海の底 / 有川浩

海の底

海の底

是非映画で見たい!
すごく頭の中に映像の浮かびやすい小説で内容も映画向きなので、良いスタッフ集めて、そこそこの俳優でそこそこに予算を組んで作れば面白い空想科学ものになると思うんですが、映画化しないかなぁ。
小説としても大変面白かったです。レガリスという巨大ザリガニが大量に横須賀に上陸して、市民を食べて大混乱という空想科学ものに、警察とか自衛隊とか科学者とか様々な人が関わって対応する話と、停泊中の潜水艦に非難し閉じ込められた2人の隊員と13人の子供達の物語。あとは、マスコミだったり政府だったり米軍だったりが、メインの人々の障害として出てきます。
特によかったのが、レガリスが横須賀に襲い掛かってくる冒頭部分。最初の60ページで惹きつけられます。同時にどうしてそんなのが今まで見つかんなかったんだ的な突っ込みどころ満載のはずの設定も気にならなくなりました。
潜水艦パートと警察パートでは警察パートがよかったです。キレ者な明石や大胆不敵な烏丸たちは典型的な反体制型なヒーローなのですが、そこがまた良い感じ。警察関係者でメインに描かれる人たちが大変格好良いです。警備や軍事やの薀蓄も物語に説得力を持たせるに十分。
潜水艦パートは、潜水艦という密閉空間に閉じ込められた子供達の苦労や、それを保護しなければならない夏木と冬原の苦労、そして交錯する人間関係で微妙に恋愛青春モノ。町内会の力関係が子供達の真理に与える影響の描写などはさすがに主婦作家か。望と夏木の関係は良い感じですし、子供達も年少は可愛く、中学生は生意気に描かれて良いのですが、極限状態にしては余裕がありすぎるかなぁも思いました。
全体的に非常に分かりやすく面白い話で、読後感も非常によかったのですが、両パートとももう少し洗練されれば大傑作なのになぁという感じも。どこがというわけでは無いのですが、あと少し。でも非常に面白かったです。読めてよかった。
あと、電流を使った防衛線について、「先人にならいました」→「ゴジラですよ。知らないんですか?」はゴジラ好きには卑怯! 博士の名前も。あざといけどコロっとやられます。
満足度:A