化物語(上) / 西尾維新

化物語(上) (講談社BOX)

化物語(上) (講談社BOX)

言い尽された気もしますが、言わざるを得ない「ひたぎ蕩れ」。
怪異に憑かれた人々をめぐる物語なのですが、戦場ヶ原ひたぎというキャラクターが強烈過ぎて印象的にはそこにすべて持っていかれた感じ。強烈な罵詈雑言と、直球過ぎる愛情表現が、淡々とした口調の中に混在する辺りが新感覚。しかも、その間に中間地点がなく極端に針が振れるものだから、読んでいる方も翻弄されっぱなしです。
なんというか、阿良々木が戦場ヶ原に良いように翻弄される様が描かれるために、読んでいる方も余計に翻弄されて戦場ヶ原の魅力がアップするというサイクルができているような気がします。キツイくらいにシリアスなバックグラウンドもキャラクターの印象を強めていて、一話目の「ひたぎクラブ」が一番のお気に入りでした。
残り2話に関しても西尾維新らしく強烈なキャラクターが出てきてテンポの良い掛け合いが見られるのですが、ひたぎの印象が強すぎたのか、それほどでもなく感じたのは贅沢な不満。
全体的に、とてもよくできているという感じはあるのですが、奇麗にできすぎていて物足りなさを感じる部分も。エキセントリックなキャラクターに、軽妙な掛け合い、怪異を軸としたストーリー運びの巧さに、意表を付いた真相、そして脱力のオチまで、完成されすぎている程の感じで非常に安心して楽しめるのですが、なんというかこう、もっと爆発力みたいなものが欲しいかなと。これも贅沢な不満ではありますが。