。
・そして『Trancing Pulse』の余韻を味わう時間も与えずに、鳴り響く荘厳なイントロ。『こいかぜ』。前日のサプライズで十中八九くる予想は立っていたのですが、それでもこの人が出てくるとちょっと空気が違います。1stの時も群を抜いて上手かった歌は、ソロデビューを経てちょっと別次元の領域に。毎度歌を聞いてしまうとなんで声優やっているんだろうと不思議になる早見沙織という人が、演者早見沙織として高垣楓を顕現させている感じが凄かったです。ラスサビで照明が明るくなったところは最早神々しさすらあったことに、346プロNo.1アイドル高垣楓の姿を見ました。あとこの人MCで喋ってても大体楓さんだよねっていう。
・『こいかぜ』だけでも満腹だったところに、『Nocturne』のイントロが流れて東山奈央がせり上がってきて、私は崩れ落ちました。まさかのオリジナルメンバー。絶対聞けないんじゃないかと思っていたオリジナルメンバー。圧倒的な早見沙織の歌唱力と、絶対に川島瑞樹を崩さない東山奈央の役者魂。良いもの見ました。
 このあと武内Pが出てきてのMCで、これがうちのアイドルですと若干のドヤ感を漂わせていた武内くんもいい味出してたと思います。あと楓さん呼び捨てな!
・3rdを踏襲しながら、『S(mil)ing!』にいかなかったりする辺りにアニメ後を感じるセトリですが、その中でも『流れ星キセキ』どんな場面で聞いてもエモいです。背景の映像がまた良くて、黄色い星が青い星と二つに、ピンクの星で三つにとなっていくのがやはりエモい。
そしてアニメの締めくくりは『M@GIC☆』へと。 この曲はライブで聞くたびに名曲だなあと思うようになっていきます。これも最高にエモい。
・アニメを振り返るムービーが流れる中、BGMの『GOIN'!!!』にPたちが合唱しコールを入れる様がなんか一種異様な空気があって凄かったです。ああ、宗教だって。
・大坪社長のせいで武内くんが4つ目のお城といったときマッスルキャッスルか!? って思っのは置いておいて、『Future Castle』開幕。ここからはいつものメンバーの新たな第一歩。心機一転の初々しさもありつつ、成長を感じさせるのが良かったです。
・『SUPERLOVE☆』はのじょさんの全力をぶつけてきてる感じ凄かった。『Sparkling Girl』はりーなが……ロックをしている……という感慨。あとこの曲楽しいです。『ニャンと☆スペクタクル』も楽しい曲ですが、それ以上にこんなに楽しそうななつ姉めった見ないなあと思っていました。
・『おかしな国のおかし屋さん』。最初から最後までストーリー仕立ての楽曲、やたらと多い小道具と演出、歌の合間に入る台詞、そして登場する王子(上坂すみれ)。なんか既視感あるなと思ったけどこれサンホラの手法だわ……って思ってました。ライブ後に友人が、こういう曲はそれをどうステージにしてくるか楽しみになるって言っていて、うんそれやっぱりサンホラだって思いました。
 そしてこの仕立てを成立させる大坪由佳の存在感というか説得力というか。決して歌が上手いわけでも踊りが上手いわけでもないのですが、大坪由佳であることが上手いという感じで、本当にオンリーワンだと思います。
・あああああはっしーかわいいんじゃあああああと思っていたら『はにかみdays』が終わっていた。このあとの全員曲でも基本ずっとはっしーを目で追っていたのでそろそろ重症。でも、ともよ様が馬車から爆レスしてたのは見てた。
・前日のライブ後に歌詞がやばいよと言われていたので『EVERMORE』は歌詞に耳を傾けていたんですが、ちょっと本当にヤバくてサイリウムを降る動きも止まりますよねこれ。シンデレラ……まぎれもなくシンデレラの曲だこれって。あと最後のMCで初めてのステージを振り返ってSSAだったって言うメンバーが多くて、それ見に行ったわ……あの時からここまで………みたいな感慨に襲われていました。

Dimension W 11 / 岩原裕二

新章開始ということで、ミラと彼女を残した百合崎教授の謎、そしてシンジケートという新たな敵が出てくるのですが、そんな話の主人公格となっているのがルーザーとともに行動してきた少女エリー。番号のみを与えられていた施設から一人逃げ出した少女とすべてを奪われて一人になった男がどのように出会いどうして一緒にいたのか、そしてルーザーを失ってまた一人になったエリーが回収屋としてどう生きていくのかが描かれていきます。
いやなんというか、私こういうキャラめっちゃ好きです。ルーザー亡き後1人でもやっていけると意地を張って強がってプライドが高くって、ピーキーなくらいに優秀だから実際ある程度のことはできちゃうけれど、結局まだ未熟で脆い。このアンバランスさと頑なさが凄くツボです。ミラを取り戻そうと1人で敵のアジトに突入して、敵の強さに上手くいかずにボロボロになって、それでもミラが捕らえられた部屋までたどり着いて、もう誰もいなくなっていて涙目になってるのとか良い。本質的には良い子なのが良い。
人の心を知ろうと積極的に話しかけているミラはもちろん、キョーマもなんだかんだ言ってこういうタイプの子は放っておけないんじゃないかなあと思うので、なんとか誰かがまた彼女の隣に立てる日が来るといいなあと思います。救われて欲しいなどと言ったら怒られそうではありますが、何かが出自からの因縁もありそうな彼女の救いになってくれたならと思う一冊でした。