黄昏色の詠使いⅥ そしてシャオの福音来たり / 細音啓

この作品にこんな引き出しがあったのかと驚かされました。
今までの私がこの作品に対して抱いてきたイメージを崩しかねない暴走気味のコメディが繰り広げられる短編集。エピソード1と2の間をつなぐ箸休め的な意味もあるみたいですが、それにしてもはっちゃけた感じ。
お約束的な展開できっちりとドタバタコメディをしているのですが、崩れる一歩手前なキャラクターの暴走と滅茶苦茶一歩手前な出来事の数々には驚きました。トレミア・アカデミー楽しそうだなと。透明感のある雰囲気は確かにこの作品らしいのですが、それにしても。
中でも印象的だったのはキリエの活躍。普段そんなんに目立たないキャラクターですが、まさかこんな強烈なポテンシャルを秘めていたとは。とりあえず「料理研究会」が「武闘派」な時点でこの学園は何かを考え直した方がいいと思います。
後はネイトの女装話も、正統派女装話といった感じで良かったです。嫌々やらされて涙目になっている様子がまた可愛かったりするのが女装話の一つの醍醐味だと思うのです。そういえば、ネイトがイブマリーに良く似ているというのは何か理由があるのでしょうか。血の繋がりは無いはずなので、何か別のところでつながりがあるのかなとか。
そんな話もありながら、ネイトとクルーエル、カインツとイブマリーの絆を描いたようなストレートな短編もあったりして、バリエーション豊かな短編集でした。
エピソード2へのプロローグとなる2本の短編は、まだ何とも言えない感じではありながら、今後名詠式そのものの謎に迫っていきそうで期待を持たせてくれます。続刊を楽しみに待っていようと思います。