3月のライオン １巻 / 羽海野チカ

3月のライオン (1) (ジェッツコミックス)

「ハチミツとクローバー」の羽海野チカ最新作は、家族を失った17歳の棋士の物語。
主人公の桐山零は事故で家族を失い、一人で暮らしながらプロ棋士をしている青年。その青年が、あかり、ひなた、モモの三姉妹と出会い、何かを取り戻していく物語。ですが、1巻はまだキャラクターや設定の紹介という感じ。
零を中心に多くの人たちが登場するのですが、誰しもが何かしらの傷を抱いているのが特徴的でした。事故で家族を失い、自分の居場所を見つけられないままに将棋に生きる術を求めた零。母親を失いながらも、明るく生きようとする姉妹。零のライバルとなる棋士二海堂は、病を抱えながら将棋を打ち、零が内弟子として引き取られた幸田の家の子供たちは、零に将棋で勝てなかったことで荒れていった。誰しもが影を抱えて生きていて、その中で生まれていくそれぞれの交流が、これから彼ら彼女らに変化をもたらし、どうか救ってほしいと思います。
そんな感じなので、1巻は全体的に暗いトーンが包みます。羽海野チカらしい笑えるコメディ部分や、ホッとするような優しさは確かにあるのですが、読み終わった後はどちらかというと重い気分が強かったです。あと、1巻では紹介に徹している感無機じで、ストーリーの軸となる部分が見えないところがあったのも、ちょっと苦しいかも。ただ、この先が気になる要素はたくさんありますし、きつい境遇の中でも、それに負けない優しく強かなものがあるように感じるので、この先に期待。
他の部分で気になったのはすごく生活感があること。特に三姉妹の家の描写には、人が暮らしているという確かな感覚がありました。私が下町近辺の生まれなこともあるのでしょうが、子供の頃に感じていた空気とか匂いを思い出させられる様な感じ。それだけに、カーテンすらない零の部屋の殺風景さも際立っていると思いました。