さよならピアノソナタ / 杉井光

さよならピアノソナタ (電撃文庫)

さよならピアノソナタ (電撃文庫)

少年と、少女と、音楽の物語。
これはなんて素敵な物語。
高校時代を適当に音楽を聴いて過ごそうとしていた主人公のナオと、その前に現れた音楽界から姿を消した天才ピアニスト真冬。ピアノを弾くことを止め、ナオが目をつけた部屋を乗っ取ってギターの超速早弾きばかりを毎日する真冬に、部屋を取り戻すためかはたまた他の理由からかベースでの対決を挑もうとするナオ。どこか無気力なナオは少しづつ本気になれることを見つけ、周囲を拒絶するような態度をとり続けていた真冬は少しづつナオに心を開く。
束の間の逃避行。掴み取った小さな奇跡。少しだけ、でも確かに通じ合えた時間。
そして、二人の間には常に音楽がある。
なんかもう、これだけで他に何が必要なのかと。特にラストで真冬の送った曲に込められた意味にはグッとくるものがありました。
どこか冷めた印象のある透明感のある文章も良く合っていましたし、神楽坂先輩や哲朗といった脇キャラも良い味を出していますし、満足です。ちょっと幼馴染の千晶が不憫な気はしましたが、それはまぁそれで。惜しむらくは、私はオールドロックは少ししか分からず、クラシックに至ってはさっぱりわからないということ。知らなくても楽しめるのですが、知っていればもっと楽しめたのかなとも思います。
でも総じて、切なさとおかしさとほろ苦さをもった最上の青春小説で、最高のボーイミーツガールでした。大好き。
満足度:A