マキゾエホリック Case.1:転校生という名の記号 / 東亮太

また、なんともいい難いものが。
記号的なキャラと、よくライトノベルに出てくるようなキャラクターを表現しますが、この作品は作為的に記号的なキャラを一つのクラスに集めてしまって、そこで巻き起こる騒動を描いたもの。そこでおき続ける問題を、すべてを簡潔に記号として処理しようとする灘という少年が解決しようとする様を、ひたすら問題に巻き込まれる主人公の転校生高波藍子の視点から描いています。
メイドだったり幼なじみだったり妹だったりというラブコメキャラから、勇者やサイボーグに超能力者といったファンタジーな人々、殺し屋に刺客に情報通に現代的なものまで、どこかで見たことのあるような記号的なキャラが、やっぱりどこかで見たことがあるようなシチュエーションを背負って、よくわからんものと闘ったりラブコメしたりしています。過剰に記号的ということで、逆説的に記号で人は表せないって話かと思ったらそういうわけでも無いみたいで、記号が大量投入されて滅茶苦茶な事態が発生し続けるクラスの描写が、少しづつ一つの事件へと繋がっていく話でした。
ただ、これだけのキャラを動員して、これだけの事件を起こせる設定がありながら、どこか小さくまとまってるような印象も。綺麗に収束はしたのですが、もう少し巧くキャラを動かせば、もっとすごいものになるのではないかと思いました。これだけの数のキャラを捌くのは大変なのでしょうが。それからキャラがあまりに記号に踊らされすぎていて、キャラ自体に個性が感じられず愛着をもてないのも微妙。
あと、それ以前に事前知識がある程度ないと、このキャラたちの記号性そのものがわからないのではないかということを感じました。この小説自体がラノベやマンガ、アニメのセルフパロディみたいなものですから。
この巻自体はそこまで面白くはありませんでしたが、可能性は感じるので続刊が出たら読んでみるような感じです。
満足度:B-