AMEBIC / 金原ひとみ

AMEBIC (集英社文庫 か 44-3)

AMEBIC (集英社文庫 か 44-3)

言葉の奔流に押し流されるこの感じ。
摂食障害の女性作家を主人公に、彼女が錯乱時に残す意味不明の文章と彼女の内面に潜っていくような一人称の文章で構成され、残りは少しの対話と小さな行動のみで構成される小説。とにかく内省的に、分裂して境界があいまいとなった自己が描かれていくような感じ。正直意味はよく分からない部分も多いのですが、文章に籠った熱量みたいなものに圧倒されました。錯文の部分など、いったい何がどうしたらこんなのが書けちゃったのでしょうか。
分裂していく感覚にとらわれ、切り離して、切り捨てる、そんな強迫観念に追われているような「私」。食事という行為自体を嫌悪して必要ないと言いながら、それ故に食べ物の話が小説の中に溢れかえっているのは逆説的で面白かったです。食事に対してに限らず社会的通念からどこまでも離れていっているようで、それでもいろいろと求めて焦がれて止まないのも分裂的な感じ。何かを目指して、行き詰って千切れていくような、どうしようもない苦しさを感じました。
あと、ラストでの「私」と「彼女」の対話が印象的。鏡の向こう側にいる自分に喋りかけられているような恐怖感は背筋がゾッとするものがあります。怖かった。