ゆびさきミルクティー 4巻 / 宮野ともちか

ゆびさきミルクティー 4 (ジェッツコミックス)

ゆびさきミルクティー 4 (ジェッツコミックス)

ずるいなぁ、このマンガ。
キャラクターやシチュエーションの魅力も過剰すぎるほどに詰めこんであるのですが、やっぱりこの人は心理描写が上手なんだと思います。先輩は由紀の考えてる事がさっぱり分からないと言っていましたけど。
私はこの話を由紀のモラトリアム物語と捉えてるのですが、成長する先が「男性」で逃避の手段が女装だから話がこじれます。男なんてと思ってる青年が女に憧れて女装してるだけならまだしも、そこに妹的存在やクラスメイトから迫られて結局自分の中の男性性が抑えられなくなって、そのことでまた男である自分に自己嫌悪でぐるっと一周。ひだりには保護者然として水面にはクラスメイト然として男であることから逃避し続ける訳だから、結論なんて出せる訳がなく由紀は優柔不断なままで話がこじれます。そのくせ独占欲は人一倍強くてそれに気付いてまた自己嫌悪するんだからなんとも。本来男だ女だを抜きで付き合えるはずだった男友達にまで、女装姿の時に迫られれば流されて手を出してしまうんだから業が深いったらありゃしません。そもそも、こういう性格をした奴が男の姿でも女装しててももてるって所が設定の妙。逃避を続ける由紀が自分からにしろ迫られてでにしろ何らかの結論を出すまで話には決着がつかないし、つかなければ自分の葛藤に周りを巻き込んで話が大きくなってずっと続けられると。やっぱり池田由紀ってキャラクターはずるいです。
透明感のある絵は大変好み。話を広げすぎて収拾がつかなくなる前にきちんと決着をつけてくれればなと思います。
満足度:A