奇蹟の表現 / 結城充考

奇蹟の表現 (電撃文庫)

奇蹟の表現 (電撃文庫)

うーん。普通に面白いんですが。
元裏社会の組織のボスで抗争によって妻と娘と自分の体を失ったサイボーグの男が、教会で働き始め孤児の少女に出会うことによって生きる目的を再び見つけ、その少女の危機に再び立ち上がる、と実に王道なストーリー。全体的に優しい雰囲気があるのも良いです。
ただ、中盤の「あの方の心臓」にまつわる話は必要だったのかなぁ。それ自体には何も価値がないはずのものに価値を見出してしまったことによって、間違った事をしている訳では無いのにたくさんの人が不幸になる様子っていうのは、あんましみてて気分が良いものでは無いと思います。信仰心っていうのはよく分からないのでなんとも言い難いものはあるのですが。あと、サカザキとその黒幕がどうして「心臓」にそこまでこだわるのかも今一分からないです。こういう話を挟みこむのだったら、シマとナツが交流を深めて互いに心を開いていく様子をもっと細かく描写して欲しかったなと思いました。その方が、ナツに危機が訪れてからが引き立つ気がしますし。
ナツを助け、奇蹟を起こすために、単身シマが組織に立ち向かうところなんてすごく好きなんですけどね。
満足度:C+