生徒会の七光 / 葵せきな

飛鳥と鍵の二人での温泉旅行が描かれるプロローグから何か違うと思わせてくれる第7巻。生徒会の一存シリーズ新展開です。
生徒会メンバーがただひたすらにだらだらぐだぐだとした掛け合い漫才を繰り広げる作品としてのこのシリーズは毎回楽しく読んでいて、それでも1巻の頃からずっと感じていた気持ち悪さみたいなもの。その根源はそもそも大部分が主人公である鍵の性格と立ち位置にあるような気がしていて、だからこそとりあえず漫才が楽しめればこの作品は良いかなと諦めていた部分もあったので、作品自体がここにきてその部分に踏み込んでくるのは予想外でした。
結局鍵の作ろうとしているハーレム空間というのは、みんなを幸せにするために自分だけが犠牲になるというもの。生徒会メンバーの前では道化を演じつつ決してその立場以上には踏み込まず、生徒会の雑用などの面倒な仕事は全部自分が影で全部こなし、その温く幸せな空間を守るためなら自己犠牲は厭わない。そりゃあそんな態度と行動を完璧にこなしていたら生徒会メンバーからは好かれはすれど嫌われはしないだろうけれど、でもそれってちょっと違うんじゃないかという気持ち悪さみたいなもの。
それ自体は前々からもちらついていた話であはありますが、この巻では明確に見えてきた卒業という「終わり」の空気と、それぞれのヒロインと鍵の関係を見直すような会話が増えたことでそれが顕著に。そして、最終話で生徒会空間に鍵の過去の重要人物である義妹の林檎をまさかの投入、合わせてエピローグでのやっぱり過去の重要人物である飛鳥との会話で、生徒会での鍵とヒロインの関係を外側から暴いていくみたいな構造になっていて面白かったです。正確には鍵が問われている部分は少し違うのですが、根っこ自体は同じかなと。
もともと馬鹿で軽いノリの合間にアンバランスなくらい重たいシリアスな話を差し挟んできたシリーズで、そこに凄く座りの悪さを感じていたのですが、この展開でその辺りにしっくりくる何かが見えてくるのかなと期待。
とはいっても、このシリーズの魅力はマンネリながら相変わらず絶好調な掛け合い漫才。この巻では帰ってきたオールナイト全時空の定められた一言ネタが破壊力抜群でした。
そんな訳で、やっぱりシリアスにはなりすぎずいつものノリを維持したまま、でもテーマ的にも何か答えを出してくれることを期待して、続刊を待っていたいと思います。