涼宮ハルヒの消失 / 谷川流

涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)

びっくりした。すごい面白かった。いや、前3作も面白かったんだけど、もう少し異質な意味で。とりあえず今のところシリーズで一番。今までの作品の感想でハルヒシリーズは、枠の中で素っ頓狂な設定を背負った、魅力的なキャラクターが、一定のパターンで動いてるような作品っていうような捉え方をしていましたが、これはその枠の外から書いたような、そんな作品です。ユートピアな学園物を無自覚に行うのではなくて、それを作品内で主人公が見つめなおす話。常に事態に巻き込まれる側だったキョンが、その事態そのものの消失に当たって、枠組み自体を省みる話。SOS団というユートピア系な世界を、外から眺めなおして、その現象自体の当事者になるまでの話。一応シリーズのターニングポイントになるのではないでしょうか。
今まで出てきた設定も、伏線もフルに使ってこれだけの話ができるのだったら、同じ長編でも枠の中でまったり遊んで終わった溜息とかはなんだったのでしょう。こっちは、緊張感もあるし、盛り上がりもありますし。ただ、話としてそれほど変わったものでもないのは事実なので、今までのやってきたことの積み重ねがこの話を面白くしてる事も否めないです。あと、時間移動やパラレルワールドの整合性は、頭の中で訳わかんなくなってますけど。伏線の方は、作者が最初から意図していたのか、後から拾ったのかわかりませんが、これだけキレイに収まってれば読者から見ればどっちにしろ大差はありません。七夕の話とか。あと、長門さんはいろんな意味で大活躍です。長門さんはお気に入りなのでうれしいところ。そして、まだこのシリーズに描ける余地は十分ありそうなので、次の長編も期待大です。