3月のライオン 13 / 羽海野チカ

 

 これまでにスポットの当たらなかった人も含め、色々なキャラクターを描いた短編集のような構成の13巻。滑川さんの話や、二海堂の真っ直ぐさ、眩しさも良かったですが、一番印象に残ったのはあかりさんの話。

自分のことを後回しにして、誰かのために頑張って、それでも人との間には一線を引く。そんな彼女の生き方がモノローグで語られると、彼女をそうさせてしまった過去の重さが胸にくるものがあります。だから、彼女があの時の出来事を、素直に嬉しかったと言えるのは素敵なことだと思うし、素の彼女でいられる場所で、絶対に幸せになって欲しいなと思いました。そして島田八段格好良すぎる...…。

読んでいて感じるのは、ままならない家庭環境だとか、勝負の世界の厳しさだとか、描かれているものはいつだって重くて苦しくて、それでも作者は人が生きることは美しいことだと信じているんだろうなということ。だから、この作品は、ああ美しいなと思えるのかなと感じました。

東京レイヴンズ 15 / あざの耕平

 

 久しぶりの新刊は転生した夏目の視点から、夜光の時代を描く過去編。これまで現代の視点から語られてきた、夜光や飛車丸、角行鬼、そして夜光の周りにいた当時の相馬や倉橋について、改めて本人たちの視点から語られた時に何が見えるのか。

「帝式」と呼ばれる夜光の確立した陰陽術が、そもそも軍用であったことから分かってはいたのですが、戦争の真っ只中を歩む日本の中で、否が応にも使えるものはなんでも使おうとする軍部の内と外の争いに巻き込まれていくのが読んでいて辛いものがあります。そこが主題ではないので深く触れるわけではなくとも、思った以上に時代背景が暗い影を落としているような感じ。

そんな中で忠犬(狐だけど)のような飛車丸の忠義っぷりがおかしかったり、陰陽術の天才である勝手気ままな夜光と、相馬の若き当主である不良軍人の佐月が、反発しながらも協力していく相棒っぷりが良かったです。

過去編のまま終わって続くの!? と思ったものの、あとがきによれば次巻で現代に戻る模様。過去と現在を繋ぐ物語と、魂の呪術によって現在から過去に繋がった物語、夜光と飛車丸、春虎と夏目。その2つの流れが果たしていったいどういうひとつの形を描くのか。スケールの大きさ、話の複雑さからもうどんな景色が待っているのか想像のつかない感じですが、作者を信じて、また待っていたいと思います。

1518!イチゴーイチハチ! 4 / 相田裕

 

 帯に「夢を諦めるところから始まる物語」と書いてあるのですが、この作品は1巻からずっとそういう話を続けてきていて、やっぱりそれが最高に好きです。

4巻はここまでの集大成というか、一区切り的な話なのですが、クライマックスというには地味で、彼ら彼女らはもう表舞台で輝く訳ではなくて、それでも確かにこれらは彼らの人生における特別な時間。肘の故障で続けられなくなった野球に、生徒会からの応援団の手伝いという形で向き合う烏谷の吹っ切れた姿に、男子の中で野球を続けることを諦めた会長が、それでも野球が好きだと女子野球を目指す決意をする姿に、夢破れた者たちがこの生徒会で過ごした時間は無駄ではなかったんだなと思いました。

そしてやっぱり最後のシーン。昔の彼の姿に憧れていた子供に対して、今の彼が投じられる最高の一球。そして自分の姿を追ってくる子にかけた言葉。それはまた、彼自身にとってもけじめであって、またそれを見ていた周りの人達にとっても一つの区切りになったのだと思います。確かに甲子園やそこを目指す大舞台でエースが投げるボールではなかったけれど、鳥肌が立つような、特別な時間を切り取ったシーン。すべてを賭けてきた夢が終わったその先に、こんなに清々しく、美しく、少し寂しさのある景色が続いている。本当に素敵な作品だと思いました。思いっきり泣いてしまった……。

映画大好きポンポさん / 杉谷庄吾【人間プラモ】

 

 pixivで話題になっていた時に読んでこれは凄い、とにかく凄いと思って、本になるならぜひ紙で手元にと思って買ってまた読んで凄い! と思ったのですが、結局のところその凄さが何なのか私にはよくわからないんですよね、この作品。

リエーターの水面下でぐらぐらと煮えたぎってるような、表向けのきらきらしている部分じゃないどろどろと濁ったような、そんな部分をけれどキャッチ-にすくい上げたみたいな。ポップさと狂気が絡み合ったような底知れない感じに持って行かれるのですが、結局私はクリエイターではないのでそれが何なのか、分かるような、分からないような。でもやっぱりこれは凄いなと、それは確かだなと。

映画を撮りながらあのシーンに向かっていく高揚感、そしてハマるべきものがハマるべきところにハマって突き抜けきった感じも素晴らしかったのですが、序盤のミスティアの黙々とサプリを取ってトレーニングをしてるところとか、工事現場でバイトするナタリーのシーンだとか、そういう何気ない所で、ぐっと引きずり込まれるような感じがあったのがとても印象的な一冊でした。引力の強い、作品だなって。

HiGH&LOW THE MOVIE 2 END OF SKY

TwitterのTLで流行っているのは横目に見ていて、その流行り方を見るにこれは見なければダメなのではと思ってはいたものの、TVシリーズから追いかけるほどの気力もなく、ええいといきなり映画の2を観に行ってきました。

結論から言うとめちゃくちゃ面白いですねハイロー。完全にキャラクターコンテンツなのでTVシリーズや前作映画の積み重ねがあればもっと面白かったろうとは思いつつ、冒頭でSWORD地区で争う各チームのメンバー、ビジュアルイメージ、テーマ曲や、今SWORD地区が置かれている状況は紹介してくれるのでおおよそのところは無問題。あとはとにかくひたすら喧嘩祭が開催されていることと、ひたすら俺の考える最高のカッコよさが追求されたビジュアルと、とんでもないクオリティのアクションが矢継ぎ早に来るのに身を任せれば大丈夫です。実のところキャラ数は膨大で設定は細かいそうなのですが、あとはああそういう感じねはいはいOKで全然いけます。

そう、そういう感じねOK分かったなんですよ、オタク的には。EXILEという文化交流の一切ない未知の大陸に足を踏み入れたつもりが、明らかに楽しみ方を知っているあれやこれがどんどん来るので、やはりここがスタート地点は違えど最新エンタメの辿り着く場所なのか、みたいな気持ちになります。

膨大なキャラクターがユニット分けされて、それぞれに強烈な個性が与えられて、個人の掘り下げと個々の関係性で物語が紡がれていく感じ。己のカッコよさを、描きたいと思ったものをひたすらに貫いて突っ込みどころを後方に振り切りながら走る熱量とお祭り感。そして役者とキャラクターの2人で1つな一体感。流行りのソシャゲ系のコンテンツとか、ガルパンとかキンプリとか、二次元アイドル系のコンテンツとかなんかそういうのが脳裏をかすめるような。楽しみ方は色々あるとは思いますが、そのラインで楽しむのも間違っていないような気がするのです。ほら、応援上映やってるし。

ストーリーは少年漫画のど王道で、外敵と闘うために、普段敵対しつつも認めあうところはある5つのチームが最後には共闘するとか、もうベッタベタですけど最高ですよねっていう。意地を通してめっためたにやられたあるチームのトップが、別のチームのトップに助けられて手を差し出され、握り返して引き起こされる時に「ずいぶんやられてんな」とかけられた声に「うるせえバーカ」って返すんですよ。それ! ってなるじゃん。

あとスラム街(?)的なところを本拠地にしたチームのトップが、病気を患ってるらしくどこか儚げな空気を醸し出していて、彼が良くなるようにと自分のネックレスを差し出してくる街の幼女に、それを返して握らせるシーンがあって、もうこの映画ではほとんど説明も活躍もないんで背景何も分かってないんだけどそれ分かるー!! ってなるの完全に悔しさしかない。個人的にはテーマ曲もアクションもRUDE BOYSめっちゃ好きでした。

あと達磨一家の日向さんメッチャかっこいいですねっていう。最後の闘いのシーン、あまりのスケール感と味方が集まってくる展開に祭りだああああ(ドンドコドンドコ)って心の中で太鼓がなる時点でかなりキてるのですが、日向さんの「SWORD協定じゃあああ!!!」で脈絡はもう何もかもわからないけれど勢いだけでうおおおおおおおおってなるの完全に負けてるなって。ほんと最高かよ。完敗です。

なんかそんな感じで、EXILEに親を殺されたとか、HIP-HOPやヤンキー文化が敵だとか、暴力的な表現はちょっと……みたいなことがなければ見に行けばいいんじゃないっていうくらい、何故かオタクにウケたというより、オタクが嫌いな訳がない映画だったと思います。いっそもうほとんどアニメなんですが、三次元だから作画が良いんですよね......。というかこんなんアニメじゃないとできないのではと思うようなことを、アクションも美術もキャラクターも実現しちゃってるというのが、この映画の凄さなのかなと思いました。ツッコミどころもケチの付けどころも挙げればいっぱいあると思うのですが、いやでもこれは最高だな、最高だったなとしか。

そしてこうなってくるとTVシリーズと前作までの映画が気になりつつも、この沼はヤバいと本能で感じるので、ちょっと距離を起きたいですが..…うーん。

ギンカムロ / 美奈川護

 

ギンカムロ (集英社文庫)

ギンカムロ (集英社文庫)

 

 ああ、美しい花火だったと、読み終えてまず思いました。

もちろんこれは文字媒体の小説で、本文中にもイラストがある訳ではなくて、それでも脳裏には、印半纏を羽織った職人たちの向こう、広がる夜空に咲く大輪の花火のイメージが鮮烈に焼き付く、そういう作品でした。素晴らしかったです。

かつて花火工場の事故で両親をなくし、故郷を離れた主人公。ある日祖父に呼ばれ帰郷したそこには、職人として修行中の女性がいて。12年前の不幸な事故。家を離れた青年。看板を掲げ直した老人。地元の大きな祭で打ち上げられる奉納花火。神事で山の神のもとへ連れられる少女。伝統の色濃く残る田舎町で、彼ら、彼女らは何を思い花火を上げるのか。打ち上げて、花開いて、たった7秒。その刹那に、一度は潰えるかに思われた高峰煙火の名前を背負った職人たちは、何を籠めるのか。

この作品は花火職人という職業にスポットを当てたお仕事小説であると同時に、喪失と再生、過去を清算して踏み出すための物語でした。でも、決してそれは後悔でもない、贖罪でもない。銀冠は鎮魂の花火、これは覚悟と祈りの物語。

物語の持つ清廉で凛とした雰囲気、風間絢という女性の在り方、職人たちの生き様、そして花火というテーマが、作者の丁寧で品のある文章にとてもマッチしていて、美しく素晴らしい物語を形作っていたように思います。本当に良かった。好きです。

そして欲を言えば、花火大会のシーズン前に読みたかったなと。そうしたら、久しぶりに打ち上がる花火を観に行ったのにと。その機会はまた来年になりそうですが、次に花火を見るときには、あれは誰のどんな思いを載せて上がっているのだろうと、そんなことを考えるような気がしています。

きっと彼女は神様なんかじゃない / 入間人間

 

 この表紙でこのタイトルで帯に「ガール・ミーツ・ガール」と書いてあって、それは確かに何も間違っていないのだけど、その印象通りの透明感のある雰囲気に反して、物語自体は非常に歪んだ形というか……何の形をしてるんだこれは? みたいな。

入間人間らしいと言えばらしい道具立てで作られたストーリーは、いきなり何だか良くわからない世界に放り出されて、原始的な暮らしをする集落でひとりぼっちの少女の視点で進みます。そして彼女は神の岩と言われる遺跡で永い間眠っていた少女に出会います。その後も何かがおかしいような違和感を残したまま淡々と進む物語は、次第に神の岩の正体や東の民、そして自称神の少女の正体にも何となく想像がついてきて、明らかになる真実も当たらずとも遠からずだった感じ。ただ、その少し不思議要素はいったん脇に置いておいて、なんというか、このお話は、その。

自称神の少女がどうして永い眠りについていたのか。どうして彼女はその少女に惹かれていったのか。真実が明らかになった時、明らかになる彼女の置かれている状況と、彼女の選んだ道。淡く淡く、一定のリズムを崩さないような雰囲気の中で、バッサリと切り捨てられる過去、その残酷さ。

略奪愛百合というか、たぶんそういう話になるんだとは思うのです。飄々とした彼女は涙を流しながらも、あっさりとこちらを選んだ。執着したはずの感情は、形というものに簡単に覆されて、断ち切られて、彼女たちはまた別の執着で次の道を歩きだす。

それをお膳立てしたのは、文字通りに仕組まれた、できの悪い神話のレプリカみたいな世界。救えない、笑えない、冗談のような巫山戯た未来図が描くものは何もかもが薄っぺらくて安っぽくて、けれどそれを本当として彼女たちは生きていくしかない。

「生きていくしかないんやね、ここで」

と繰り返される言葉が彼女の全て。そして、明日を生きれるかも分からない二人が生きていくこの物語の全て。ただ、これを生きることだと高らかに謳い上げられると、それはちょっと……ええ……となる思いもあります。でも、思い返してみるに、それはみーまーの頃から入間作品にずっと通底するものだったように思えて、これはちょっとアプローチが違うだけなのかなと、そんなふうに思いました。