Fate/Zero 3 王たちの狂宴 / 虚淵玄

Fate/Zero(3) 王たちの狂宴 (星海社文庫)

Fate/Zero(3) 王たちの狂宴 (星海社文庫)

ここにきてだんだん盛り上がってきた感のあるFate/Zero3巻。
一時休戦でキャスター狩りかと思わせて、展開はそう簡単なものではなく。ジャンヌだという思い込みでセイバーを追いかけ、アインツベルンの城に現れたキャスター。そのキャスターを迎え撃つ局面で暗躍する衛宮切嗣と、そこに現れるケイネス。マスターとサーヴァントそれぞれの出自、抱いた信念、聖杯に賭ける願い、それらが闘い方の違いにも現れていて、ストレートな展開にはならないところが面白いです。
特に”魔術師殺し”衛宮切嗣の闘い方と、それがサーヴァントであるセイバーの信念と全く相容れないこと、そして彼自身妻と子供を持って揺らいでいることを考えるに、今後一波乱も二波乱も起きる余地はありそう。切嗣を追う言峰綺礼が全くブレないだけに、このあたりの闘いがどうなっていくのか楽しみです。
そして意外な展開といえば後半の聖杯問答。ライダーの設けたまさかの宴席にセイバーとアーチャーが揃い、王道とはなにかの問答をするという話なのですが、セイバーとライダーの掲げる王の在り方がまた全然違うのが面白いです。誰よりも人らしく我欲を掲げ民を惹きつけ全てを征服するイスカンダルと、人であることを捨て国のため民のために清く尊い理想に殉じるアルトリア。二人の問答は、二人の英雄が迎えた最後の差が、迷いの有無となったような印象。ある意味完成形であるイスカンダルに比べると、セイバーはまだ悩み迷える存在なんだなと感じます。
そんな宴席は襲撃者によってお開きとなるのですが、この襲撃者に対峙したライダーの圧倒的な力がこの巻のクライマックス。イスカンダルの掲げる王道、その証明にしてあまりにも圧倒的な力を誇る宝具。普段はどこかとぼけた印象すらある彼が、驚異的なカリスマと信頼を持って覇道を突き進んだことを否が応にも理解させるその力は凄まじい物がありました。
メインのキャラクターに奥行きが出てきて、相変わらず一歩先すら読めない展開に熱いバトルとどんどん面白くなっている印象のシリーズ。今後の展開がますます楽しみです。