銀盤カレイドスコープvol.4 / 海原零

これは素晴らしい。とにかくタズサ!タズサ!タズサ!
3巻まで読んで、この人の書くものにはノリが合わないなぁということが分かってて、実際この巻も合うかといわれれば合わないのですが、そんなことはお構い無しに面白かったです。そしてその面白さは3巻まででタズサのキャラが立ってたことによるんだから、ここまで読んできてよかったなと。
今回の主人公はタズサではなくて妹のヨーコ。偉大すぎる姉を持ってしまったことによる、憧れとか羨望とか苦しさとか辛さとかそういうものを背負い込んでめげそうになるのが前半で、秀悟やタズサとの会話によって立ち直って大会に挑むのが後半。全体通してヨーコの心理描写が細やかなので、劣等感とかで押し潰されそうな気持ちとか、姉と比較され続けることの苦しさとか、自分がフィギュアを続ける価値があるのかとかそういう悩みがストレートに伝わってきます。そして、自分を見失ってたヨーコが立ち直るきっかけとなるタズサとの会話が圧巻。プリンセスワンダーは伊達じゃないです。周りの雑音を封じ込めて、純粋に競技者として向上を目指し練習を続けるとか、口では簡単でもやれば難しいことを言ってるのですが、今までそうやって来たタズサの姿を見せられてるだけに重みが。そしてこの姉妹愛。しっかりとヨーコを支えるタズサが素敵すぎです。このキャラクター、もしかしたら脇役にすえたほうが映えるんじゃないかと思うくらい。そこからスケートの描写で、ヨーコが自分の周りに対して感謝するシーンまですごく惹き込まれました。
筋として特別なことをしてるわけでは無いのですが、それでも面白いものは面白いなぁと思った一冊でした。
満足度:A