はたらく魔王さま! 19 / 和ヶ原聡司

 

はたらく魔王さま!19 (電撃文庫)

はたらく魔王さま!19 (電撃文庫)

 

 覚悟完了から無償の愛を振りかざして突っ走った鈴乃も、ヘタレここに極まった真奥も、神撃ちに向かう中エンテ・イスラで発生した大問題も、アシエスに起きた異変もそれぞれに見どころではあるのですが、やっぱり全部持っていくのはちーちゃんなのがこのシリーズ。まさかそんな話の動かし方をしてくるとはびっくりな19巻でした。

不思議な世界に触れた子供が成長と引き換えに子供時代の記憶を閉じて大人になっていくというラインに乗ったかと思われたちーちゃんの物語ですが、力いっぱいひっくり返して来ましたよね。守りたいもののために、自分を曲げるのではなく、本気で世界を変えにいったのが大概にヤバい。そして世界が交わる特異点であるヴィラローザで皆と食べる食卓を守るため、周りを盛大に巻き込みながら、いっちょ異世界救いますかまで飛躍する女子高生はちょっとばっかし普通じゃないでしょう。これまでも幾度も大物っぷりを発揮してきたちーちゃんですが、これはなかなかにクレイジーだなと。

しかしながら、世界をかけて闘った魔王や勇者の関係がこちらの世界の小さな日常にスライドするのがこの作品の仕立てな訳で、それを逆順にたどれば、普通の日常をおくっていた女子高生が異世界で世界を救う英雄になるのも、綺麗なシンメトリーかなという気もします。であれば、佐々木千穂というのは、魔王やエミリアと反対側の立ち位置から物語を進めてきた、もう一人の主人公なのだと改めて思いました。

閻魔堂沙羅の推理奇譚 業火のワイダニット / 木元哉多

 

閻魔堂沙羅の推理奇譚 業火のワイダニット (講談社タイガ)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 業火のワイダニット (講談社タイガ)

 

 今回も殺された人たちが、閻魔大王の娘の前で行き帰りを駆けて自分の死について推理するという形式のお話が3編収録。この短い期間に老若男女これだけのバリエーションの人たちの話を、高値安定のクオリティで出してくるのは凄いと思います。

という訳で今回は、子供とトラブルを抱えたお爺さんと厳しく育てられた妾との間の孫の話や、サイコパスワイダニットの話など。相変わらず閻魔の善悪の物差しが確固たるものとして存在するので、因果応報が非常にわかりやすく安定しているのですが、こう続くとだんだんわざとらしさと言うか、価値観の固さや杓子定規さが目立つような気も。このまま沙羅は超越者として安定した世界観でシリーズが続くのか、これ自体が揺らがされるための伏線なのかというのも気になってくるところではあります。

しかしまあ今回は何が印象に残ったって、1話目が読み終わって百合だ!! って叫びたくなったことでした。醜く生まれた己を呪い優秀ながら前向きに生きられずにいた外園聖蘭と、芸術の才に恵まれ奔放に生きるミュージシャンのミミ。聖蘭の物語は読んでいてひたすらにきつく、最悪の結末の果てに生き返りを経て少し前向きになった所で、まあそう都合良くはいくまいと思って読んでいたのですが、ラストに向けての流れが。

だってもう明らかに、そこまで友人のために自分を捧げられますかって、それもそんなに奔放に生きてきた人がって話ですよねこれ。誰が見ても今人生のドン底にいる大切な人に、コンプレックスを逆手に取って私が輝かせてやるから、二人で生きていこうぜって言ってるようなものですよ。聖蘭本人は気づいていなくて、いつもの気まぐれだと思って終わっていて、そんな訳ねえだろ!!  って思うところまで含めて大変良いものでした。良いものを読んだ。

少女☆歌劇 レヴュースタァライト オーバーチュア 1 / 轟斗ソラ・中村彼方

 

 アニメとアニサマで見たライブにすっかりスタァライトされて第2弾舞台のチケットまで取ってしまったのですが、アニメ前日譚のこのコミックもまた素晴らしかったです。

輝くため、スタァになるため、オーディションを文字通り戦う9人の舞台少女たちの物語であり、その9人それぞれの間にある重い感情と重い関係性で殴られ続けるみたいなアニメ。その前提として彼女たちが何を求め、何を思い聖翔音楽学園に歩みを進めたのか、1年目にそこで何を感じ、何をしたのかを描く前日譚ということで、これは必修なのではという感じ。

1巻ではまひると純那、そして香子と双葉の話が収録されているのですが、純那の話がとても良かったです。生真面目な彼女の抱えたコンプレックスが、大場ななと争った委員長選挙で表面に出てくる話なのですが、星見純那という人のパーソナリティが、良いところも悪いところも含めて描かれていて魅力的だなと思います。そして何より、アニメで純那が一人闘い続けたななを救う形になったこの二人の関係が、かつて一人だったななが一人になりがちな純那を救うことで始まってたっていうのが、じゅんなな最高かよと。「だけど1人で抱え込まないで 困った時はいつでも私を頼ってね」って、あなたがそれを昔、言っていたの……。

トップを目指すために争い合う関係であり、一筋縄でいかない関係でもある9人ですが、それと同時に彼女たちの間には優しさと絆があること。それが何も矛盾することなく両立するのが、この聖翔音楽学園99期生の本質なのだと感じられる一冊。2巻も楽しみです。

9/8・9 THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS SS3A Live Sound Booth

LVで両日見てきたデレステ3周年記念イベントは、コロムビアがようやく配信に踏み切った曲を含めデレステ曲とソロ新曲、そして既存曲のダンスだったりジャズだったりおしゃれ系統のリミックスにダンサーによるショウケースまで詰め込んだセットリストでお届けするライブ。

5thツアーを見てシンデレラガールズのライブはもう何も心配ないなと思ったのですが、今回もしっかりとした、楽しく素晴らしいライブでした。安心感と満足感。そしてシンデレラはこういうバラエティパックをひっくり返したようななんでもありの空気がやっぱり大好きだなと思います。本流ではなく、最強の亜流みたいな。

今回ナンバリングのライブと一番違うのは初期組少なめの出演者選出かと。デレステ初期衣装を纏った新規ボイス組から、1周年衣装組、2周年衣装組、そしてシンデレラで最初にボイスが付いたアイドルである渋谷凛がセンターを務める3周年衣装という並びはちょっとした歴史を感じるもの。12歳でデレマスに出会って、19歳で舞台でソロを歌う夢が叶ったと語る会沢紗弥の姿に、一つの作品の中で世代ごとの歴史がもうこれだけ積み重なっているんだなと。そしてそれを先頭で引っ張る福原綾香の姿に、随分とコンテンツに厚みが出たものだと感じるSS3Aでした。

後は気になったところを徒然と。 

 

・私はビートシューター(結城晴&的場梨沙)が推しなのですが、今回フルライブ初登場の結城晴役小市眞琴さんがあまりにも晴だったので完全にやられました。やんちゃさのある大きな振りや真っ直ぐな声はもちろん、やること言うことの悪ガキ感とイケメンさの絶妙な配分があまりにも結城晴だった……。クイズコーナーでプレゼント盗んだり、人のMC中に踊りだしたり、最後の挨拶でチャント始めたり、なんかね、晴でしたね。この男児感……(晴は男児ではありませんが)。怒られるんじゃないか、ちょっと出過ぎなんじゃないかとハラハラするところまで含めて完璧に晴だった。

あとね新規ボイス組の「always」。あれは歌詞が本当にやばい。マジで。

そんでもって、小市さん終演後の呟きがこれですよ。

 いやこれはもうね、殺しにきてるっていうか、なんだろうね、もう。

しかしこう、最近の晴のプッシュされ方を見ているとですね、隣に立たせてあげたかったなって、それはどうしてもね、うん。

 

原田彩楓さんが三船美優役になって、今まで見てるとやっぱりどうしても若さが目立ってどういうキャスティングなんだろうと思うことがあったんですけど、今回の「Nocturne」で抜群の歌唱力を見せた鈴木みのりさんに食われない急成長にびっくりして、「Last Kiss」で納得しました。この美しさの中にある一抹の危うさが三船美優なんだろうなって、このためのキャスティングなんだと。歌声、表情、ゾクッときました。ふっと魂を惹かれる感覚。あれはヤバいものだ。

 

・ノーティギャルズ、そんなに好きだと思ってなかったんですけどね。「Virgin Love」を聞いてたらちょっとこみ上げるものがあって、ああ私Wild Wind Girl好きだったんだなと。二人が歌ってる姿の向こう側に、重ねてきたドラマが見えるのがエモかった。あとMCではらぼうが「元ヤンだよ! 今はアイドルだよ!」って言ってたの、あれ聞きました? 向井拓海はそういう気持ちでステージに立ってるんですよ、今はってなりませんでした??

 

・ 二日目、渋谷凛の「S(mile)ING!」で始まって思わず手を叩きましたよね。あと「卯月の見た景色が見えた」というのを、凛が言うのが本当にね。3周年曲であり、3周年イベントだった「ガールズ・イン・ザ・フロンティア」は、全体曲であると同時に渋谷凛の物語であると感じていて、アニメが最終的に卯月の物語に全振りして放置された凛の物語がようやく繋がって、1日目でこの曲を歌って、そしてここで「S(mile)ING!」とこのセリフというのはなんか感慨深いものがありました。あとふーりんめちゃくちゃ歌上手くなったな?

 

・individuals完全体、みんな小さいのに歌声にパワーがあるところが最高にindividualsって感じで良かったです。パフォーマンスとしてはライブベスト級だったと思います。森久保のまま強く歌える高橋花林さん凄いなと。あと朝井さんの眼帯もちゃんと似合ってた。

 

・会沢紗弥さんの「楽園」。12歳からデレマスにハマった生粋のまゆPが、関裕美としてこのステージに立ったという背景、必死に涙をこらえて歌いきった初日、笑顔で歌った2日目。たった2日にドラマがあって強かったです。

 

・最近のデレステ曲は1曲で勝負するために、制作陣が俺の答えはこれや!!! って感じでこれでもかこれでもかと盛り盛りになっていく感じが大変聞いていて楽しい(けどカロリーが高い)と思うのですが、やっぱライブでは特に強いなと思いました。「美に入り彩を穿つ」、こんなの好きに決まってるじゃんの5倍重ねがけみたいな曲で上がらないわけがない。あと「クレイジークレイジー」も完璧でした。ことみんの歌の上手さと、あっさむのナチュラルボーン宮本フレデリカ感が凄い。「絆とかあった方がみんな喜ぶでしょ?」っていう発言、完全にフレデリカ。

 

・一日市長セクシーギルティさん。「モーレツ★世直しギルティ」は本当に神がかった曲だと思っています。バカバカしく大真面目で、頭悪そうに見えて天才の仕業だと思う。そしてはじめてのセクギル3人でのパフォーマンスも素晴らしい仕上がりでした。あとMCでのぐちゆりさんの持ちネタ「自信はあります」で落とす流れが完全に芸人のソレで笑った。

 

・藤本彩花as棟方愛海、あまりにも一挙手一投足が師匠。というかon/offが見えないので存在そのものが師匠。これはもう他のキャラのオーディションをしていたら師匠が来たのでサプボがついたのでは?? と思うくらいの師匠でした。凄い。

 

 ・「女の道は星の道」、ど真ん中を行く演歌がアイマスのライブで披露されるっていう面白さに、花井美春さんの民謡仕込みのガチ歌唱で新しい空気を作ってたのが大変素晴らしかったです。あと二日目になると拍手のタイミングやら「お嬢ーーー!!」「日本一!!!」みたいな声やらで、君たち順応早いな? って。

 

・今回ゲストの総選挙新規ボイス組、初日は「EVERMORE」でなるほどと思っていたら、二日目は新曲(総選挙曲)が投げ込まれてびっくり。そしてその新曲の「Trust me」、ゴリゴリのミクスチャーロックが投げ込まれて二度びっくり。なるほどこれがフロンティア……みたいな。CD発表されましたが、これをあの9人が歌うのが想像できなくて楽しみです。

喜多日菜子役の深川芹亜さんは、あ、これやばい人だなっていう片鱗が伺えて今後に期待。というか人数が増えて何かしらで爪痕を残さないといけないからか、最近全体的に新人がキャラ濃いな? って思う。

 

・小市さんの話に戻るのですが、今回の全体曲「BEYOND THE STARLIGHT」と「イリュージョニスタ!」、ちょうど小市さんがふーりんと前後になる位置に居たんですよね。なので画面に一緒に収まるのです。3周年衣装を着て今のシンデレラガールズの最前線にいる渋谷凛の後ろで、初期衣装を着た結城晴が踊ってるの、端的に言って最高では?? U149は現実なのでは??? と思ってスクリーンを見てました。いや、素晴らしいものを見た。

8月のライブ/イベント感想

8/12 宇宙よりも遠い場所 南極よりも楽しいフェスティバル  @ さいたま市文化センター大ホール

宇宙よりも遠い場所 ファンブック

宇宙よりも遠い場所 ファンブック

 

 最高のアニメ過ぎたよりもい、最高すぎたのでブルーレイを買い、イベントに応募したら当選し、イベントに行ってきました。

主演声優のトーク+バラエティコーナー+朗読劇+ライブというまあスタンダードなアニメイベントでしたが、作品へのコメントや監督からの手紙などなどあって良かったです。ライブの「ここから ここから」はあの4人で歌う機会はこの先にも後にも無いだろうと思うので、聞けて良かった。

とりあえず、名作of名作なので、よりもいを、是非見てください。

 

8/24・25・26 Animelo Summer Live 2018 ”OK!” @ さいたまスーパーアリーナ

keikomori.hatenablog.com

 

Animelo Summer Live 2018 "OK"

anisama.tv

出演者が去年ほど豪華じゃないかなとか、3日参加も辛いしアニサマは今年までかなあとか毎度のように思ってテンション下がっているんですが、始まれば楽しいし、終わってみればアニサマ最高だな! ってなるのでやっぱりこのイベントは凄いと思います。今年も最高に楽しかった。

ただ、演出から何から全てがブランドとして完成されつつあって、血を入れ替えながら伝統を繋いでいく段階に入っているとは思うものの、アニサマに憧れてアニサマを目指してというアーティストが増えていく中で、だんだん「アニサマらしさ」に縛られていっているような気も少し。

 

以下、印象に残ったアーティストを。

藍井エイル

 休業前にアニサマの出演をキャンセルしていたのもあって、復帰後ここにシークレットで戻ってくるというのはやっぱり感慨深いものがありました。

 

亜咲花

亜細亜に咲く花」で亜咲花さん。若くて物怖じせずにグイグイくる前向きさと、歌唱力の高さ。逸材だなあと思いました。大きく育ってほしい。「SHINY DAYS」めっちゃ良かったです。あと英語の発音がめっちゃ良いです。

 

Poppin'Party

2年前と比べたらめっちゃ成長しているので是非多くの人に見て欲しいとは思っていたんですけど、私も見たことがないパフォーマンスが飛び出してきたんで「!?」って。5月のライブから何がどうしてそうなった。ポピパについては(思ったより)バンドしてる、(普通に)バンドしてる、みたいな感想がどうしてもついて回ったのですが、この日のポピパは演奏、ステージパフォーマンス共に純粋に凄かったです。あとコンテンツとしてのバンドリの盛り上がりっぷりも凄いなと。「God Knows…」のカバーはびっくりした。

 

OLDCODEX

Aqoursが出てきてトリにOLDCODEXだと気づいた瞬間これは大冒険だと思ったのですが、終わってみればもうOCDがトリ以外に考えられなかったというくらいのステージ。様々なジャンルのフェスに出てきた経験と、改めて出演するアニサマへの想い、アニソンへの想いを語ったMC。そして圧倒的なライブパフォーマンス。

今年リスアニで見た時にも思ったのですが、昔に比べて本当に観客と向き合ったライブをするようになったよなあと思いました。この日の流れの中では異質な存在のはずなのに、空気の掴み方が半端なかった。それでいて、媚びるのではなく、あくまでもOLDCODEXでしか無いものが見せられるのは、いろいろな場所で踏んできたステージ分のものがあるからなんだろうなと。いや本当に良いものを見ました。

 

スタァライト九九組

「Star Divine」で完全にスタァライトされちゃいましたね。曲も好きだし、格好良かったというのももちろんありつつ、歌もダンスも殺陣も完成度が高いけれど、決して完成品ではない感じにこう、物語を、感じてしまった……。これは追いかけなきゃいけないのかもしれない……と思ったので、とりあえず次の舞台は行ってきます。そしてゲキテイのカバーはそれはもうなんというかズルいでしょうに。

 

大橋彩香

我らがへごが立派なパフォーマンスを今年もアニサマで見せていたことにご満悦でした。幸せがある。最初のポップアップで超大ジャンプで出てきた時は着地をちょっと心配しましたけど!

 

fhana

青空のラプソディ」が去年に引き続きメイド喫茶開店のステージ演出だったのですが、大サビでみんなが踊る中、一人黙々と肉を食べ続けるカロリークイーン(竹達彩奈)さんズルすぎるでしょ……。

 

悠木碧(ターニャ・デグレチャフ)

えっそれありなの!? ってなったのですが、どこかで聞きたいと思ってた曲が聞けて良かった。ただまあ曲的にもあのセット的にも、某妖精の帝國を思い出すよねこれ……。

 

アイドルマスター SideM

何はともあれしゅごんの圧倒的センター力が光るステージ。アニサマは男女比8:2くらいでそれなりにアウェイ感ある中で「GLORIOUS RO@D」のWow Wowのところがちゃんと会場で合唱になっていたのはびっくりでした。というかここからトリまで男性アーティスト3連発もアニサマ攻めるなあと。

 

宮野真守

久々に見たマモはやっぱりスターでした。オーラが違うよオーラが。なんかもう全部がかっこよかったのでヤバい。「シャイン」も相変わらずヤバい。語彙力の消失。

 

ORESAMA

聞きたかった「流星ダンスフロア」が聞けて満足。ちょっとレトロでおしゃれな横ノリの感じがライブで非常に良かったです。これは単独ライブも一度見てみたいなと思いました。

 

鈴木みのり

ネギの方の鈴木さん。あなた推すのは林檎じゃなくていいのかと思いつつ、とにかく前に出ていこう聞いてもらおうという姿勢と、それが嫌味にならないキャラクターの勝利だったような気はします。歌は相変わらず上手い。早見沙織と一緒に歌って負けないのはなかなか凄いんじゃないかと思いました。やっぱり魅力あるなと思います。

 

鈴木このみ

ネギじゃない方の鈴木さん。「歌えばそこに君がいるから」、本人が初めて声優として主演したアニメのOPで、作詞にも関わっているからなのか、鈴木このみでこんな感情の入り方しているの初めて聞いたという感じでした。セリフでの曲入りから、端的に言ってエモかった。「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い」はまさかここでこの選曲とはという感じ。最高に楽しく、そして首が痛くなりました。

 

ZAQ

なんだか人気らしいとは知っていた「カーストルーム」が本当に人気なんだなと感じたステージ。良いことです。「JOURNEY」はステージ演出も相まって多幸感にあふれていました。というかこの曲の歌詞、改めて聞くと完全に結婚するやつだと思うんですが、中二病の映画そういう話だったなの!?

OxTとのコラボでの「シュガーソングとビターステップ」は最高の一言。

 

OxT

相変わらずマシンガンのように喋るおしゃクソさんに煽られて「ヴォイ」と叫び続けた「GO CRY GO」の楽しいこと。オーイシマサヨシやっぱり流石だなあと思いました。

 

ミルキィホームズ

ミルキィにそれほど思い入れは無いつもりでいたのですが、解散前最後のアニサマ出演、「雨上がりのミライ」で嵐のように出てきて消えてった初回アニサマとか、ブシロライブで見た4人目オーディションとか、みもりん以外ダンスが怪しかったこととか、色々な記憶が走馬灯のように流れていってちょっと涙腺にキました。時代を一緒に駆け抜けた感が、どうしても。

 

JAM Project

熱量というか、エネルギー総量がやっぱり桁違いで流石の一言。凄い。なんで今さら大トリにJAMという気持ちが無かった訳ではないのですが、「SKILL」はあらゆる条件を無視してぶち上がって、燃え尽きて、最高の締めだったと言わせる名曲だと改めて思いました。つよい。

異セカイ系 / 名倉編

 

異セカイ系 (講談社タイガ)

異セカイ系 (講談社タイガ)

 

 小説投稿サイトでトップ10にランクインしたらその小説の世界に入れるようになったニートの主人公が、異世界転生、創作者とキャラクターの関係、突然のミステリ展開、時間SFと、メタにメタなメタフィクションを駆け抜けていく、ちょっと簡単には表現しづらい一冊。ですがこれ、そうやって主人公が悩んでもがいて駆け抜けた結果が最後の最後に語られるメッセージにたどり着いたのではなく、このメッセージが初めにあって、それを支えるようにすべてが組み上がっている作品なんじゃないかと感じました。

読んでいると確かに、突拍子もない展開でも考えてみればそれしか無いという道をたどっていくのですが、ちょっと違和感がある感じというか、「そうであるためにそういうことにした」という恣意的な感じがあります。それはこの作品において展開が主人公の「創作」であるために正しさではなく意思を道標にさせていて、なおかつその在り方自体も作品に自己言及的に織り込まれいるので当然ではあるのですが、それにしても最後の方に行くほど無理筋を跳んでいくような印象が。

そしてこのラスト。それからラスト前に明かされる、それ本当に明かしていいの? という設定。ここまで読んで、これはこの素朴な善性が何よりも先にあって、それが生まれた瞬間に、そうであるためにすべてが生まれ、無理筋を繋ぎ、そして出発点としての主人公に至った(そういうことにした)のではないかと。「小説に入れる能力」から辿り着いた帰結ではなくて、この善性をそうであらしめるために、同じような構造が小さく繰り返されて至った出発点が「小説に入れる能力」だった、みたいな。

最近のテーマをこれでもかと取り入れて、創作者とキャラクターの関係性の在り方を真摯に真摯に突き詰めた上で両側から編み込まれたみたいな美しい構造を作り上げて、あれやこれやとギミックを仕掛けて、関西弁の疾走感で前に前にと進みながら、実は後ろに向かってぶわっと広がっていくような不思議な感じ。

たったそれだけのことのためにこんなにと思うか、それだけのことだからこれが必要だったんだと思うのか、その広がり自体を楽しく感じるのか、その中にあるテーマに興味を惹かれるか、なんだか凄い試みのような、大真面目すぎて面倒くさいような、どうにもとらえどころのない面白さのある作品だと思いました。