イエスタデイをうたって 11 / 冬目景

連載18年間、11冊。私が読みだしてからも12年くらい。なんとなくこれは完結することはないんじゃないかとすら思っていた作品を最後まで読めたことがまずは幸せなことだと思います。
そして、それだけの期間をかけて結局お前らそれかよおおおおってなりますよね! まあなりますよね! ただこの作品、思い返せばこれまでの道のりも理屈で片付ければ2、3巻で終わるような、あるいは情動で片付けてもやっぱりそれくらいでケリがついていたような、そんな話だった訳で。要するに、理屈ではないからこれだけの時間がかかったものを、作者が草食系の変人たちと言っちゃうようなキャラクターたちが延々とやっていたからこそ、魅力的な作品だったんじゃないかと思います。宙に浮いたようなモラトリアムの中で、言葉にならないものだからなかなか形にならない、そんな人間模様が何故だかとても心地よかったのだろうなと。
最終的にリクオが選んだのはハルで、大学時代からずっと隣りにいた榀子との関係はどんなに居心地が良くてもお互いにそれは恋ではなかった、という話。じゃあそういう近すぎた関係を否定するかといえば、最終的に妹のような存在であるみもりを選んだ雨宮の存在もあって。だからやっぱりこれは理屈ではなくて、そうであるように、そうであるところに、不器用で面倒くさくて考え過ぎちゃう愛すべきキャラクターたちの関係の中で、ゆっくりと時間をかけて落ちていったものなのだろうと思います。
直接的に二人が描かれるわけではない最終話から、ハルが今幸せなんだということが凄く伝わってきて、ハルというキャラクターに惹かれてこの作品を好きになった読者としては本当に良かったと思うのでした。大団円でした。