2023年の振り返り(本・マンガ)

今年読んで良かった小説10冊を。

 

マンガを5作品。

2023年の振り返り(音楽・ライブ)

Spotifyを使ってるのでプレイリスト機能で。

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アルバムだとRAISE A SUILENの「REVELATION」がキャラクターをイメージしたミニアルバムですが、楽曲的にはキャラソンっぽいところからは更に遠ざかって色々なチャレンジがあって面白かったです。そしてこれを引っ提げての11月のライブが素晴らしかった。爆上げ楽しいなRASのライブに、この時は3階席最前でおとなしく見ざるを得なかったのですが、いやなんというかカッコいいバンドだなと改めて感じました。

 

そしてFictionJunctionの「Parade」が良かったです。表題曲の「Parade」、ここまで歩んできた道があるからこその味があって素晴らしい曲だなと。そして武道館のKajiFes、本当に梶浦由記の音楽が好きでずっと追いかけてきて良かったと思えるライブでした。万感の思いというのはこういうことをいうのかと。

 

緑黄色社会の「pink blue」が変化球ながらリョクシャカらしい王道のポップさも感じられて良かったです。横アリのライブで初めて生で見たのですが、本当に滅茶苦茶良かったし、もっと広い会場が映えるアーティストだと思いました。スタジアムとか絶対似合う。メロディの美しい王道のポップミュージックを真正面から勝負できる、稀有なバンドです。

 

ライブだとワルキューレのファイナルライブも凄かった。ここまでキャラクターとしてこの難しい曲を歌ってハモって踊れるユニットは出てこないんじゃないかと思います。

2023年の振り返り

ブログを書くこともほとんどなくなったここ一年でしたが、一年の締めくくりくらいは少し振り返りをしようかなと。

 

今年はライブの声出しがOKになったことが一番大きな出来事だったと思います。ここ数年声出しNGのライブが当たり前になっていて、それはそれで楽しいと思ってはいたものの、やはり歓声があるって全然違うなと感じた一年でした。

私が最初に参加した声出しOKは2/4のバンドリRAISE A SUILEN×Poppin’Partyだったのですが、会場の雰囲気に最初は呆気にとられ、数曲目の「Moonlight Walk」のシンガロングでじわじわと感慨がわいてきたのをよく覚えています。ああ、帰ってきたんだなという気がした瞬間でした。

それからアイマスの合同ライブMOIW2023の一夜の夢のような盛り上がりがあり、歓声の戻ったアニサマANIMAX MUSIXがあり、中でも一番歓声のパワーを感じたのはアイマス×ラブライブの異次元フェス。私は2日目を見に行ったのですでに会場出来上がっていたこともあり、時に曲が聞こえなくなるほどの地鳴りのような大歓声とあの特別な祝祭の空気感はちょっと得も言われぬものがありました。

流石にコロナ前のように年に60も70も行く生活には戻らないと思いますが、やっぱりライブの空間は私の趣味の中心にあるものだと思う一年でした。

 

あと、今年と言えばやはりクソデカ絵馬こと、Sound Horizonのの「絵馬に願ひを! Full Edition」は外せないところ。

ルート選択に攻略要素がある音楽作品という類を見ない形態で、現代日本っぽい世界を舞台に怒涛のような情報量を何度も何度もたどることで少しずつ全体像が浮かび上がり、かつ正解の提示はなくローランの解釈に委ねられる(解釈すること自体が選択肢として作品に取り込まれている)。そう言ってみれば今までのサンホラの延長線上にあるものですが、よく思い切ったなというくらい間口は狭く、噛めば噛むほど味がする過去一の怪作だったと思います。本当に何度見ても新発見がある。媒体は違いますが、十三機兵防衛圏に触れた時と近い印象のある作品でした。

惜しむらくは発売延期によりコンサートが完全初見でのルート選択となったこと。それはそれの驚きや楽しさもありましたが、分かっている今だからこそ細部をガン見したいという気持ちはあり、当然この作り方では映像化が難しかったというのも分かるのですが、もう一回見せてくれという気持ちは今でもあります。というか「秋季例大祭」が生で聞きたいんだ……来年こそ領拡みたいなライブやりませんかね……?

 

それから今年の私の中心にあったのはアイドルマスターシンデレラガールズU149のアニメ化。原案マンガにハマって幾年月、結城晴の声が聞こえるようになり。的場梨沙声の声が聞こえるようになり、ついにここまで来たという感動がありました。

アニメとしては、原案マンガのエッセンスを抽出しながら、キャラクターの掘り下げに特化した構成で大変出来が良く満足。いや本当は廾之先生の描くU149こそ至高と思っていて、テイストの差異がある(もう少しデレのパブリックイメージやデレアニによってる感じがある)ことを消化するのに時間がかかったりもしたのですが、でも桃華回~梨沙回~晴回の辺りは制作陣のこだわりが見える神ががかったものがあって、これを認めないわけにはいかないだろうと。子供アイドルが主役ということでハナから広く受け入れられることはないのを前提に、キャラクターの魅力を深く掘り下げることに注力する選択が感じられて、サイゲの覚悟と執念の一作という印象もあります。マイナーが故に熱量が上がったケースというか。あと子供たちへの目線というか、扱い方がU149なら絶対にそういうことはしないというラインをきっちり守ってくれたので良かったです。

なかなかこのテーマで2期というのは(デレであれば他にやることがあるだろうという意味で)難しいのかと思いますが、それでも第3芸能課は13人であるので、13人であるので……! ずっと待っています。キャストがどの場にU149として出る時も、ずっとフルメンバーは「13人」と言い続けている言霊を信じたい。

 

そして年末にかけてアニメと共に想定外のところから刺さったのがティアムーン帝国物語。ギロチンにかけられた皇女様のタイムリープやり直しものなのですが。やることなすこと周りがうまい具合に解釈してくれることと、ポンコツでちょっとゲスなミーア姫の内心のギャップにナレーション(小説は地の分)で突っ込みが入るところが面白く、コミカライズ発のミーアの変顔百面相と併せて楽しい作品です。基本コメディなのですが、一匙のシリアスの塩梅が非常に上手く、いい作品だと思います。

色々好きなところはあるのですが、やっぱりこの作品はミーア姫の魅力に尽きるのだと思います。無知と貴族としての常識=傲慢がギロチンに繋がった前の時間軸から何が変わったと言えば、何が民衆の怒りを招くのか、飢饉の恐ろしさを知ったことや、帝国再建に駆け回り最後は地下牢に送られた経験なのですが、基本的に地の部分は変わっていないのですよ。確かにポンコツで下衆なんですが、善性が如何に貴ばれるべきであるものかを体現しているところがあり、小心者ながら図太さ強かさもあり、前向きに学び考え行動することができる。傲慢さゆえに人を遠ざけた前の時間軸から、ボタンの掛け違えが正されるように人と結んだ縁が己のもとに帰ってくる因果応報は、もちろん周りの眼鏡が曇っているところもあるのですが、本人の人徳だと思うところも多く。

アニメで気になり、コミカライズにハマり、今ついに原作を8巻まで読み進めているのですが、内心を知っていてもこれはもう帝国の叡智なのでは……? ミーア様に全力をもってお仕えし、ミーア様に恥じないように勤めなければいけないのでは? くらいの気持ちまで来ており、この読者の眼鏡を曇らせるパワーが、そのままこの作品の魅力なのだと思います。いや、生誕祭での立ち振る舞いから月光会~パン・ケーキ宣言のところの流れ見ました? あれこそわれらが女帝であり叡智でしょう??

 

そんなところの2023年。私生活的には家を買ったり、仕事がヤバすぎたりと色々あってブログの更新はまだしばらく遠ざかりそうですが、来年も素晴らしきコンテンツとの出会いがあれば良いと願って。

【ゲーム感想】ゼノブレイド3 新たなる未来

思ったより早く来てびっくりしたゼノブレイド3の追加ストーリー。舞台は本編より前の時代、シティの6氏族の始祖たちの物語。

追加コンテンツとしては単体として見ても、シリーズをやってきて良かったと思える要素満載で、システム的にも総決算と言える完成度で大変に素晴らしかったです。ただ、このストーリーを受けてあの本編のエンディングなのはやっぱり納得が……。

 

以下ネタバレありの感想。

 

 

 

 

 

 

という訳でシリーズオールキャストでお送りするこれまでゼノブレイドをやってきた人へのご褒美のような作品。1と2の世界が衝突してアイオニオンが生まれたところから3の時代にどう繋がっていったのかのミッシングリンクを描く物語で、単体でも遊べるようにできていた3では描かれなかった、シリーズの中での3の位置づけを明確にする作品でもあります。

キャラクターも土地もあの時のあれ! というものがこれでもかと登場してずっとシリーズをやってきた人はニヤニヤしてしまうのですが、何はともあれ成長したシュルクとレックスですよ。シュルクはダンバンさんの影響が、レックスにはヴァンダムさんの影響が見えるところでグッときますし、レックスがムキムキのイケおじになってるのズルくないですかね。そりゃあ嫁も三人いるわ。そして彼らの子供がオリジンから再生されアイオニオンで生きる姿と思われる、ニコルとカギロイとの関係も、あの物語の続きを見せてくれるようなファンサ―ビスという感じで良かったです。

それからいったい何してるんだと言われていたアルヴィース(ウーシア)も物語の鍵として登場。オリジンのベースとして活用されていて、シティの人々だけを未来へ運ぼうとするアルファと、これまでの世界の人々を切り捨てられないと考えたエイに別れているのですが、ロゴスは男性、プネウマは女性で、ウーシアはどっちでもないからと美少女形態で出てくるのなんなんですかねあいつ。

そして主人公である、ヴァンダム家の祖にして、ノア(N)の子供を祖父に持つマシュー。彼の真っすぐな熱さはいかにも主人公という感じで良いものでした。世界を留めおこうとするメビウスと進ませようとするノアという2軸から、シティの人々だけを未来に連れて行こうとするアルファという第3軸があることで、Nとマシューの間にもまた別の関係性が生まれているのも面白いところ。

ただ、ここでアルファのやり方を否定して置いていかれる命があっていいわけがないと言うなら、本編のエンディングでまたいつかの未来に生まれてくるからというエクスキューズをゴンドウに喋らせてシティの人々を切り捨てたのマジでおかしいと思うんですよね。アイオニオンの兵士たちはオリジナルと同一に見なされるという価値観は、この追加ストーリーでも通底していた(ニコルとカギロイの扱いから)のでまあ納得はできるのですが、シティの人たちは駄目では?? 結局最後にそうなるの、ナエルはキレて良いでしょと思うのですが。第3の価値観を過去編で提示してくるのなら、その辺りは分かった上でやっていたということだと思うので、なんだかなあと感じるところでした。

ゼノブレイドのシリーズはこれで一区切りということだと思うのですが、3の後日譚で何かこう、納得いくような未来が描かれて欲しいなという気持ちもあります。3のEDは二つの世界に別れた時もきっと出会えると言っているので、その先に何が起きるかは遊ぶ方に委ねられてるとも思うのですが、2のエンディングみたいな何が何でもハッピーにするパワーを見せてくれてもいいのよ?? という気持ち。

 

システム面はマップに新要素が加えられていて、アンテナを立てれば「?」マークが表示されるので取り漏れなく探索できるのが良い感じ。普通にやっていたら取れずに最終的に残ったコンテナや遺物の回収が、上のエリアからどうやって落ちてくるかのバリエーションになってしまうのはどうかなと思うところもありつつ、マップの上下を使った仕掛けは含めゼノブレイドの伝統ではあるかなと。

あと、相変わらず音楽が素晴らしかったです。サントラのトリロジーボックス、買わせていただきます。

 

そんな感じで色々と言いたいことが残ったところはあれど、RPGはもう面倒くさいかなと思ってた私が気付けば100時間以上遊んでしまうような滅茶苦茶楽しいゲームだったことは間違いなく、去年から一気にDE→2→3とやってきて良かったなと思います。これだけのゲームを作れるのだから、モノリスソフトの次回作にも期待大です。

ところでゼノギアス、リメイクしませんか……?

【小説感想】化石少女と七つの冒険 / 麻耶雄嵩

読み終えた瞬間にやりやがったな!! と叫びたくなるところが麻耶作品の醍醐味ですよね。

正直「化石少女」が何とも言えない感じだったのであまり期待をしていなかった続編だったのですが、あれを下敷きにしてこれを構築されたらもう脱帽です。常識と倫理観は遥か彼方に置き去りに、悪意と死体をエンジンに突き進む学園三角関係ラブストーリー(大嘘)。最低に最高にぶっ壊れた読み心地とトリッキーだけどしっかりしたミステリの組み合わせがまさしくな一冊でした。好き。

名門学園を舞台に、古生物部の暴走気味の部長まりあとそれをたしなめる彰を主人公にした連作ミステリで、学園で毎度のように巻き起こる殺人事件に廃部阻止の実績作りのため首をつっこんで探偵をしたがるまりあに振り回されながら止める彰という構図。ただ、実はまりあの推理は……ということで彰は消火作業に気苦労が絶えないという、まあ要するにキャラ配置的にはハルヒなのですが、前巻のラストであんなことがあったからいったいどうするのかと思えば、普通に続いてる時点でまずびっくりだよという。

そして今作の見どころはその構図そのもの。新しい事件、新しい部員、そしてまりあに起きる変化。外的要因の積み重ねがいったい何を引き起こすのか、美しく組みあがる最悪に喜べるかどうかが、いつものことながら麻耶作品を楽しめるかどうかのラインだと思います。はい、私は大好きです。

それから、前作はまりあのキャラクターに割とこうラノベ外の人がラノベっぽいキャラを書いた時にありがちな違和感があったのですが、そこが大分こなれていて読みやすかった感じもありました。何しろまりあが一番まともなキャラだから、彼女が魅力的に読めるのはせめてもの救いではあるので……。

 

 

 

以下ネタバレあり。

 

 

 

 

まりあの暴走を止めるお付きの人ポジションだった、そしてそれに内心満足していた彰の歯車が狂っていきぶっ壊れるまでの過程を描いた連作ミステリ。彰は前作で罪までを犯したが故に、彼女に探偵の才能があることを自覚させない(=彰の罪に気付かせない)ため、真実に近づく彼女の推理を否定するという特殊なミステリをやっているのですが、スタートからしてひどいその状況がものの見事に破綻していくのが最低のドライブ感がありました。

「彰と同じ、自らが犯した殺人をまりあに明かされる訳にいかない境遇の新入部員」「まりあが彰と関係なく自分自身で勝ち取った大きな成功」「それ故に古生物部の外に求めた関係の殺人事件による破綻」「その間に生まれたまりあと新入部員の親密な関係性」と一つずつピースを集めるかのように、「彰の心地よいポジション」を崩す条件がそろっての最終章。誰が主体かの叙述のトリックが、彼のいたポジションが完全に乗っ取られたことをこれ以上なく鮮やかに示した次の瞬間、提示されるのは最悪の構図が生まれたという事実。全てはこの絵を描くために逆算で構築されていたのかと思うと、悪趣味というかなんというかやりやがったな!! という気持ちにしかならない結末でした。

ここから更に話を続けるのは難しそうな気もしますが、拗れに拗れたこの関係がさらに最悪なツイストを見せるような続編に期待してしまう気持ち、正直あります。

【小説感想】走馬灯のセトリは考えておいて / 柴田勝家

突飛なアイデア文化人類学的なアプローチで迫るSF短編集。

表題作の「走馬灯のセトリは考えておいて」が凄かったです。人々がライフログを残し、それを基に受け答えまで可能な故人のライフキャストが作られるようになった時代。ライフキャスト作成の仕事をしている主人公は、かつてバーチャルアイドルの中の人だった老人から、バーチャルアイドル黄昏キエラのライフキャスト作成、そして彼女が死んだ後のラストライブの依頼を受けて、という話。

「バーチャル」で「アイドル」で「死人」であるという虚飾に虚飾を重ねた存在に、魂の形を見出す祈りのようなセンチメンタリズムが鮮烈でした。バーチャルアイドルの中の人だった彼女がその姿に何を託していたのか、ライフキャスターである主人公の父親にまつわる秘密、全てに虚実が入り混じり、精神性の神秘は剝がされて、生死の境界さえ曖昧になりつつある世界の中で、それでもそこに祈りはあるんだなというか。故人のライフキャストが故人のライフキャストのアイドルとなる空間は、薄皮一枚で虚無の広がる恐らくは正しくないものであって、けれど私たちはそこに祈ってしまう。それは論理的には間違っていると分かっていても、信じることで見えてくる光がある。まさしく、信仰の形をした物語だったと思います。推しという信仰を持つ人に読んでもらいたい短編でした。

他の短編では「クランツマンの秘仏」が最高でした。信仰が対象に質量を生むという、はじめはある種の冗談だった説に取りつかれた東洋美術学者をめぐる異常論文。私が狂った話を大真面目に語るのが好きなのもありますが、第3者の視点である程度の客観性を持って語られるが故の迫力があったと思います。そしてこれも「信仰」が何かを生み出すというアイデアなので、表題作とテーマを同じくしているんだなと。

2022年の振り返り その2(映画・アニメ・ドラマ・小説・マンガ・音楽)

今年の映画・アニメ・ドラマで良かったのは何だろうなと思うと、やっぱり「すずめの戸締り」なんじゃないかと思います。新海誠の集大成にして最高傑作の看板に偽りなしの作品で完成度が高く間口も広く、そして何より失われていく世界に生きる物語なこと、そしてその中ですずめを何が救うのかがとても良かったなと。

あと、あまりに秘密主義過ぎて様子見していたものの評判の良さに映画館に足を運んだ「スラムダンク」が最高のスポーツエンターテイメントというものを見せてくれて凄かった。原作者の頭の中にだけあったものが、原作者が陣頭指揮を執ることで映画として顕現したという趣の作品でした。

他に映画ではうたプリの映画が映画=ライブ作品の最高峰のクオリティだったのと、滅茶苦茶分かりやすくなったが故に宗興みの増したピングドラムが印象に残った感じ。「シン・ウルトラマン」はメフィラスが最高だった。

 

そしてそのメフィラスこと平六の出る「鎌倉殿の13人」が滅茶苦茶に面白かったです。大河ドラマを見るのなんて何十年ぶりとかで、これも大変に素晴らしい出来だったアニメ「平家物語」と併せて見ると平家と源氏の両面から見られて良いと聞いて見始めたものでしたが、三谷幸喜は本当に凄かった。

粛清粛清&粛清の地獄のような鎌倉とちょっととぼけたギャグの塩梅の良い大河ドラマなのですが、史実を下敷きにしているのに、その隙間を膨らませながらそれぞれの登場人物がそれしか取り得ない行動を選択する結果として関係性と事件が編まれていくのが、どうやったらこんなものが組みあがるのかと。冒頭から通底する北条家のファミリー・サーガとしての一面が、紆余曲折を経て最終盤の政子と義時の選択と行動に繋がってくるのが凄みを通り越して怖ささえありました。登場人物の存在がブレてないというか、こういう人たちがこういうふうに生きた結果としての納得性と史実であることの担保をしながら、その上でこれ以上ないシーンがバチバチに決まって来るの、大河の尺があるからできる、もの凄いドラマだったと思います。毎週地獄が過ぎてみるのが辛いんですが、それを超える面白さがあって、本当に最後まで見続けて良かったです。

それとNHKは、70年代に存在しなかったはずの特撮番組を生み出して現実を侵犯する「タローマン」も狂った企画で面白かった。「タローマン ヒストリア」に至ってはこうやって人を洗脳していくというカルトの手口みすら感じて怖かったです。なんにしても今年は放送料のもとは十分にとったと思います。

 

アニメだと、あの地獄のようなイルぶる編を見事にアニメにした「メイドインアビス」も凄かった(久野美咲のファプタがやばかった)ですし、人気の出た作品はやっぱり面白いんだよなと「SPY×FAMILY」「水星の魔女」「リコリス・リコイル」「異世界おじさん」などを見ていると思うのですが、鮮烈なインパクトという意味では今年は「アキバ冥途戦争」しかないでしょう。

アキバのメイドに極道を重ねて、メイド喫茶間での抗争とそこで生きるメイドたちの生き様を描く作品という時点で既に狂っているのですが、1話からぶっ飛んだギャグと血と暴力とメイドが混然一体となって、最初はいったい何を見せられているんだと。ただ、何話か見ているうちに引き込まれて、任侠ものとしての側面がフルスロットルになる6話辺りから加速して、最後までノンストップで駆け抜けた感じでした。

特に11話に暴力の行き着く先、因果が巡る任侠ものとしての最終回を持ってきて、その暴力を萌えという非暴力で塗り替えるための12話最終回の二段構成になっているのが凄まじい構成。最終話なんて、普通に見たら気が狂ったような絵面が延々と続くのですが、それは作品のテーマもキャラクターの生き様も完璧に描き切った結果として出力されたものだと理解させられるので、頭がおかしくないと出来ないわこのアニメと圧倒されました。任侠の生き様とメイドの生き様を描くのは、アイドルの生き様を描いたゾンビランド・サガのサイゲの企画だなあという感じで、万人に刺さるか分からないですが、気になる人は最終話まで見て欲しいなと思います。1話だけ見てもなんだこれだと思うので……。

 

あとは、今年の小説だと「プロトコル・オブ・ヒューマニティ」が身体性を突き詰めて人間性というものを削り出すような執念を感じる一冊で凄かったのと、「ゴジラ S,P」がアニメとは別視点の断片を集めたような変な小説だけど読んでいると滅茶苦茶面白いという不思議な読書体験だったのが印象的。あと「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ 2」が良いスペース漁業SF百合でした。「少女を埋める」は、生きるためには声を上げなければならないという覚悟を描いた短編に対して、まさにそういう声を上げざるを得ない書評が来たことで、「やるんだな、今ここで!」となるメタフィクションめいた勢いのある一冊で、なんというか、ある種凄かった。

 

マンガだと「メダリスト」がまあもうとにかく図抜けて面白いです。フィギュアスケートに詳しくなくても競技会はものすごい面白いですし、練習も描写も面白くてもはや無敵。この熱量と繊細さでこのペースで連載して身体壊さないでくださいねと余計な心配をしたくなるような作品です。最高のクオリティでアニメ化してくれ。

あとは連載を追いかけることで得られるドライブ感が最高だったのは「タコピーの原罪」。体験として強かった。ジャンプ系だと「株式会社マジルミエ」がお仕事もの×魔法少女で新人作とは思えない完成度なのでこの先も楽しみ。あと、「鍋に弾丸を受けながら」は脳がやられているためすべての人間が美少女に見えるというパンチのきいた設定もありつつ、世界をめぐるグルメマンガとして面白かったです。

あとアニメ化も決まったU149は相変わらずキャラクターの描き方が冴えに冴えていて最高です。アニメはマンガの通りにはやら無さそうなので、期待値は下げつつ来年の楽しみにはしていきたい所存。あと、せっかくアニメにするんだから書店流通だけ何とかしろサイコミって思い続けています。

 

音楽だとアニメとのマッチングも含めて「花の塔」「かたち」「祝福」が良かったなあと。それから毎回EDが変わる話題性もあったチェンソーマンの「KICK BACK」「first death」は米津天才だなあ、TK天才だなあと感じる曲でした。あとリメイクされたうる星やつらの「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」がめちゃめちゃ良い曲で、レトロポップな世界観にも合っていて良かったです。

それとアイマス系でミリオンの「Clover’s Cry」がなかなかぶっ飛んだ曲で凄く好き。シンデレラだとナターリアの「ソウソウ」とユニ募の「UNIQU3 VOICES!!!」が明るいのにエモくて良き。

アルバムだと緑黄色社会の「Actor」が良いアルバムだったなあと思います。凄くスタンダードで、個性もちゃんとあって、凄く聞きやすくて魅力的。あとキャラソンでPhoton Maiden「4 phenomena」がコンセプトが明快で凄く良かったです。