おおきく振りかぶって 9巻 / ひぐちアサ

おおきく振りかぶって(9) (アフタヌーンKC)

おおきく振りかぶって(9) (アフタヌーンKC)

テンションが落ちないのが凄い。
展開自体がゆっくりなのは相変わらずなのですが、まったくだれる気配はないのでそれはそれでOKな感じ。相手校の選手たちや、応援団に母親軍団のことまで描いていれば当然進行もゆっくりにはなりますが、その分を全然蛇足に感じさせない辺りは凄いと思います。
しかし、高校野球への愛にあふれたマンガです。西浦の野球部を中心に、高校野球というものに関わる人々が真っすぐに高校野球に向き合っているのが印象的。そしてそれぞれにドラマがありそうなことが、試合だけではないこのマンガの魅力となっています。特にこの巻で示唆された、モモカンの過去は興味のあるところ。型破りのどこか超然とした存在として描かれていただけに、どこまで切り込んでいくのか気になります。
あとは、試合の方は楽勝ムードながら、相手もただのやられ役には終わらなそうですし、この先に期待。天賦の才を持つ田島に対してコンプレックスを感じている花井が、4番としてここで何ができるかで、西浦の運命も変わってきそうです。
しかし、阿部と三橋のコミュニケーションは傍から見てると大変面白いです。珍獣をなんとか飼い慣らそうとしている感じ、という表現が一番近いか。分かりあえそうで分かりあえない距離感が絶妙です。