氷結鏡界のエデン 3 黄金境界 / 細音啓 

物語の大枠が見えてきて、いよいよ面白くなってきました。
天結宮に対して敵対するような素振りを見せる統制局。浮遊島に続いて再び水槽での幽幻種の実験を行ない、この世界の秘密についても何か別のアプローチを取っているように見えます。そして世界の謎に直結する幽幻種や魔笛といった力が、シェルティス自身の問題、そしてユミィとの関係にも大きく関わってきそう。敵側の人間として出てきてシェルティスとも浅からぬ因縁を感じさせるイグニドや、今回の直接の敵となったマハといったキャラクターも登場して、物語の方向性が見えて面白くなってきたという感じです。「アマリリス」のフレーズが前作との関連を示唆している辺りも、惹きつけ方が上手いなという感じ。
そんな大きな物語と共に語られるのが、シェルティスや周りの人々の個人的な物語。ユミィが演説で語った助け合える関係というのが、大きな力と特異な背景を持つがゆえに孤立しがちなシェルティスにとっても大きな課題になってくるようで、だからこそ今回登場した華宮と信頼関係を築いていくところは面白かったです。他人に対して警戒心が強く、その反面一度心を開けば絶対の信頼を寄せるというネルの民の少女。その華宮に対して、過去を伏せていることで警戒心を抱かれながら、自らの行動で信頼を掴む。そういうことが、シェルティスにとっては大切なことになってくるのかなと思います。
そしてその華宮が個人的にはとても好きな感じでした。データ分析に長けた研究者タイプで警戒心が強いとなると人間不信だったりするものですが、一度信じた相手、モニカに対して見せる絶対の信頼のギャップが面白いキャラクターだと思います。そしてそんな華宮が、迷いながらもマハとのバトルの中で、一歩を踏み出し、シェルティスとの間に信頼関係を築いていくというのもまた良い感じでした。ラストバトルのシェルティスはカッコ良すぎて、これはもう華宮も心を開くよなーとか思ったり。
それにしても、シェルティスはものすごい勢いで女性キャラクターとの間にフラグを立てていきます。ユミィという絶対の本命はいるわけですが、エリエやモニカや華宮、相手はいるとはいえ春蕾、爛、イーシャからも高い好感度を得ていたりして、なんというかさすが主人公と思ったのでした。