アニソンの神様 score.02 / 大泉貴

実在の「アニソン」をテーマにして書かれた物語である以上、ある意味ネタ勝負というか曲勝負というところがあるとは思うのですが、アニソンのおまけのストーリーにならないところがこのシリーズの魅力なのかもしれないと思った一冊でした。
という訳で、1巻でライブという最高の盛り上がりを迎えたエヴァたちレーゲン・ボーゲンの5人がぶつかる、続けることの難しさというのがテーマになってくるこの巻の主役は京子。アニソンが好きな事を隠しながら周りと上手くやっていくことを是として彼女の、中学時代に組んでいたバンドとその中心人物だった神崎椎奈との関係。
自分が好きなものを好きと言い切れない、自分のやりたいことをやってしまえない。ある種のバランス感覚があって、でも特異なバイタリティがあるわけではないからこそのコンプレックス。かつて椎奈との間に感じたもの、今エヴァとの間に感じるもの、京子を苦しめることになるそれは、ライブハウスイベントに参加することになったレーゲン・ボーゲンとその参加者の中に椎奈のバンドがいたことでもう逃げきれるものではなくなって。
そんな行き違ってしまった椎奈との関係を、選んだ道は別々のまま、けれど広がってしまった溝を埋めるように。そうさせたのが、レーゲン・ボーゲンのライブであり、そこで奏でられた曲であるというのがこの作品がこの作品である所以。突っ込みどころがあるというか、かなり強引な展開をしているとは思うのですが、そのクライマックスに持って来られるライブ3曲目に選ばれた曲の理由、そして言葉は要らないくらいにストレートで卑怯な選曲の4曲目をぶつけられたらもうずるいとしか言えないでしょうと。
アニソンの神様というタイトルに象徴されるように、色々なものを飲み込んでいくその力を最大限前向きに優しく信じながらも、それぞれのキャラクターにも、アニソン自体にもすごく真摯に真面目に向き合っているというのが良いなあと思う作品でした。次回は琴音の話ということですが、その次は是非孝弘の話も読みたいなあと思います。こんな一途で良い奴なかなかいないって!