オーデュボンの祈り / 伊坂幸太郎

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

シュール、以外に表現のしようがないです。
強盗未遂で捕まった僕は、事故でパトカーから逃れ、目が覚めたらたどり着いていたのが奇妙な島。未来を知るカカシが喋り、鎖国政策がしかれ、反対のことしか言わない画家、足に障害のある男、地面の音を聞く少女に、その場から動けないほど巨体の女、「ルール」で拳銃で人を殺す男、外界と唯一のつながりを持った男。どうしたらいいのかわからないほどリアリティのない舞台設定と登場人物。さらにそこに挿入される島の過去の話、主人公の祖母の話、現在の主人公の元いた土地の話。そして島では未来を知るはずのカカシが殺され…。
浮遊感としかいいようのないとらえどころのなさに、一体自分は何を読んでるのかという眩暈を感じます。非現実的な島に、ちりばめられたパズルの破片。物語にはとらえどころのないまま、読み進めるのだけはとめられないという不思議。会話は洒落ていて軽妙。なんとも奇妙な読感でした。
最終的には全てのピースはあるべき場所へと収束し、一枚の絵として現れるのですが、その全てがはまった爽快感よりも、結局なんだったのだろうという虚脱感が先にたってしまったのがなんとも。それでもつまらなかったわけではなく、それがまたなんとも。
満足度:B