- 作者: 和ヶ原聡司,029
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2012/10/10
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 4回
- この商品を含むブログ (12件) を見る
相変わらず、エンテ・イスラそして天界、魔界、セフィロトといったこの世界の重要そうなキーワードは散らされはすれども、小出しに小出しにという感じで全容は掴めず。今回も重大なことが明らかになりつつ、はっきりとしたところは分からないもどかしさも感じますが、その情報開示のペースに合わせて、真奥たちが変わっていっているので丁度良いのかも。
そんな真奥たちはそれぞれに思う所があって変化が。中でも前巻での出来事を受けての千穂の積極性が凄かったです。概念送受を学びたいというところから始まって、後半で悪魔に対して切った啖呵のかっこ良さ。それがたとえ甘い理想であっても、皆でこの世界で暮らしてきたこれまでがあってエンテ・イスラの人間ではない女子高生の千穂だから言える言葉には、何かを変えられるんじゃないかという力を感じました。真奥の指針となっている木崎といい、この世界の普通の人々が異世界の存在である真王や勇者を変えていくのは面白いと思います。そしてそんな自立していく千穂の立ち位置があまりに主人公過ぎて、この物語の主役は誰だっけと一瞬思ったり。
そんなこともありつつ、表面上では強烈なマッグカフェ推しがあったり、温泉イベントだったり、皆で体育館で特訓だったりと、スケールの小さな日常が描かれています。これはこれでやっぱり仲良さそうな柔らかい空気があって、このシリーズの魅力だなと思います。あとラブコメ方面では最後に真奥が白っと放った一言の破壊力が。本人に全くそういうつもりがないとわかっていても、言われた方はそれは怒るよなあと思いつつ、そういう未来もありなんじゃないかと思えてしまうのがこの作品なんだろうなと。
目指す道を定めた真奥、夢を描く千穂、自らの信じるものを考え始める鈴乃、そしてまだ迷いの中にいる恵美。彼ら彼女らが自分の目指すところを決めた時に、一体この物語はどこに向かっていくのかと楽しみにも不安にもなる一冊でした。ここまで読んできた身としては、やっぱりみんな一緒にいて欲しいなと思わされてしまうのですが。