電波女と青春男 4 / 入間人間

電波女と青春男〈4〉 (電撃文庫)

電波女と青春男〈4〉 (電撃文庫)

メインキャラクターたちの中学時代やそれより昔の出来事を描いた短編集。
特別大きな何かが起こるわけではないけれど、やっぱり当人たちにとっては当たり前でも特別なこと。そんなこんなで、こそばゆい気分になるようなそれぞれの青春が描かれています。このシリーズや「僕の小規模な奇跡」を読んでいると、入間人間という作家は、世界の大勢から見たら何でもないけれどその人にとっては特別な日常と、その中での人々の意識的、あるいは無意識の繋がりを描くことに強いこだわりがあるのかなと。
文章は作者らしく独特の饒舌な口語体一人称で相変わらずながら、一文が短いため回りくどい表現が少ない分そこまで読みづらいわけではない感じ。そしてそんな文章で描かれる物語では、小学生や中学生らしい微妙な関係性とか、もやもやした心境とかが繊細に描かれています。それと、瞬間の手触りというか、記憶の中にある子供のころの風景を一瞬で思い起こさせてくれるような表現があって、キャラクターはかなり強烈なのにとてもリアリティを感じる部分があるのが面白いです。
短編では、女々さん大好きで元気いっぱいだったころの小学生エリオの話な『空への明日』で、終わってしまったおっさんにエリオが見せようとしたものにこの二人は母娘なんだなと感じたり、ウチュージン扱いされることを嫌っていたエリオを簀巻き宇宙人に変えて、この母娘関係を冷え切らせてしまった出来事はいったいなんだったのだろうと想いを馳せたり。
それから、『ぼくと彼女の月の距離』でにわちと星中さんの居心地が良い友達+αを続けるうちにタイミングを逃してしまった関係性に、共感を覚えたり切なくなったり青春だなーという感じだったり。
そんな中でも一番好みだったのは前川さんの話である『初恋を見下ろして』。身長へのコンプレックスがあったりとか、幼馴染の男の子との関係とか、そんなこんなでもやもやして金髪にしてみちゃったりした前川さん。そんな彼女にとって区切りをつけるための特別な行動。それは人から見たらどうでもいいことかもしれなくて、でも彼女には絶対に意味があることで、そしてそうやって生きていく彼女が、また別の人の物語に意味を与えていく。そういうところが、読んでいてすごく良いなと思いました。
それから、適当で子供っぽくてニートで和服で自称宇宙人なかぐや姫のお姉さんが迷える前川さんに見せた、できすぎなくらいの大人のカッコ良さに惚れました。こういう大人になりたいなぁとか迂闊にも思っちゃうくらいに好き。P124のイラストも大変素敵だと思います!
そんな感じの物語が続いた最後にくるのが丹羽くんのエロ本購入大作戦な『E.R.O』で脱力なのですが、これが本人は大マジなのに傍から見るとアホ過ぎてとても面白かったです。なんかもう、色々頑張れ青少年!