ロリヰタ / 嶽本野ばら

ロリヰタ。 (新潮文庫)

ロリヰタ。 (新潮文庫)

表題作ロリヰタと短編ハネを収録。
それほどこの人の小説を読んだ訳では無いのですが、嶽本野ばらの描く主人公はいつも、異端で孤高でそして強い人だと思います。一般からは外れた自分の信念と美学を貫き、そのことによって周りが持ち上げようと攻撃しようとも、変わるのは周りばかりで本人は不変。この強さというものはちょっと凄いものがあります。たぶん、そのスタイルによって死地に追いやられることがあっても、きっとこの人々は社会へ適応することよりも、死を選ぶだろうという。社会不適合者などと呼んではいけないと思うくらいに格好良いですが、正直真似できないよなと思います。そして、この人の描く異端の象徴的に扱われるのがロリータ・ファッションなのでしょう。
短編のハネはストレートにそんな異端の少女の物語。彼と約束した表参道の露店で羽を売るということを、彼がいなくなった後もひたすらに貫き続けるロリータに身を包み、彼からもらった羽をつけた少女。周りがどんなに変化しても、本人ですらたとえ変化するのが「当たり前」な状況でも、貫き続ける想いの強さが素敵です。
そして表題作のロリヰタ。ロリータ・ファッションに身を包み「乙女のカリスマ」として君臨する作家の「僕」と少女モデルの純愛の話。異端の話ではあるのですが、嶽本野ばらという作家が主人公のように見えるという部分を含めて捻った形が色々複雑で、ちょっと難しい。ロリータとロリコンとは違うものだという「僕」の語り始まってのこの結末、「僕」という存在を理解できるのかという挑戦を受けているみたいな気分です。分からなくもなくても、正しくないと頭の中で警鐘がなるような、そんな感覚。ロリータ・ファッションに身を包み、ロリータのなんたるかを語る僕が、結局は男というものからは逃れられないという物語でもあるのかなとも思いました。
満足度:A−