【小説感想】ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 4,5 「case.魔眼蒐集列車 上・下」 / TYPE-MOON・三田誠

 シリーズ的にはまだ折り返しですが、いやあここまで読んできて良かったと思わせてくれる面白さでした。めっちゃ面白かった。

第五次聖杯戦争への参加を目論むエルメロイⅡ世がイスカンダルの聖遺物を盗まれ、代わりに数多の魔眼を集めオークションが行われる魔眼蒐集列車への招待状が残されていた、という導入から始まる事件は、これまでからしてもスケールが大きくで濃密なものでした。クセはあれど魅力的なキャラクターたち、様々な魔術と魔術師のあり方を描き、そして起きてしまった事件をエルメロイⅡ世が解体するというのはこれまでと同じ趣向なのですが、そこに詰め込まれるものが盛りだくさんすぎて、カツと天ぷらと唐揚げが一緒に出てきたみたいなことになっています。

これは最終巻かと思うような出し惜しみのない大魔術の連発に、死徒の残したもの同士のぶつかり合い、果ては英霊の登場ととにかく派手な展開の中で、クローズアップされるのは、ウェイバー=エルメロイⅡ世から見たイスカンダルへの関係と、グレイからみたエルメロイⅡ世への関係。そしてその導く者と導かれる者の関係はトリシャとオルガマリーにも当てはまったり、更には倒れても這い上がる者だとか、偽物だとか、義兄弟といったモチーフが物語の中で様々な形で現れるのが面白いです。それでいて、増し増しになった要素が最後には綺麗にまとまるのだから凄いなと。

そんな中でも個人的にはやっぱりグレイが好きです。他人の願いを押し付けられて、英雄の似姿として己を無くしていた少女。そんな虚無の中にいた彼女が、自分自身の大切なものを見つけて、それを守るために足掻く物語はとても魅力的で、師匠のために必死になる姿に、頑張って、でも死なないで、自分を粗末にしないでとつい身を乗り出してしまいます。エルメロイⅡ世への忠誠だけではない、かといって恋愛的な情でもない、感謝と親愛と尊敬の入り混じったような想いが良いなと。

そして、境遇を考えるに、ヘファイスティオンを名乗る彼女の存在はこの先も鍵になりそうで、グレイが何者になりえるかというところも、この先のシリーズをとても楽しみに思います。

【ライブ感想】THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 7thLIVE TOUR Special 3chord♪ Comical Pops! 9/3・9/4

idolmaster.jp

 

初日は現地、二日目はLVで見てきました。

正直、6thの完成度が高すぎてあれ以上のものはもう出てこないだろうという思いもある中の7thツアー、しかも3rdで画面すら見えなかったフルフラットな会場であまり期待しないようにしようと思っていたのですが、楽しかったです。本当に楽しかった。6thのようなきっちりとやるのではなく、ちょっと崩してコミカルでポップに振った、楽しいライブでした。

そして今回のライブは、やっぱりアニメからの3rdライブのことを考えてしまう作りだったと思います。アニメのシンデレラの舞踏会でやっていたサイドに2ステージある構成、そして3rdライブと同じ会場。あの時にやれなかったことを6thまでに少しずつ拾い集めていって、そして戻ってきたこの舞台。そこでのライブが、特別な何かがなくても、こんなにも楽しさを見せてくれるようになったという、その歩んできた道のりが、長く追ってきているとどうしても感慨深いです。その上にアンコール前最後の全体曲が「M@GIC☆」で、あの頃と同じ映像を背景に、あの頃には声がついていなかった子たちを交えて歌い踊るのだからそれはもう。

 

そんな事を言いながら、ただ楽しいだけじゃなかった話をしてしまうのですが、今回ほたるPが完全に狙い撃ちだったというか、殺しに来ていたというか、私はほたるPという程ではないものの、それでも完全に死にました。

白菊ほたるは、今のところ、アイドルとしてのストーリーよりも、そこに至るまでのストーリーに重きが置かれたキャラクターだと思います。強烈な不幸体質で、入る事務所入る事務所潰れてしまって、本人も性格は暗く後ろ向きで、自分の不幸に人を巻き込みたくないと言っていて。でも、それでも、アイドルになるという夢は諦めなかった。たとえそれが、茨の道であっても、誰かを不幸にしても、そこだけは決して。デレステSSRに「手折られぬ花」なんて冠された、その芯の強さ、弱気な態度の奥にある、それ自体が呪いじみた執念、情念に惹かれたのです。

そのほたるの初舞台。ソロの「谷の底で咲く花は」というこれまた強烈な曲を、センターステージでたった一人、震える声で途切れそうになりながら、しゃがみ込んでも歌い続ける天野聡美があまりにもほたるで。そしてそこから、鷹富士茄子との「キミのそばでずっと」。今までアイドルからPへの曲だと思っていた歌詞が、2人の関係にぴたりと当てはまって、天才かと。「どんな過去の痛みも分け合って」とか「運命に試される時も きっと乗り越えられる大丈夫」とか、歌い分けも完璧で。またそれが、1年先にシンデレラガールズの舞台に立った森下来奈と今年はじめて舞台に立つ天野聡美の関係にもシンクロして、かこほたが尊すぎてもう本当にだめでした。そうだよ、出会ったんだよ君たちは。今度こそアイドルになって、そうして歩んでいけるんだよって。

さらに2日目はソロ曲を終えたほたるが震える声で歌い続けて、茄子さんの顔を見たところで泣き出すんですよ。その表情に、今回のライブだけじゃなく、その前からの物語を見ちゃうんですよ。茄子さんも感極まりながらも、お姉さんとしてしっかりしようとしていて、ねえ、本当無理。完全に2人の世界だったし、途中からは病めるときも健やかなるときも~って歌っているようにしか聞こえなかったです。それでまた数曲後に、ぎこちなくも笑顔で「明日また会えるよね」って歌ってるんですよね、ほたる。もうなんなの。

天野さんも最後のMCで言っていた通り、白菊ほたるはこれから、ここからスタートだと思います。今回は過去から現在へ至る物語を、初舞台だからこそ見せきれた。だから、こんなにもフューチャーされたのだとも思います。でも、アイドルとしてはここからがスタートなんです。ミス・フォーチュンは不幸に苛まれてきたほたると、人ならざる幸運を身に受けてきた茄子さんが出会うことでアイドルとしての1歩を踏み出せた、そういうユニットだと思うので、ここから、アイドルとしての2人の活躍が見れるというのがとても楽しみです。

そこに更にワンステップス(のの、関ちゃん、ほたる)のイベント新曲予告ってオーバーキルにも程があるでしょう。そうだよ一歩踏み出したほたるはいるんだよそこに……。次の一歩があるんだよ……。本当に、流れが美しすぎる。

 

それから橘ありす。SSR「ありすの物語」の成長した姿を見たところに来た「to you for me」はもう最初に聞いた時点で歌詞がやばくて、こんなものをライブで見たら大変だと思っていたのですが、大変でした。「in fact」での頑なさ、囚われたもの、そこから回数を重ねるごとに少しずつ開放されていく様を表現してきた佐藤亜美菜が歌うからこそ、そこに橘ありすの物語は宿り、キャラクターが降りてくる。アイマスというコンテンツの真髄を見た気がしました。もうめっちゃ泣いた。何がコミカル橘だと思いましたが、他の曲では確かにコミカルだった。

 

あとは印象深かった所を箇条書きで。

・U149が大好きなので「ドレミファクトリー!」も当然好きなのですが、目の前の通路をちえかおが仲良しな様子で駆け抜けていったので、これはチケットのもとを取ったな……と思っていました。なっぴーは本当にいつ見てもいっぱいの笑顔で飛び跳ねて子供らしい可愛さを振りまいているのが凄いと思います。プロフェッショナル。

・「LOVE☆ハズカム」の初披露、ぐっと来ちゃいました。WWGがあって、デレステのコミュも良くて、りなぽよにやっぱり思い入れがあるんですよね……。

・「O-Ku-Ri-Mo-NoSunday!」、久川姉妹、完璧なデビュー戦。完成度と初々しさの両立が完璧でした。曲も本当に良い。あと、この2人、喋っても動いてもMCのでもずっと本物の双子姉妹にしか見えなくて凄かったです。普段飄々としているのは凪で、でも最後に感極まったところをフォローするのは颯なのはあまりに解釈の一致だった。凪は泣いたりしないって立花日菜は言っていたけれど、そう言うところまで含めてもらしいなって。そしてりかちまるの颯やばいですよね。私はわたてんが好きなので星野ひなたにしか聞こえない呪いを長らくかけられていたのですが、ついにそれを振り切って、久川颯がめっちゃ好きになりました。あと上京してきたばかりの2人が「Kawaii make MY day!」に招き入れられてコラボするのも強しいし、ベテランである城ヶ崎姉妹と姉妹コラボするのも強い。

・えっ知らないイントロだよ?? からのセクシーギャルズ「Gossip Club」というサプライズ。いや本当にまさかでしたし、曲もユニットにあっていて良かった。

・「あんきら!?狂騒曲」、過去最高の仕上がりだったと思います。あんきらの良さが詰まっていた。

・合間にしんげきのちょっとした劇(というかコント)を挟んでの24曲連続で、これで終わったと思ったところからの最終ブロック。アクセルを踏み抜くんじゃないかという選曲でめっちゃ盛り上がったのですが、最後に予想外のゆずカバー「LOVE&PEACH」が来てテンションが完全にマックスでした。踊り狂って楽しい曲過ぎて、そこからゆずが作ってくれた「無重力シャトル」に繋がるのも楽しさが天井を突き破っていった感じ。ゆずはデレステとコラボしてくれて本当にありがとう。

【ライブ感想】Animelo Summer Live 2019 -STORY- 8/30・8/31・9/1

anisama.tv

 

毎年現地に来るまではテンションが下がっていて、終わってみればやっぱりアニサマ楽しいな! ってなるところまでがアニメロサマーライブです。しかし歳を重ねるごとに3daysは辛くなる。

アニサマって特定のアーティストが好き、ではなくアニソンというジャンルが好きな人のためのイベントで、歴史が積み重なって垣根が広がった今は昔のようにみんなだいたいおんなじ曲を聞いて知っている一体感みたいなものは薄まったけれど、それでも誰が来ても知ってるし楽しめる人が一番得をするイベントだと思います。しかもがんがん世代交代を図っていくのでそのうち振り落とされるんだろうなあと思いながら、まだまだ楽しめているのであと数年はいけるのでは、とか思ったり。

以下箇条書きに感想を。

1日目

けものフレンズ
何かこう、振り付けにも従わず歌も歌わず走り回る金田朋子の幻影を見た気がする。

佐咲紗花
「Grand Symphony」本当に好きなんですよね。そして自分が思ったよりもガルパンが好きなことを自覚しました。この後に渕上舞と一緒に「Enter Enter MISSION!」を歌ったのも、それ!! って感じで最高でした。佐咲紗花は久しぶりに見たのですが、歌が上手くなったような気がします。貫禄が出てきたというか。

渕上舞
プラネット・ウィズEDを外して、一番自分らしい楽曲であろうノンタイの「BLACK CAT」を持ってくるのが最高に渕上舞って感じがして好き。

・アニメロサマープリンセス from プリンセスコネクト!Re:Dive
初日一番楽しみだったと言っても過言ではないプリコネ。まさかの個人衣装で、しかも出来がえらい良いもんだからびっくりしました。コンテンツとしてはまだまだ知名度の無い中で、人気の声優×豪華な衣装×豊富なアニメ素材で殴るという、シンプルな資本力の闘いをしていて好きです。伊藤美来のコッコロ似合い過ぎでは。あと、せっかく衣装作ったんだから単独ライブお願いします。

氷川きよし
2年前のシクレ出演のときも思ったのですが、存在が美しくてびっくりするし、歌がうますぎてびっくりします。カバーの「TOUGH BOY」が本当に上手すぎて笑えてくるくらいでした。歌で金が取れるとはこういう事を言うのだなと。

如月千早 feat. ピアニート公爵
事前に初日のシクレはアイマスらしいとは聞いていたものの、なんか聞き覚えのあるピアノイントロから「蒼い鳥」はぶっとびます。ソロ? 千早? MCも千早でやりきった?? みたいな。いいものを見た。

三森すずこ
まさか人生で聞けることはないと思っていた「ファッとして桃源郷」をここで回収できてしまうとは思わなかった。叫んだ。

オーイシマサヨシ
「楽園都市」がめちゃくちゃ好きなのでこれだよこれ、最高だなって思ってたら、へごが呼び込まれて「オトモダチフィルム」が始まったので私が大変なことに。そのコラボは予測はできたけど油断があった……。踊るへご、めっちゃ良かったです。

鈴木雅之 feat. スフィア
まさか人生で鈴木雅之の生歌聞くことがあるなんて思わなかったのですが、まさかアニサマで「め組のひと」を聞くなんて思ってなかったので良い経験をしたなって。あとMCで突然「ランナウェイ」の追っかけを振られてそこそこ返せてるアニサマ観客どうなってるんだ。

Roselia
Roseliaらしくステージをやっていて良かったけど「FIRE BIRD」聞きたかったなという思いもあり。あの、これが声優にやらせるドラムかよっていうのを聞いてほしかった。でもカバーの「This Game」のイントロが始まって、これ本人いるぞ今日ってところからのご本人登場でのコラボは熱かったです。

鈴木このみ
ハイレベルでド安定。やっぱ凄いなこの人はと思います。「蒼の彼方」と「DAYS of DASH」が好きなので、聞けたよかった。

・fhána
とんでもなかった。いや、「青空のラプソディ」を二曲目に持ってきて、涙ながらのMCを挟んでそこからの二曲、明確には言わなかったけれど、何を思って歌ってたのかは想像がついて。「僕を見つけて」は惜別の歌で、それでもという、クリエイターとしてアーティストとしての覚悟みたいなものが見えて、鬼気迫るパフォーマンスでした。何をすべきかとか誰のためとかじゃなくて、ただただこの選択肢しかなかったみたいな、そういう表現だったように思います。

 

2日目

茅原実里
Paradise Lost」はやっぱり上がるし、そtれがTRUEとのコラボなら言わずもがなって感じです。

鈴木みのり
去年も片鱗を見せていた変な子なんだなっていうのが全面に押し出されて、でも歌えば抜群に上手いというバランスで好感度高いです。「ダメハダメ」とても良かった。

・RAISE A SUILEN
そうか1曲かー、まあ初出場でハロハピ来るのならそれは仕方ないかー、でも1曲かーーーみたいなところはありつつ。「UNSTOPPABLE」でおお? と思った人は是非単独ライブへ来てください。RASはあんなもんじゃないよ。

栗林みな実
君望舞-乙HiMEウテナという10年間違えてるような選曲がおっさんには楽しかったです。奥井雅美コラボでの「輪舞曲-revolution」、最高でした。

アイドルマスター SideM
小松昌平はこの日も動きがキレていて最高でした。315。

スタァライト九九組
意外な選曲からカバーを経ての「Star Divine」。センターステージへの通路を使った間奏での殺陣が、#2再演を経てのレベルアップを感じさせるものでめっちゃ良かったです。九九組のベストに近い出来だったのでは。

亜咲花
去年と比べると見違えるほどに堂々としたステージングでこれはやっぱり才能だと思いました。ちょっと喉の調子悪そうでしたけど、それでも歌声の迫力は抜群で、なんだか昔の鈴木このみを見ているような気持ちになります。素直にこれからが楽しみだし、MAGESは責任を持って育ててほしい才能だと思いました。あと天井から虹色に光るテントが降りてきて鈴木みのりが現れたの、謎演出すぎてだいぶ面白かったです。

大橋彩香
「ダイスキ。」のダンスも良かったし、歌は最高に高音が伸びていて、大橋彩香史上でも屈指のレベルのパフォーマンスだったように思います。見るたびに成長してて、ファンとしてはとても楽しいです。「ワガママMIRROR HEART」はめちゃくちゃUO折られていて、本当に人気曲なんだなと嬉しくなりました。

・TRUE
なんかね、やっぱね、ユーフォの曲で、物語は続いていくっていうところに力を込められるとね、くるものはありますよね。オーケストラを率いての「Blast!」と北宇治カルテットを交えての「DREAM SOLISTER」、素晴らしかったです。

北宇治カルテット
ZAQ提供曲最強の一角であるところの「トゥッティ! 」、本当に最高に盛り上がって最高に楽しい最高の曲だと思います楽しかった! あと黒沢ともよが楽しそうだった。

angela
「全力☆Shangri-La」に「全力☆シドニア」のマジでやりやがった感、怖いものなしなMCの面白さ、そして決めるところは決めるカッコよさ。もう流石としか。大御所感がありました。

TrySail
この人たちも毎年見るたびに凄くなっていくのですけど、今年は特に凄かった。歌声も力強くなってるし、ダンスもいい意味で遊びができて、ステージングがめちゃくちゃ堂々としてて、いやほんと見違えるよなあって。「Sunset カンフー」楽しすぎです。

Aqours
ダンスのキレが極まってきていて、後ろで流れるアニメとのシンクロ率が半端なくなっていました。なんかもうほとんど同一。存在が同一っていう感じで、ラブライブのコンセプトの究極系にまた一歩近づいているなあと感心してしまいました。

 

3日目

藍井エイル×蒼井翔太
ああこれが何年か前にできなかったというあおいコラボかと。この二人で「Preserved Roses」なら、そんなのもう外れるわけないじゃないっていう感じでした。

・スピラ・スピカ
曲よりもはや新喜劇のようだったMCが印象に残っているけどそれでいいのかスピラ・スピカ。SACRAの新人組は必ずバックステージの決まりでもあるのかと思ってた流れで、最終日にバックステージからトロッコに乗ってメインステージに行けるかと思ったらそのまま退場するメインステージに立ちたい芸を見せてくれたのが面白すぎました。やはり歌の上手い芸人だったのでは……?

上坂すみれ
あんまりこういう言い方はアレな感じなんですけど、いやまあ、エロかったですよね……「ボン♡キュッ♡ボンは彼のモノ♡」。

今井麻美
まさかアニサマZABADAKを聞くとは。しかしこれも如月千早カバーなんですよね。

内田真礼
イントロがかかってすみぺが上がってきた瞬間に勝利を確信した「魔女になりたい姫と姫になりたい魔女のラプソディー」。いやだってノンタイのカップリング曲ですよ。2年前にも2人揃っていて、でもコラボでやったのは中二病の曲でそりゃそうだと思ったんですよ。それがまさかね、ここで来るとはね。これもZAQ提供曲最強の一角、最高でした。いやこれすみぺ魔女とまあや姫の百合曲なんですよ。それを二人揃っての初披露は最高だし、コール入れられたのも最高だし、「あなたみたいにはなれない、友達にはなりたい」で私は死にました。ありがとうアニサマ。ありがとう。

ZAQ
で、その流れでZAQが出てくるの完璧すぎませんかね。「BRAVER」は最高に上がる曲なんですが、知名度の関係でサビで叫んでる人が少なくてちょっと寂しさもあり。「ソラノネ」はZAQ本人のピアノに口笛、そしてバンドにブラス隊もいる編成で披露されて最高でした。この「ソラノネ」が聞きたかった。やっぱZAQカッコいいし楽しいしライブ楽しみだなって思いました。

・buzz★Vibes
EZ DO DANCE」が完全にストリートのカリスマ黒川冷だった気がするのですが、木のせいですかね……。いや気のせいのはずは……。

放課後ティータイム
いやちょっとほんとマジで!?? 待って??? ってなったし会場はどよめいてるし、目の前でHTTが演奏して歌ってるしで動揺が激しすぎました。超弩級のシークレットだった……。ちゃんとバンドでやっていたし、あの5人の纏う空気は完全にHTTだったし、夢でも見てるのかと。今年は5人揃ったSOS団も見てしまったし、放課後ティータイムも見てしまったし、未練が回収されていってそのうち死ぬのでは……。

JAM Project 
まさかの後半トップバッター。しかしセトリはトリ仕様という。「SKILL」でステージにたくさんの出演者が出てきてもう完全にライブ終わった空気になっていたところで、内田真礼小倉唯ハム太郎が空気をリセットしていった流れがちょっと面白すぎでした。

OxT
「UNION」でアカネ君の映像から入って、アンチが現れてグリッドマンが現れてヒーローショーが始まってめっちゃ楽しかったです。曲も良かったしヒーローショーも良かったしで、GRIDMANのステージとしてパーフェクトなものが見れたなあと。ここだけではなく、今年のアニサマは作品にフィーチャーした演出が多かったなと思います。

Poppin’Party
HTTより後にポピパというのはなかなかの逆境であると同時に、すごく文脈を感じるものがあって、なんかそれだけでも良かったなという感じがありました。あとパフォーマンスは安定感とバンドの迫力みたいなものも出てきていて、なんかもう普通に良いんだけど逆にコメントに困る、みたいなところが。「キズナミュージック」はいつ聞いても最高です。

藍井エイル
MCで本人も触れてましたが、何年か前にアニサマに穴を開けたエイルがカムバックしてこうして大トリを務めるというのが、まさに「STORY」であるなと思いました。そういう意味では「月を追う真夜中」の歌詞がとてもエモかったです。

【小説感想】なめらかな世界と、その敵 / 伴名練

 

なめらかな世界と、その敵

なめらかな世界と、その敵

 

 短編集なのですが、最初の1編を読んでこれはちょっと凄いな? となり、途中まで読んでうわこれ凄いぞとなり、最後の1編まで読み終えていや本当に凄いわ……と。これは、なんというか、モノが違うぞって感じが、あります。

短編ごとに様々な時代とSF的な設定が描かれて、その上で、どの作品も人の感情と関係に結実していくような小説たちだと思います。そして、どれもものすごく精度が高いというか、読んでいて手触りの良さ、更に言えば美しさを感じるのが素敵だなと。しかも話としても非常に面白いので、それはもう無敵なのでは、みたいな。

短編ごとに、平行世界を感じ取って乗り換えていく「乗覚」がある世界だとか、冷戦時代にシンギュラリティを超えたソビエトのAIだとか、現代に起きたある特殊な災害の話だとか、本当に様々な設定を、少年少女の語りだったり、手紙形式だったり、あるいは歴史として語ったりする幅の広さ。その設定自体をテーマとするのではなく、そこからある人と別の人とその感情と関係の物語へと展開されていくのは、ちょっとズルいようにも思うのですが、その手捌きがあまりにが見事なので、ただただ凄いなとしか言えません。その過不足の無さ、文章も流れも、短編だからこその精密さというか、精巧に作られた硝子細工をみているような感覚がありました。

どれも素敵だったのですが、一番好みなのは伊藤計劃「ハーモニー」へのトリビュートとして書かれた「美亜羽へ贈る拳銃」。インプラントで脳をコントロールする事ができる技術を背景に、誰かを愛するように作られた人格との関係だとか、人の意識のあり方のようなテーマを描くと見せかけての、終盤の畳み掛け。本当の自分とは何か、みたいなことは全部うっちゃって、あくまでも一人の天才少女と、彼女が夢に破れた末に自分の脳を変えた結果としての少女と、彼女と対峙する青年の、ここにある感情と関係の話として描きるのですが、これ大変に素晴らしくて。この設定だからこそ生み出される、感情と関係の極地みたいなのがあった上で、結果として美亜羽というキャラクターが魅力的に立ち上がってくるのがもう。結末を直接語らずに、ああいう形で示唆するところまで含めて、最高でした。

そして、「ひかりより速く、ゆるやかに」。現代を舞台に、乗客を乗せたまま超低速化してしまった新幹線と、修学旅行を休んだためそこに乗り合わせなかった2人の少年少女の物語。特殊な形の災害を描く小説なのですが、LINEを中心としたコミュニケーションだとか、メディアのあり方だとか、ネット上でのコンテンツ化だとか、あまりに時代の空気の捉えていて、今読むからこそ考えさせられるものがあります。そしてこの想像上の災害を起点として描かれる社会の変化にも納得させられる力があって、そこも凄いと思いました。

それでもやっぱり最後には、残された少年と、少女と、低速化の中にいる少女の関係と感情の物語になって面白いし泣けもするのがこの作品らしさかと。そしてこれも結末の描き方が、そこに乗せてくるの本当にもう! ってなりました。エンタメとしての完成度も抜群に高くて、早くこれアニメ映画化して欲しいと思います。今しかないでしょ、間に合わなくなるよ! って。

しかしこう、実の姉妹に義理の姉妹、1人の身体に2つの人格のようなバリエーションのような関係が様々な形で描かれていて、作者は姉妹百合になにかこう、並々ならぬ想いがあったりするのかなと、そんなことを思ったり。

【小説感想】吸血鬼に天国はない / 周藤蓮

 

吸血鬼に天国はない (電撃文庫)

吸血鬼に天国はない (電撃文庫)

 

 戦争と禁酒法が壊してしまった街。当たり前にあった価値は失われて、虚無と個人主義が蔓延する荒んだ街で、 非合法の仕事も受ける運び屋の青年と、吸血鬼を名乗る少女は出会います。この物語は失われた世界で人と人ならざるものが意味を求める恋物語で、それは本当に初めも終わりも変わらずそうなのですが。いやしかし、これは。

 

以下、少しネタバレがあります。

 

 

 

 

 

 

前シリーズの時にも思ったのですが、分かりやすく気持ちの良い展開を許さない作者なのだなと思います。マフィアの抗争に巻き込まれて母親を失った孤独な吸血鬼。育ちが良くて世間知らずで、気立てがよく守ってあげたくなるような、とびきり美しい少女。虚無にまみれた街で意味を見失いながら生きていた運び屋が、彼女と出会い、彼女を守り、人間性を取り戻していく、そんな展開は待っていない。だって、彼女には確かに嘘があったから。けれど、無感情に沢山の人を殺した、決して理解し合えない、駆逐すべき人外の化物だと切り捨てることも、この物語は許さない。

戦争で父を亡くして家を出た時点からきっと壊れていたシーモアという青年は、それでも笑っちゃうくらいにナイーブで、運び屋という仕事を通じて辛うじて取れていたバランスの上に、ルーミー・スパイクという怪物は現れました。そして、彼は彼女の存在に触れ、一般的な正しささえ無効化された街の中で、価値を、意味を、そして行為と報いのあり方を問い続けることになります。世を捨てたような顔をしながら、割り切れているようで割り切れていない彼は、依るものが無いからこそ、ルーミーという存在を前に、そこに向き合わざるを得なかった。たとえそこが泥沼であっても。

仮初の幸せを見せた序盤から、一枚ずつ幕を剥がすように、安易さを拒んで踏み込んでいく中盤からの展開。足掻くたびに現実の底が抜けて落ちていくようなそれは、エンタメ作品としてかなりギリギリの所を通って、けれどやっぱり、シーモアとルーミーの、人と吸血鬼の恋物語に行き着く終盤。そこには最初に思っていたような救いはなくて、けれどこの街でシーモアとルーミーが生きるということを問い続ければ、それはこの地獄の中にしかなかったのだと思います。

ただ、そういう深く沈み込んでいくような物語なのですが、最終的には青年が人外の少女と出会った恋物語としてもめっちゃ面白いんですよね、この作品。演技が剥がれてからのルーミーが、埒外の怪物でありながら、化物なりに感情がないわけではないし、コミュニケーションだって取れるというバランスの上で、形を変えていくシーモアとの関係性。価値を失った世界と永遠に続く孤独の中で触れてしまったシーモアという存在が、怪物だった彼女を壊していく過程が、それはやっぱり地獄なのですが、人外と人間のロマンスとしては、とても美しいなと思います。

いやほんと、終盤のペンキのシーン→下水道のシーン→車でのシーン→ラストシーンの各イベントが強すぎて、ルーミーがあまりに魅力的に見えてくるので、ベタさをずっと排除してきた最後にこんな直球を投げ込まれたらこっちも困っちゃうわって感じでした。

シリーズということで、ここから続くといってもどうするのだろうとも思うのですが、この地獄の中で、2人ならいったいどんな物語を見せてくれるのだろうと、とても楽しみです。人に勧められるかというとちょっと二の足を踏むところがある作品なのですが、私としては凄く好きな一冊でした。

【小説感想】りゅうおうのおしごと! 11 / 白鳥士郎

 

 このシリーズが将棋に詳しくない私にも面白く読めるのは、将棋を通じて棋士たちの生き様を描いているからだと思っています。その上でこんなもの読まされたら、空銀子のファンになるしかないじゃないですか。

三段リーグで連敗を喫して追い詰められた姉弟子が、「私を殺して」と八一のもとを訪れる、衝撃的だけれど、予想された行き止まりでもあったところで終わった前巻。八一との関係が全てで、その繋がりを将棋だけに求めて、そして才能の残酷な格差に行き詰まった彼女。きっと八一が手を伸ばすだけでも良いのだろうけど、でもそれで安易に救われたら、彼女は彼女でいられなくなる訳で、どうしようも無い行き詰まりだなんてことを思っていたのです。

生まれ持った大病。病院での暮らしと、その中で知った将棋。そして迎えられた内弟子としての暮らしと、そこで出会った一人の少年。物語は銀子のルーツをさかのぼり、そして八一と銀子が育った清滝家での記憶を紐解いて、二人の関係が、どんな思いがその手を握らせて、そして離させたのかを解き明かしていきます。外からはあれだけピーキーに見えていた姉弟子が、何を背負い、何を見て、何を想い、今まで重圧の中を闘ってきたのか。

「折れない心」がテーマなのだと思います。彼女にとって、ただ生きるだけでも必要だった、そして今生きていくためにも必要なそれ。根性論や諦めない気持ちなんて、今時ではないと思います。やたらに強調されても、そうは言ってもと思うことだってある。でも、ここまで10巻貫いてきたものが、その言葉に力を与えているのだと思います。空銀子という存在が立ち上がってくるのと同時に、ずっと描かれてきたものが横串を通すような感覚。だってそれがずっと清滝一門の生き様だったじゃないかと。八一も銀子も、もちろん桂香さんも、あい達だって、清滝の子供たちは皆。

それから、追い詰められた姉弟子を見て、全てを後回しにして連れ出した八一と、そこからの展開がもう本当にね、この二人の関係はなんですかね。繋いでいた手、呼ばなくなった名前。相手に対する気持ちを、お互いの自己評価の低さと頑なさが邪魔をして、こじれて、全然似ていないようで、やっぱりよく似ていて。そんな、幼馴染とか姉弟とか家族という言葉でもくくりきれない関係が、連れて行った八一の実家での告白で全部をひっくるめて新しい段階に移っていくの、もう読んでいて拍手するしか無いでしょう。

しかもそれは、銀子にとって決してゴールじゃないのです。行き詰まりだなんて思っていたこちらの浅はかさを、この二人が生きているという重みでぺしゃんこにしていく感じ。八一が隣にいてくれることと、はるか先の背中を見ている八一を追い抜くために将棋を指すことが、当然のように両立して、空銀子というキャラクターがここに証明された感覚。これはちょっと、凄いと思いました。

そしてそこから戻ってきた三段リーグ。確かに変わった銀子の将棋が、遠く届かなかった場所にほんの少しだけ手を掛けるのは、ただただ泣けるものがありました。折れないことが強さ、諦めないことが強さ、一歩ずつ積み重ねられてきたものを背負って歩むその道。そして、かつて大きな才能を前に心が折れてしまった者として描かれる、彼女の主治医の明石先生の言葉が本当にね、泣くでしょそれは。

この対局に至ってはもう空銀子という圧倒的な生き様に言葉を失う感じだったのですが、だってそこまでにあんなもの読まされてきたのだから仕方ないじゃないですか。もう私は今日から空銀子のファンでしかないよっていう、そう思わせるだけの強さがある一冊でした。

あと、八一を前にして自分には才能が無いと言い続ける銀子ですが、特に銀子関係ではなく「才能がある子は突然強くなる」と作中で語られた言葉を、この巻の対局の後、本人でも八一でもないある人の言葉で、「急に強くなった」って拾わせるのほんともうそういうところズルいですよねこのシリーズって思います。泣くぞ。

あとあと、読み終わってから表紙イラストを見るとぐっと来るものがあるのですが、口絵イラストが何枚も写真を集めたアルバムになっているのが本当にもう、ありがとうって感じです。

【小説感想】三体 / 劉慈欣

 

三体

三体

 

 びっくりスケールの設定と幅広いとんでも超展開に科学への信奉心と文化大革命を中心にした文化的背景を混ぜ込んで、豪腕でねじ伏せたようなファーストコンタクトSF。いやもう暴走するイマジネーションって感じなのですが、それを豪快に一本の線にまとめていく腕力と、下支えする知識量の基礎体力の勝利って感じで凄かったです。そしてこれだけのことをしてもまだ序章に過ぎないという。というか序章過ぎてまだなんとも言えないので早く3部作の残りの翻訳を!

序盤は文化大革命の嵐が吹き荒れる中国で科学者の父を紅衛隊に殺された少女の物語で、時代が現代に移るとナノマテリアル科学者が突然自分の撮った写真や視界にカウントダウンの数字が見えることから追い詰められていく科学×オカルトサスペンス風の物語へ。その科学者が出会う、複数の太陽が昇り不安定な環境から幾度も文明が滅ぶ世界を表現した謎のVRゲーム「三体」。そしてゲームの先にたどり着く謎のカルト的集団、かつての少女は大きなアンテナが設置された紅岸基地で何をしていたのか、明らかになる異星文明の存在、果たして地球の未来は……と、書いてみてもあまりにぶっ飛んでる上に盛り沢山だなと思います。思うのですが、これが地に足がついたような説得力を伴って、しかもそれぞれの要素がちゃんと連動して一つの物語を形作っていくのがこの小説の凄いところだなと。

そしてそんな中でも貫かれている科学というものへの信頼というか、信奉的なところが科学小説って感じで好きです。未知に対する好奇心というか、子供の頃に特撮やアニメを見て宇宙人とか地底人がすぐ側にいるように感じた、あのSFのわくわく感というか。オカルトが入っているけれど、でも科学なんだよっていうこの感じに、懐かしく、楽しい気持ちになりました。新しさもあるのだけど、こういうところは凄く昔ながらの科学冒険物語でもあるのかなと思います。