スカート / 榎本ナリコ

スカート (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

スカート (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

「どうしてこんなに否応なく、オレたちは男と女なのだろう。」
このフレーズがこのマンガのテーマを物語ってる気がします。完成度がどうこうじゃなくて、考えさせられるマンガ。そういう意味では名作か。
主な登場人物は3人。男になりたい女、ゲイの男、「普通」の男。この3人の閉じた輪がこの物語のすべてです。主人公は男になりたい女、葉子。あとがきを見るに、このキャラクターは作者本人の気持ちがかなり投影されてるっぽいです。そして執拗に描かれるのは、男女の枠。男である自由、女である自由。それぞれの不自由。意識しなければ気付かないこのラインを、過剰に意識してしまうがゆえに生じる困難。葉子は男になりたい女として描かれます。男性の自由への純粋な憧れとして。そういう意味では男性に好意を寄せる葉子は、逆に徹底して男性と恋人関係になる事を嫌います。それが自分の女性性の受け入れであるから。この好意と嫌悪の葛藤が読んでて一番、あぁそうか、と感じたところです。男と女の枠を限りなくフリーにしたいと願いながら、冒頭のセリフのようにどうしても男であり、女であるということ。人間って難しいなぁと思います。