魔法少女育成計画 JOKERS、ACES、episodesΦ、16人の日常 / 遠藤浅蜊

魔法少女育成計画 ACES (このライトノベルがすごい!文庫)

魔法少女育成計画 ACES (このライトノベルがすごい!文庫)

アニメ放送開始ということで既刊の積読していたものとアニメ合わせ短編集をまとめて読んだのですが、いや本当にまとめて読むと気持ちが荒んでいくシリーズだなと思いました。


以下の感想はアニメ、というか初作のネタバレを含みます。


やはりこう、とにかく死ぬ、容赦なく死ぬ、そこまでで描写を積み重ねたキャラクターの背景も使う魔法も関係なくあっさりと死ぬ。キャラクターの抱えたものを解決するのではなく、キャラクターの死を積み重ねることで物語が駆動するこの感じ、ああ、魔法少女育成計画読んでるなあと。そしてそんな当たり前のように逝ったキャラクターたちのエピソードが短編集で後から出てくるのですが、ちょこっといい話みたいなエピソードを今更与えられましても、この子もう死んでますよね……みたいな気分になれるのが何というか。これを読むことで私の中でキャラクターの厚みが増して形になっていくけど、でも。
まあそんな魔法少女育成計画ですが、世知辛くきな臭い魔法の世界絡みの大きな動きがあったのがJOKERSとACES。人事部でスピード出世をしていたプフレに汚職調査の横槍が入ったところから、彼女が自分から切り離した記憶をめぐる物語と、彼女がその後に打った手によって物語は動き出します。正直広げた風呂敷の大きすぎる話で、JOKERS、ACES単品の話では完結しないどころかまだ全体像も見えてこないのですが、魔法の国の三賢人の現身が2人直接登場したり、スノーホワイトがそのうち一人の側についたり、プフレはフレデリカを使って何をし用としてるのかだったり、人造魔法少女という新たな存在や魔法の国の危機が浮き彫りになったりと、各勢力入り乱れた大きなうねりが起きている状況。このあたりは刊行が延期してしまったQUEENSの中でどういう結末を迎えるのか、楽しみにしていたいと思います。
単巻の物語としては、JOKERSの人造魔法少女たちがやるせなかったです。何者か、というかおそらくあの人の関連で魔法の国の関与無しで生み出された魔法少女たちは、研究所をベースにピュアエレメンツを結成。これが所謂プリキュア的なキラキラとした魔法少女として謎の敵と闘っていた訳ですが、何もかもが作られ与えられたものだったというのを本人たちだけがあずかり知らぬまま、本物の魔法少女による魔法の国の血で血を洗う勢力争いに放り込まれ、翻弄されていくのがなんとも。大きすぎる流れに、期待とか希望とか恋心とかそういう正の感情がすり潰されていくのは結構くるものがありました。
あと、彼女たちを前にしてもはや魔法の国側の存在となったスノーホワイトさんが何を思うのか。強力すぎる敵を前にして生き残るための最善を尽くした彼女は、確かに正しく、ただそれでも救えたかもしれない何人かを救わなかったことも確かで。ただ困っている人を助ける正しい魔法少女であろうとした彼女が、正しくない魔法少女と闘うという修羅の道を選んだ先に何があるのか。ACESでのリップルとの悲しい形での再会も含めて、どうしてもあの試験から始まったその道の先に光があるようには思えないことが気がかりに思います。
しかし、クラムベリーの試験最後の生き残りにして、今となっては大物犯罪者であるフレデリカに師事、後に悪事を告発し捕縛、その後「魔法少女狩り」となって魔法少女を捕まえて回り、あの戦闘力に特化した魔王塾出身者をも倒し、今度は魔法の国の三賢人が1人の現身を捕縛って、スノーホワイトさんマジスノーホワイトさんって感じ。羅刹か何かか。思えば遠くに来たものだと、ラピュセルに守られねむりんの死に涙を流すアニメの彼女を見ながら思います……。