荒野の恋 第二部 / 桜庭一樹

荒野の恋 第二部 bump of love (ファミ通文庫)

荒野の恋 第二部 bump of love (ファミ通文庫)

読み終わって「ほー」っと一つ溜息。この感性は素晴らしいとしか。
山野内荒野という少女の視点から、13歳から14歳のこどもからおとなへと変わっていく微妙な時期を描いているのですが、とにかく感性と文章が抜群です。なんというか、これはもう読んでくださいというしかないのですが。
おとことかおんなとか、移ろいゆく心とか、こどもとかおとなとか、過ぎてゆく時間とか、何かそういうものをものすごく丁寧に切り取って、荒野のただの日常が少しづつ過ぎていくと言うだけの話なのですが、その描写がこんな中学生生活なんて送っちゃいないのに、「あぁ中学生だ、おとなでもこどもでも無い恥ずかしいようないとおしいようなあの時期だ」と思わせてしまう辺りがすごいです。友人に恋人ができたり、告白されたり、えっちなビデオにショックを受けたり、時間の流れを感じたり、そんな中学生の視点を通じながら、妊娠した義母や父親、その愛人などのおとなたちもしっかりと描いてあるのが、こどもとおとなの物語としてしっかりしているなと感じました。
桜庭一樹は少女を描き続けていてこの小説もその一つですが、だんだん描写が上手になっているような印象があります。
淡い水彩調のイラストの良く合っていて素敵。
正直好みのタイプの話では無いのですが、これは素敵な物語でした。第三部にも期待。
満足度:A