ラノベ部 / 平坂読

ラノベ部 (MF文庫J)

ラノベ部 (MF文庫J)

けっこう面白かった。
『けっこう』しか面白くなかったとも言える。
けれどその本は、これまで読んできた全ての本の中で一番しっくりきた。

ライトノベルが好きな人とこれからライトノベルを読み始める全ての人に。
高校の軽小説部、通称ラノベ部を舞台にした作品。掌編に近い短い話が中心で、その内容は本当に他愛の無い会話がメイン、そして何人かのキャラクターたちから各話ごとに主人公を中心に数人をピックアップして組み立てられる話は、まさに4コママンガ的な感じ。特に、最近「空気系」と呼ばれている一連の作品に近いものを感じます。じわっと笑えるような感じ。
そしてこの作品の素敵なところはライトノベルに対する愛が伝わってくる感じ。ものすごい勢いで仕込まれたネタは知っている人ならば各所ニヤッとできるものですし、主人公の文香がラノベと出会ってハマる様子を描いたプロローグと、書く方の立場からラノベというものを描いたエピローグが、ラノベが好きな人間の一人としては、とても良いなと思いました。
ラノベってそういうもので、なんだかしっくりきて、そして楽しいものなんだという、この感覚。伝わる人には伝わるはず。普段読まない人や、これから読み始める人にもこういう話を通じて楽しさを知って欲しいな、とも思います。
キャラクターも裏のあるキャラがいなくて身構えずに読めるのも好印象。文香のおっとり天然ちょっとずれてるキャラも良いですが、暦の無口で照れ屋ででも内に秘めたものがあるキャラは非常に可愛かったです。照れているところがこんなに可愛いキャラは久しぶり。そして美咲先輩とは是非文香と暦の百合カップリングについて語り合いたい!
それから何気に展開している恋愛模様もなかなか。竹田と美咲のくっつきそうでくっつかない距離感にニヤニヤ。そこに文香も絡んできて、さぁどうなるのか。こちらの方面も楽しみな感じ。
全体的に、特別に印象に残ったり、盛り上がりがあったり、味わい深かったりという作品ではないのですが、軽く読めてなんだか楽しくなれるという意味で、やっぱり4コマ的な良い作品だと思いました。こういう作品はパターンやキャラが確立してからのほうが面白いと思うので、続きが出ることに期待しています。