スカートのなかのひみつ。 / 宮入裕昂

 

スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

 

 圧倒的な熱量と疾走感が吹き抜けていく青春模様。独特のセンスとリズムに乗って語られる物語は、粗っぽいといえばそうなのですが、洗練されていないからこそこの無秩序な熱量が生まれるのかなと思います。

女装趣味を隠していた天野の前に現れた、行動力が肉塊の形をしたような男、八坂幸喜真。女装アイドル、メアリー、病院の怪獣、タイヤ泥棒、白蛇祭。ばらばらに語られる少年少女たちの物語はいつしか一つの流れになって、ただ前へ進め、諦めるな、自分を貫けと謳い上げます。

これは、コンプレックスと理不尽さと困難と己に降りかかる全てを大向うに回して、夢と希望と自分自身を叫べ! 跳べ! 一歩ずつでも進め!! と訴える物語です。それは言葉にしてしまえばどこかチープに感じられるような青臭さであって、けれどやっぱり物語という形で描かれると、それが普遍的で、なおかつ特別なものなんだと思えます。そう信じさせてくれるだけのパワーがある一冊でした。