賭博師は祈らない 2-4 / 周藤蓮

 

賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)

賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)

 
賭博師は祈らない(3) (電撃文庫)

賭博師は祈らない(3) (電撃文庫)

 
賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)

賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)

 

 1巻が面白かったので最新刊まで読んだのですが、とても魅力的で面白いシリーズだと思います。そしてストーリーもキャラクターもめっちゃ好み。

話運びがすごく丁寧で、きっちり積み重ねてきたものがちゃんとその先の展開に生きてくるのが読んでいてとてもしっくり来る感じ。賭博師の話なので当然嘘も裏切りもあるのですが、お話的には決して裏切られないというか。ああこれは碌なことにならないなという時は碌なことにならないし、ここで勝負を決めてほしいというところでは決めてくれるし、誰か助けて欲しいというところでは助けが来るし、痒いところに手が届くというか、そうそうそれそれ! という感覚になって大変満足感が高いです。

そしてそういう一つ一つの積み重ねがあるからこそそれぞれに際立ってくるキャラクターの魅力に、作者の趣味が炸裂する18世紀イギリスをモチーフにした世界観とくれば、そりゃあ面白くない訳がなかろう、みたいな。

あとこの作品、どこか体温の低い感じというか、ローな空気に包まれているのですが、軸は非常にオールドスクールなヒーローものなんだなと思います。各地で重ための事件に巻き込まれて、どうでもいいと言いながら、最後には誰かを救うように動いている。そして救う対象が女性ばかりだから気がつけば周りにめっちゃ女性増えてるな! っていう。そうやってはじめにリーラという奴隷の少女を救って、いつしか彼女に惹かれていった甘さ、優しさが、養父の教えが作り上げた賭博師ラザルスという形を蝕んでいくというのもこれまた王道で、だからこそそれを超えた先にカタルシスがあって良かったです。

あと、決して明るくはない世界の中で、主要キャラクターがどいつもこいつも自罰的で生きづらそうというか、生きるのに損するような、でも魅力的な性格をしているのが最高だと思います。ラザルスや酷い境遇にいたのにあまりにも純粋に優しすぎるリーラもですが、2巻で初登場の地主の娘エディスの、追い詰められながら責任というか己の筋を通そうとする姿とか本当に好き。あと、1巻だと畏怖すべき対象だったフランセスが、4巻で踏み込んで描かれた途端にこの上なく魅力的に見えるのも凄いなあと。ラザルスは彼女のことを賭博師としては誰よりも分かっているけれど、それ以外の面はあることすら気づいていない感じで、それもまた先へ繋がっていくところなんだろうなと思います。

そんな感じでストーリーもキャラクターも非常に良いなと思うシリーズ。次の5巻で完結ということで、ここまでで蒔かれてきたあれやこれやが一体どういう結末を迎えるのか、楽しみに待っていたいと思います。

上田麗奈写真集 くちなし

あんまり写真集って読まないというか、興味のない人なのですが、コンセプト、衣装、構成までセルフプロデュースで、しかもそれが上田麗奈のものだと言われるとちょっと気になり手に取りました。そして、これは素晴らしいなと。

インタビューで大好きで大嫌いだと語られる地元富山で撮影された写真に漂う閉塞感。全編薄曇りの天気の中で、どこか現実感がブレているような、それでいてはっきりとそこに存在しているような感じ。中でも黒っぽい海で取られた写真がとても良いです。

色々な写真があるのですが、どれも少しだけ陽のあたる場所からは外れたところに、コンプレックスと表現者としてのエゴを感じさせるような確かな世界観があって、凄く好みです。声の演技をしていても、表に立って演技していても、歌っていても、こうした写真であっても、上田麗奈上田麗奈の表現をし続けるのだということが伝わってくる、素敵な写真集だと思いました。

6月のライブ/イベント感想

6/2・3 THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 5thLIVE BRAND NEW PERFORM@NCE!!! @ さいたまスーパーアリーナ

 「BRAND NEW」の冠通り、ソロ3曲目とミリシタ新曲+既存曲はこれまで歌っていないメンバーというコンセプトでミリオンのこれからを示すようなライブ。相変わらずミリオンはパフォーマンス力が高いというのと、出番の少なかったメンバーの成長が見えて良いライブだったなあと思います。

ミリシタ曲はドラマCDを聞いているかどうかで思い入れ度がだいぶ変わってくるなあというか、あれを聞いていると「虹色letters」が涙腺に来ますね……。それから「昏き星、遠い月」は物語仕立てでセリフありの好きなやつでそう! それ!! という気分に。

ソロ曲は初日は「Silent Joker」が素晴らしかったです。最高に桃子だった「ローリング△さんかく」、鮮烈だった「瑠璃色金魚と花菖蒲」も良かったですし、「AIKANE?」は思ったとおり最強に楽しかったです。二日目は「Only One Second」のべーせんの歌の力、「WE ARE ONE!!」や「スポーツ!スポーツ!スポーツ!」の盛り上がりも良かったですし、稲川プロのキャラ表現が凄かった「たんけんぼうけん☆ハイホー隊 」が非常に印象的でした。

 

6/17 リスアニ!PARK vol.2 @ 新木場STUDIO COAST

ライブにDJにと複数ステージのタイムテーブルが出ていて、好きに休んだり移動したりできる、いわゆるフェス形式のアニソンイベント。この形式、雑に参加して色々楽しめて好きなので、アニソンでももっと増えてもいいんじゃないかなあと思います。

お目当てだった岸田教団やZAQも良かったですし、DJではアイマス曲のリミックスをガンガンかけていたTaku Inoueが素晴らしく素晴らしかったです。「Radio Happy」はやっぱりああいうノリで楽しむ曲だよね……。

それからKOTOKOのステージで初っ端から「さくらんぼキッス」のイントロが流れたもんだからテンション爆上げですよね。いやまさかここで聞けるとは思っていなかったし、いつか聞きたい曲だったので……。そしてKOTOKOのパフォーマンスはいつ見ても凄い。

 

6/23 駒形友梨リリースイベント @ タワーレコード新宿

トマレのススメ (初回限定盤)
 

 ミニライブ(3曲)&お渡し回のリリイベ。ずっと歌の仕事がしたいと言っていたべいのソロデビューということで、本人もファンもとにかく今最高に幸せなんだという空気で溢れていて素敵なイベントでした。ミニライブもさすがの歌唱力で、今後が楽しみだなあと思います。ローラン的にはサンホラの時にFukiさんと遊んでてこのタワレコに来たという話が聞けたのが大きなポイント。

 

6/24 fhana World Atlas TOUR 2018 @ Zepp Diver City

World Atlas (初回限定盤) (特典なし)

World Atlas (初回限定盤) (特典なし)

 

 fhanaが今作っている音楽って、ちょっとびっくりするくらいクオリティが高いなあと思っていて、そこに普遍的なキャッチーさがのったアルバム「World Atlas」が素晴らしくてこれはライブも行かねばと思った次第で。

そして本当に良いライブでした。後半の「World Atlas」「青空のラプソディ」「星屑のインターリュード」「Relief」の流れが最高でした。MCで今年はロックフェスなどへの出演も控えていることに触れて、どこに行ってもfhanaの音楽はfhanaの音楽といっていたその言葉に、これ以上にない説得力をもたせるようなライブだったと思います。

 

6/27 さユり ツーマンツアー 月と越境 @ 川崎CLUB CHITTA

月と花束(初回生産限定盤)(DVD付)

月と花束(初回生産限定盤)(DVD付)

 

感覚ピエロとのツーマンライブ。ライブハウスのさユりを見たのは初めてだったのですが、思いの外盛り上げようと煽ってくるのがちょっと意外でした。普段からライブハウスではこういう感じなのか、「越境」というテーマに沿ってそういう風になっているのか、それが気になるところ。そしてやはりさユりの歌声と言葉は唯一無二のものだなあと思います。

感覚ピエロはとにもかくにも噂のOPPAIが聞けたので満足です。いやあひどい(いい意味で)。

 

6/30 Yuki Kajiura LIVE vol.14 "25th Anniversary Special" @ 舞浜アンフィシアター

TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』オリジナルサウンドトラック

TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』オリジナルサウンドトラック

 

 今年は事務所からの独立などもあって、どうしても色々考えてしまうところがあったのですが、ライブが始まってみたらもうそんなことは関係なく、私は梶浦由記の音楽が好きなんだと心から思えたこと、まずそれが良かったです。

前半は新曲を中心に。プリンセス・プリンシパルの楽曲が聴けたのが良かったです。そして後半は定番曲を中心に。あのMCからの流れで「fiction」はもうね、本当にね。そこから「forest」「key of the twilight」と続いて、完全に腰から崩れ落ちました。いやほんと好きなんだな、あの頃も今もずっと好きなんだなと。

今回初参加だったJoelleが英語詞の曲は流石という感じで合っていて、変わらないけれど新しい梶浦ライブを見たなと。「目覚め」「the image theme of XENOSAGAⅡ」も聞けて大変満ち足りた気持ちになったライブでした。

THE IDOLM@STER CINDERELLLA GIRLS After20 1 / バンダイナムコエンターテインメント・半二合

 

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS After20(1) (サイコミ)
 

 サイコミのシンデレラガールズ関連作品はU149とこのAfter20の2つがオリジナルとして連載されているのですが、前者が子どもたちを中心にした世界を描いているのとは対象的に、こちらは20歳を超える大人組を中心に描いた作品。大人だからこその仕事への向き合い方や、アイドル同士の繋がり、そして余裕を感じさせるところが魅力の一冊です。

居酒屋「しんでれら」を舞台に、川島さんや楓さんたち仕事上がりのアイドルが美味しい料理をつまみつつ美味しいお酒を飲むという、これはアイドルもの? と思うような話ですが、それがシンデレラガールズというバラバラの個性を持つキャラクターの中でも彼女たち年長組の魅力を表現するのにぴったりで、まさにコンセプト勝ちだなと思います。仕事に悩む三船さんを二人が飲みながら元気付ける話なんてそれぞれのキャラの良さが本当に良く出ていると思いますし、志乃さんの大人だからこその落ち着きとかっこよさったら。

そして、色々な仕事や自分の置かれた境遇に向き合っているアイドルたちが、隠れ家的に集まって笑顔で飲み食いできる場所があるということ。その優しさに読んでいてなんだかほっとするような、とても良いマンガだと思います。

スカートのなかのひみつ。 / 宮入裕昂

 

スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

 

 圧倒的な熱量と疾走感が吹き抜けていく青春模様。独特のセンスとリズムに乗って語られる物語は、粗っぽいといえばそうなのですが、洗練されていないからこそこの無秩序な熱量が生まれるのかなと思います。

女装趣味を隠していた天野の前に現れた、行動力が肉塊の形をしたような男、八坂幸喜真。女装アイドル、メアリー、病院の怪獣、タイヤ泥棒、白蛇祭。ばらばらに語られる少年少女たちの物語はいつしか一つの流れになって、ただ前へ進め、諦めるな、自分を貫けと謳い上げます。

これは、コンプレックスと理不尽さと困難と己に降りかかる全てを大向うに回して、夢と希望と自分自身を叫べ! 跳べ! 一歩ずつでも進め!! と訴える物語です。それは言葉にしてしまえばどこかチープに感じられるような青臭さであって、けれどやっぱり物語という形で描かれると、それが普遍的で、なおかつ特別なものなんだと思えます。そう信じさせてくれるだけのパワーがある一冊でした。

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 3 / バンダイナムコエンターテインメント・廾之

 

 U149はシンデレラガールズの小さい子たちが中心の作品なのですが、年少組が中心ということで何が特徴的かというと、全てがシンプルになることなんじゃないかと思います。次々に起きる出来事に、驚いて、喜んで、悩んで、泣いて、笑って、助け合って。もっと上の世代のアイドルたちを中心にしたら、なかなか出てこないようなプラスにもマイナスにもストレートな反応が重なって、彼女たちの時間を作っていく。大人の事情に振り回されることがあっても、チビPがなんとか踏ん張って、彼女たちの世界を複雑にはさせないように、いつも同じ目線で彼なりに考えて行動してくれる。だからこそ生まれてくる関係だったり、輝きだったりがあって、それを前にすると、ああ、これが尊いということか以外の語彙力を失います。

そんな訳でこの巻も素晴らしかったんですけど、特に佐々木千枝回、本当に素晴らしいと思います。リーダーを任されたことで彼女なりのコンプレックスと気負いがあって、背負い込んで崩れそうな時に手を伸ばしてくれる大人と仲間がいるということ。人見知りな子が一歩踏み出すための物語は、同時に第三芸能科の絆とPの成長にも繋がっていて、なんて素敵なお話なのだろうと。

これだけ多くのキャラクターが登場するのにそれぞれの特徴を掴んで、愛を感じる描写と丁寧な物語をいつも読ませてくれるのは、本当に有り難いことだと思いました。

閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室 / 木元哉多

 

閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室 (講談社タイガ)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室 (講談社タイガ)

 

 相変わらず読みやすく面白くて、新人の初シリーズ作品とは思えない安定感。話の中に因果応報の大原則が揺るぎないものとして存在しているので、非常に安心して読めるというのも高ポイント。あと沙羅が可愛いしな!

この巻も未練を残して死んだ者が閻魔大王の娘の前で、生き返りを賭けて、自分が誰に、何故、どうやって殺されたを推理する短編集という形式はそのままに、少しバリエーションを付けてきて飽きさせない感じ。一度死んだ人たちが、自分が殺されるに至った経緯や自分がどう生きてきたのかを振り返って、ちょっとだけ良い方に変わって生き返っていくのというのはこのシリーズのパターンですが、そこも捻ってきた2話目が良かったです。

あと1話目と3話目も、悪い人じゃないんだけどちょっと横暴で周りが見えないというか、自分が正しいという思いが強すぎた人たちが、少しだけ変わっていくその匙加減がまた絶妙で上手いなあと。その中心にこの世ならざる存在として沙羅がいるというのも、構図が決まっているというか、画になるというか、全体的にあるべきものがあるべきところにちゃんとある上に、一本筋の通った話になていて、本当によく出来ているなあと思います。そしてちゃんと面白くて読後感も良いという。次の巻もとても楽しみです。