はたらく魔王さま! 2 / 和ケ原聡司
- 作者: 和ヶ原聡司,029
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2011/06/10
- メディア: 文庫
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そしてそんな真奥たちの隣室に、謎の和服美少女鈴乃が現れ、しかも真奥たちに食料を差し入れたり世話をしたりし始めるところから物語は展開、と思いきやそこで繰り広げられるのはライバル店センタッキーに苦戦する店長代理の真奥だったり、恵美がお節介と勘違いの連鎖の果てにめんどくさい立場に置かれていたりという、等身大過ぎていっそ緊張感の無いような話。
この作品の面白さの一端は、異世界で闘った魔王と勇者が現代日本でせせこましい暮らしをしているというギャップにあって、その意味では2巻では新鮮味がなくなった分少しパワーダウンかなという気もします。ただ、新キャラクターを交えて描かれるドタバタ劇に異世界でのそれぞれの事情と、こちらに来てからの人間関係がリンクしてくる辺りはやっぱり面白いなと感じました。その中でも今回のMVPだったのは芦屋のスラスラと出てくる口から出まかせ。魔王を青年実業家に例えるというのは、また随分と上手いこと言ったものだと思います。
そしてこの物語全体を包む、どこか生真面目で落ち着いた感じの雰囲気も良いです。ドタバタやラブコメ的展開もすごく丁寧に描かれている感じがして、悪役まで含めてキャラクターたちに嫌味がないのもそういう雰囲気によるものなのかなと思いました。その分、飛び抜けた刺激があるわけではないのですが、安心して読めるような作品になっていると感じます。
物語は後半にかけて、エンテ・イスラからの刺客の正体が明らかになり、彼らのかざす正義と、真奥のこの世界での振る舞いと、勇者が何を守ろうとするかと言ったところが描かれていきます。このあたりのちょっとシリアスめな展開は面白いことは面白いのですが、それぞれの立ち位置が複雑な分ちょっとごちゃごちゃした印象も。今回の恵美や鈴乃の考えや決断は、それはそれで真奥の姿を見てきた読者としてはぐっとくるものがあるのですが、魔王としてのエンテ・イスラでの振る舞いがその辺りを単純にさせていない感じ。そこを勢いで吹っ切るような作風ではないだけに、余計にそう感じるのかもしれません。
ただ、この部分についてはこの作品の1つ大きなテーマになるのかなというのが、魔王や勇者の生い立ちがほのめかされる辺りからも感じられるので、そこは今後の展開に期待。そしてそんなことも感じつつも、相変わらず小市民な彼らの内輪的な仲良し加減や、素直な子と素直じゃない子が入り乱れて意外と錯綜しているように見える真奥周辺のラブ方面も、十分楽しめた一冊でした。個人的には恵美が好きなので、彼女がこれから腐れ縁関係になりつつある真奥とどう向き合うのかを楽しみに、次の巻を待っていたいと思います。