トリックスターズD / 久住四季

トリックスターズD (電撃文庫)

トリックスターズD (電撃文庫)

だ、だまされた!! 良作!
正直そんな気はしていたんですが、半分くらいのところまでしか想定できなかったです。ちょっとばかり目先のことに気をとられすぎたか。
城翠大学学園祭で魔術によると思われる密室状態におかれたぼくと凛々子ちゃんとミス研メンバー。消えていくメンバー達と、密室が引き起こすパニック。そして作中作『トリックスターズ』『トリックスターズL』の存在と『召還』という魔術によって、現実と虚構の線引きを失っていくぼく。メタな構造の物語が、全ての状態を不安定にして、フワフワした感覚と不安感を残しつつ進んでいきます。そしてこのまま一体どうなってしまうんだろうと思ったところで明らかになる真相が鮮やか。非常にシンプルかつ納得いく所に落ちました。
前書きで前作までを読まずにいても大丈夫と書いてありますが、読むほうが断然オススメ。絶対この先困ると思ったあんなことや、どうしてこうするんだろうと思ってたこんなことも、しっかりこの話に活きてくるのが素晴らしいです。そしてあの人の存在をちらつかせつつ学園祭はまだ続く模様。俄然次が楽しみです。
しかしいみなちゃんの書いた作中作『トリスタ』と『トリL』についてはどう解釈するべきか。いみなちゃんがあれを知ってる訳ないので、読者の読んできたものとは別物だと考えるのが正しいんでしょうけど。しかしこの二作についてのミス研メンバーの講評が、作者自ら過去作品を自己評価してるように見えるのが面白かったです。
満足度:A