ネクラ少女は黒魔法で恋をする 5 / 熊谷雅人

ネクラ少女は黒魔法で恋をする5(MF文庫J)

ネクラ少女は黒魔法で恋をする5(MF文庫J)

最後までとても好みな物語でした。
言ってしまえば、ちょっと内気でネクラな女の子が勇気を出して一歩踏み出すという、ただそれだけのありふれたストーリーなのですが、そのシンプルな物語をこの柔らかい雰囲気でやられると、ど真ん中直球ストライクなのです。
そんな訳で完結。話を要約すると、真帆が不意に襲ってきた困難にめげそうになりながらも、自分の力と周りの優しさによって乗り越えるというお話。演劇部の面々や妹などの真帆を囲む人々の温かさと優しさ、挫けそうになりながらも踏ん張る真帆の成長した姿になんだか目頭が熱く。
このシリーズに魅力を感じるかは、空口真帆というキャラクターにどれだけシンパシーを感じれるかだと思います。内気で周りすべてを呪って生きているような女の子が、自分を変えて仲間を作って前向きになっていくというその物語に入り込めるかというか。真帆の性格はだんだんと前向きにはなっていくのですが、劇的に変わるわけではなくベースの部分はそのままネクラな思考が残っているのが、ありそうだなと思わせる感じで良かったです。私自身もお世辞にも明るい性格ではないと思われますので、そういう部分が個人的にはツボだったのかもしれません。過去を過去と認めて、今を生きていくというメッセージも、ネガティブさを踏まえた上でのポジティブさという感じで良かったですし。
ただ、魔法や悪魔関係の話はちょっと語りきれていないというか、物語の中で重要な役割は果たしているものの、それ単体で見ると薄くしか描かれてないような気がしたのが残念。真帆の物語である以上突っ込んでも仕方がないとは思いますが、さすがにもう少し描いてくれないと会長やおじ様の気持ちがわかりにくいかなぁと。あと、真帆が不死の魔法に振り回されていく感情の流れも早送りな感じを受けました。
でも、それを差し引いても十分満足。「ネクラな子がちょっとずつ前向きになっていく物語」に私がどうしようもなく弱いということを実感させてくれたシリーズでした。
満足度:A−