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本をめぐる物語 小説よ、永遠に

感想

佐藤友哉海猫沢めろんと並んでいれば読まないわけに行かないだろうと手にとったのですが、「本」「小説」「物語」といったものをテーマに、主人公はほぼほぼ少年少女で書かれた面白い作品集でした。共通する設定があるわけではなくそれぞれの作者が全く別の話を書いているのですが、ラストの『新刊小説の滅亡』で見事に構成的にまとまっていてちょっとびっくり。
作品の中では佐藤友哉『ナオコ写本』のかっ飛びぶっ壊れ具合がとてもユヤタンユヤタンだなあという感じで、島本理生『壊れた妹のためのトリック』も若干鏡家入ってるよねこれみたいな感じのお話と思っていたら、Twitterでインスパイア作品とわかって納得。でもマイルドなようでいて後からゾワっとくるあたり、しょっぱなから飛ばしていく本家とは大分手触りが違くて面白かったです。
あとは海猫沢めろん『ワールズエンド×ブックエンド』。自動筆記AIがもたらす物語の終わりと、それでも終わらない物語。どんな物語が生まれようと、それに力があったとしても物語なんていうのはそれだけのもの。けれど物語はあたしはあたしであるかぎり終わらない。無力でどうしようもないことを前提に、それでも続けていくものの描き方が作者らしくてとても好きです。
それから千早茜『あかがね色の本』。学生時代の記憶、男子と女子の間にあった微妙な壁、クラスの中心の子たちが作る世界の中で、本を通じて親しくなった男の子との思い出は、信じることができなかった故に苦く切ないものを残しながら、物語を書き続ける理由として作家となった主人公の一番根っこの部分にあり続ける。きっとこれはとてもささやか個人的で、それでいてとても大切なものを読んだ気分になる作品でした。