星降プラネタリウム / 美奈川護

 

星降プラネタリウム (角川文庫)

星降プラネタリウム (角川文庫)

 

大きな、美しいものをテーマにして、何かを失ってきた人たちの再生という物語を、暖かく、美しく書く人だなと思います。花火をテーマにした「ギンカムロ」のそうだったし、そう言えば音楽をテーマにした「ドラフィル」もそういう話だったなと。今回のテーマはプラネタリウム、そして星空。期待を裏切らない、美しく、素敵な物語でした。

星空を資源に観光地化され大切にしてきたものが奪われた気がして、そして故郷を捨てて上京した昴が配属された職場は、プラネタリウム。「星の魔女」の異名を取る望月の下で、解説員の業務に就くことになった彼は、プラネタリウムに訪れる人たちと、そんな彼らに解説として何を伝えればいいか考えるうちに、胸に抱いていた「人は何のために星を見るのか」という問いに向き合うことになります。そしてそれは、いつしか彼自身が、捨ててきたものに向き合うことに繋がっていく。

交わした約束、あの日の記憶、変わらない星空。大いなる魔女の手に操られ輝くそれが、過去と今を繋いで、観光地になったが故に離れた島へ、彼を星空の解説員として返すことになります。それは逃げ続けた彼自身区切りのためでもあり、また、かつての約束を果たすため。

プラネタリウムに行きたくなる、むしろ綺麗に星空が見えるところに行きたくなる、美しい喪失と再生の物語でした。良かったです。

ウェイプスウィード ヨルの惑星 / 瀬尾つかさ

 

 人類の多くが地球を離れコロニーで暮らし、海面の上がり大半が海に覆われたそこは、ミドリムシの変異体エルグレナと菌類であるミセリウトが共生した大きな花状の構造体であるウェイプスウィードが支配する世界となっていました。環境保護団体により接触が制限される地球にようやく降りてくるも事故にあい不時着した研究者のケンガセンと、島で暮らす現地民の巫女である少女ヨルが出会い、物語は始まります。

3つの短編からなる物語は、海洋冒険ものである1話、ジャングル探検ものになる2話、そして改めて「ヨルの惑星」がどういう意味かが分かる3話と色の違う話になっていますが、根本にあるのは人類とウェイプスウィードという未知の知性とのコンタクトであり、それ以上にケンガセンという青年とヨルという少女の物語でした。

地球圏のコロニーとケンガセンの出自である木星圏の文化の差、未来になっても変わらない市民団体や政治の問題に、電脳体やクローンを始めとした人類を変えた技術、そして歴史の中に隠されていた大きな秘密。魅力的な設定と最終的に惑星規模になるスケールの大きさがあっても、語られるのはあくまでもケンガセンとヨルに手が届く世界。彼と彼女が出会って動き出した物語は、人類とそれのファーストコンタクトという遥かな場所まで来てもなお、二人のものでした。

あくまでもシンプルに語られるからこそ、それが映えたのだとは思いつつ、これだけ魅力的な設定があったのだから、もう少し掘り下げがあっても良かったなという気もします。でも、そう思わせないくらいには、年齢に見合わないくらいの子供っぽさと、年齢を超越した達観が共存するヨルというキャラクターは、物語の中でその意味を変えていく「巫女」という役割と合わせて非常に魅力的でした。

「わたしは子どもだから、子ども扱いされると嫌がるよ」 

何度か繰り返されるこのセリフにヨルの特徴と魅力が詰まっているように思います。

島の巫女として自分だけが外の知識を持ち、狭い世界の中で迷信を嫌って生きていたヨルにとって、ケンガセンという外から来た人間が憧れであったこと。木星圏という外の生まれであることで地球圏コロニーで不遇をかこってきたケンゲセンにとって、地球で出会ったヨルという少女がいつのまにかかけがえないものになったこと。

未知の知性のファーストコンタクトであり、人類の隠された歴史から繋がった時代の最先端を描くこの物語ですが、それでもやっぱり、その中心にいた二人のための物語であったのだと、読み終えて思います。

好きラノ2018上半期投票

お前これ投票するの何年ぶりだって感じですが、TwitterのTLで見かけたので思い立って雑なコメントと共に。ラノベの定義は面倒くさいやつなのでリストに載ってればいいんだよねの精神。

lightnovel.jp

 

賭博師は祈らない 4 / 周藤蓮

このシリーズは、そうそうそれそれ!! っていう展開がちゃんと来るのが最高です。

keikomori.hatenablog.com

【18上期ラノベ投票/9784048938709】

 

86 EP.4 / 安里アサト

いやもうほんと面白いですね。もうどこからでもかかってこいって感じですよね。

keikomori.hatenablog.com

 【18上期ラノベ投票/9784048938303】

 

悪魔の孤独と水銀糖の少女 / 紅玉いづき

少女と異端の物語。最高でした。

keikomori.hatenablog.com

 【18上期ラノベ投票/9784048937948】

 

りゅうおうのおしごと! 7 / 白鳥士郎

衰えゆく大ベテラン棋士の執念を叩きつけるような物語、その熱量。凄まじかった。

keikomori.hatenablog.com

【18上期ラノベ投票/9784797395501】

 

 閻魔堂沙羅の推理奇譚 / 木元哉多

しっかりした型があって、どの短編も驚きの完成度。

1巻もですが2巻もたいへん良かったです。

keikomori.hatenablog.com

【18上期ラノベ投票/9784062941075】

 

最後にして最初のアイドル / 草野原々

やりやがったのかやりきったのか、とにかく読んでみてという一冊。

keikomori.hatenablog.com

 【18上期ラノベ投票/9784150313142】

 

 

賭博師は祈らない 2-4 / 周藤蓮

 

賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)

賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)

 
賭博師は祈らない(3) (電撃文庫)

賭博師は祈らない(3) (電撃文庫)

 
賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)

賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)

 

 1巻が面白かったので最新刊まで読んだのですが、とても魅力的で面白いシリーズだと思います。そしてストーリーもキャラクターもめっちゃ好み。

話運びがすごく丁寧で、きっちり積み重ねてきたものがちゃんとその先の展開に生きてくるのが読んでいてとてもしっくり来る感じ。賭博師の話なので当然嘘も裏切りもあるのですが、お話的には決して裏切られないというか。ああこれは碌なことにならないなという時は碌なことにならないし、ここで勝負を決めてほしいというところでは決めてくれるし、誰か助けて欲しいというところでは助けが来るし、痒いところに手が届くというか、そうそうそれそれ! という感覚になって大変満足感が高いです。

そしてそういう一つ一つの積み重ねがあるからこそそれぞれに際立ってくるキャラクターの魅力に、作者の趣味が炸裂する18世紀イギリスをモチーフにした世界観とくれば、そりゃあ面白くない訳がなかろう、みたいな。

あとこの作品、どこか体温の低い感じというか、ローな空気に包まれているのですが、軸は非常にオールドスクールなヒーローものなんだなと思います。各地で重ための事件に巻き込まれて、どうでもいいと言いながら、最後には誰かを救うように動いている。そして救う対象が女性ばかりだから気がつけば周りにめっちゃ女性増えてるな! っていう。そうやってはじめにリーラという奴隷の少女を救って、いつしか彼女に惹かれていった甘さ、優しさが、養父の教えが作り上げた賭博師ラザルスという形を蝕んでいくというのもこれまた王道で、だからこそそれを超えた先にカタルシスがあって良かったです。

あと、決して明るくはない世界の中で、主要キャラクターがどいつもこいつも自罰的で生きづらそうというか、生きるのに損するような、でも魅力的な性格をしているのが最高だと思います。ラザルスや酷い境遇にいたのにあまりにも純粋に優しすぎるリーラもですが、2巻で初登場の地主の娘エディスの、追い詰められながら責任というか己の筋を通そうとする姿とか本当に好き。あと、1巻だと畏怖すべき対象だったフランセスが、4巻で踏み込んで描かれた途端にこの上なく魅力的に見えるのも凄いなあと。ラザルスは彼女のことを賭博師としては誰よりも分かっているけれど、それ以外の面はあることすら気づいていない感じで、それもまた先へ繋がっていくところなんだろうなと思います。

そんな感じでストーリーもキャラクターも非常に良いなと思うシリーズ。次の5巻で完結ということで、ここまでで蒔かれてきたあれやこれやが一体どういう結末を迎えるのか、楽しみに待っていたいと思います。

上田麗奈写真集 くちなし

あんまり写真集って読まないというか、興味のない人なのですが、コンセプト、衣装、構成までセルフプロデュースで、しかもそれが上田麗奈のものだと言われるとちょっと気になり手に取りました。そして、これは素晴らしいなと。

インタビューで大好きで大嫌いだと語られる地元富山で撮影された写真に漂う閉塞感。全編薄曇りの天気の中で、どこか現実感がブレているような、それでいてはっきりとそこに存在しているような感じ。中でも黒っぽい海で取られた写真がとても良いです。

色々な写真があるのですが、どれも少しだけ陽のあたる場所からは外れたところに、コンプレックスと表現者としてのエゴを感じさせるような確かな世界観があって、凄く好みです。声の演技をしていても、表に立って演技していても、歌っていても、こうした写真であっても、上田麗奈上田麗奈の表現をし続けるのだということが伝わってくる、素敵な写真集だと思いました。

6月のライブ/イベント感想

6/2・3 THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 5thLIVE BRAND NEW PERFORM@NCE!!! @ さいたまスーパーアリーナ

 「BRAND NEW」の冠通り、ソロ3曲目とミリシタ新曲+既存曲はこれまで歌っていないメンバーというコンセプトでミリオンのこれからを示すようなライブ。相変わらずミリオンはパフォーマンス力が高いというのと、出番の少なかったメンバーの成長が見えて良いライブだったなあと思います。

ミリシタ曲はドラマCDを聞いているかどうかで思い入れ度がだいぶ変わってくるなあというか、あれを聞いていると「虹色letters」が涙腺に来ますね……。それから「昏き星、遠い月」は物語仕立てでセリフありの好きなやつでそう! それ!! という気分に。

ソロ曲は初日は「Silent Joker」が素晴らしかったです。最高に桃子だった「ローリング△さんかく」、鮮烈だった「瑠璃色金魚と花菖蒲」も良かったですし、「AIKANE?」は思ったとおり最強に楽しかったです。二日目は「Only One Second」のべーせんの歌の力、「WE ARE ONE!!」や「スポーツ!スポーツ!スポーツ!」の盛り上がりも良かったですし、稲川プロのキャラ表現が凄かった「たんけんぼうけん☆ハイホー隊 」が非常に印象的でした。

 

6/17 リスアニ!PARK vol.2 @ 新木場STUDIO COAST

ライブにDJにと複数ステージのタイムテーブルが出ていて、好きに休んだり移動したりできる、いわゆるフェス形式のアニソンイベント。この形式、雑に参加して色々楽しめて好きなので、アニソンでももっと増えてもいいんじゃないかなあと思います。

お目当てだった岸田教団やZAQも良かったですし、DJではアイマス曲のリミックスをガンガンかけていたTaku Inoueが素晴らしく素晴らしかったです。「Radio Happy」はやっぱりああいうノリで楽しむ曲だよね……。

それからKOTOKOのステージで初っ端から「さくらんぼキッス」のイントロが流れたもんだからテンション爆上げですよね。いやまさかここで聞けるとは思っていなかったし、いつか聞きたい曲だったので……。そしてKOTOKOのパフォーマンスはいつ見ても凄い。

 

6/23 駒形友梨リリースイベント @ タワーレコード新宿

トマレのススメ (初回限定盤)
 

 ミニライブ(3曲)&お渡し回のリリイベ。ずっと歌の仕事がしたいと言っていたべいのソロデビューということで、本人もファンもとにかく今最高に幸せなんだという空気で溢れていて素敵なイベントでした。ミニライブもさすがの歌唱力で、今後が楽しみだなあと思います。ローラン的にはサンホラの時にFukiさんと遊んでてこのタワレコに来たという話が聞けたのが大きなポイント。

 

6/24 fhana World Atlas TOUR 2018 @ Zepp Diver City

World Atlas (初回限定盤) (特典なし)

World Atlas (初回限定盤) (特典なし)

 

 fhanaが今作っている音楽って、ちょっとびっくりするくらいクオリティが高いなあと思っていて、そこに普遍的なキャッチーさがのったアルバム「World Atlas」が素晴らしくてこれはライブも行かねばと思った次第で。

そして本当に良いライブでした。後半の「World Atlas」「青空のラプソディ」「星屑のインターリュード」「Relief」の流れが最高でした。MCで今年はロックフェスなどへの出演も控えていることに触れて、どこに行ってもfhanaの音楽はfhanaの音楽といっていたその言葉に、これ以上にない説得力をもたせるようなライブだったと思います。

 

6/27 さユり ツーマンツアー 月と越境 @ 川崎CLUB CHITTA

月と花束(初回生産限定盤)(DVD付)

月と花束(初回生産限定盤)(DVD付)

 

感覚ピエロとのツーマンライブ。ライブハウスのさユりを見たのは初めてだったのですが、思いの外盛り上げようと煽ってくるのがちょっと意外でした。普段からライブハウスではこういう感じなのか、「越境」というテーマに沿ってそういう風になっているのか、それが気になるところ。そしてやはりさユりの歌声と言葉は唯一無二のものだなあと思います。

感覚ピエロはとにもかくにも噂のOPPAIが聞けたので満足です。いやあひどい(いい意味で)。

 

6/30 Yuki Kajiura LIVE vol.14 "25th Anniversary Special" @ 舞浜アンフィシアター

TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』オリジナルサウンドトラック

TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』オリジナルサウンドトラック

 

 今年は事務所からの独立などもあって、どうしても色々考えてしまうところがあったのですが、ライブが始まってみたらもうそんなことは関係なく、私は梶浦由記の音楽が好きなんだと心から思えたこと、まずそれが良かったです。

前半は新曲を中心に。プリンセス・プリンシパルの楽曲が聴けたのが良かったです。そして後半は定番曲を中心に。あのMCからの流れで「fiction」はもうね、本当にね。そこから「forest」「key of the twilight」と続いて、完全に腰から崩れ落ちました。いやほんと好きなんだな、あの頃も今もずっと好きなんだなと。

今回初参加だったJoelleが英語詞の曲は流石という感じで合っていて、変わらないけれど新しい梶浦ライブを見たなと。「目覚め」「the image theme of XENOSAGAⅡ」も聞けて大変満ち足りた気持ちになったライブでした。

THE IDOLM@STER CINDERELLLA GIRLS After20 1 / バンダイナムコエンターテインメント・半二合

 

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS After20(1) (サイコミ)
 

 サイコミのシンデレラガールズ関連作品はU149とこのAfter20の2つがオリジナルとして連載されているのですが、前者が子どもたちを中心にした世界を描いているのとは対象的に、こちらは20歳を超える大人組を中心に描いた作品。大人だからこその仕事への向き合い方や、アイドル同士の繋がり、そして余裕を感じさせるところが魅力の一冊です。

居酒屋「しんでれら」を舞台に、川島さんや楓さんたち仕事上がりのアイドルが美味しい料理をつまみつつ美味しいお酒を飲むという、これはアイドルもの? と思うような話ですが、それがシンデレラガールズというバラバラの個性を持つキャラクターの中でも彼女たち年長組の魅力を表現するのにぴったりで、まさにコンセプト勝ちだなと思います。仕事に悩む三船さんを二人が飲みながら元気付ける話なんてそれぞれのキャラの良さが本当に良く出ていると思いますし、志乃さんの大人だからこその落ち着きとかっこよさったら。

そして、色々な仕事や自分の置かれた境遇に向き合っているアイドルたちが、隠れ家的に集まって笑顔で飲み食いできる場所があるということ。その優しさに読んでいてなんだかほっとするような、とても良いマンガだと思います。