絶望系 閉じられた世界 / 谷川流

絶望系 閉じられた世界 (電撃文庫 1078)

絶望系 閉じられた世界 (電撃文庫 1078)

なんとも言いえないのは、要するに何にも書いてないに等しいからで、その虚無的な部分こそがこの小説の本質的な部分なのかも。確かに実験作。本気でこんなことかかれたら、作者が作家業に疲れてしまったのではないかと心配します。本気なのかもしれませんが。

この世には、うんざりすることが多すぎる。
たとえば、八月なのにやたら涼しいとか。
読んだ覚えのない者たちが突然部屋にやってきたりとか。
その連中が何を言っても出て行こうとしないこととか。
その上、中身の伴わない主張を延々と聞かされ続けたりとか。
あるいは、幼い頃から知っている馴染みの少女が連続殺人犯だったりとか。
そんな些少なことほど、うんざり感も加速する。
致命的だ。

この導入部分が要するにこの小説なのかなと思います。世界、あるいは物語世界は何もかもうんざりで、ニヒリスティックな態度で狂った様を描写し続け、舞台装置としての設定やキャラクターは回り続け、その本質はメインキャラクターを弄ぶというだけ。そんな小説。
そんな空っぽの物語の中に投げ込まれるのは、ありとあらゆる要素たち。そして特にライトノベル的な要素たち。落ちモノ的に部屋に突然やってくる浴衣金髪美人の天使と全裸の幼女の死神はひたすら下品なトークを繰り広げ、暑苦しい格好の無口無反応悪魔青年はバーチャロンをやり続け、幽霊青年はひたすら鬱に沈み続け、姉妹の妹も姉もある種萌えキャラ的で、それでいて狂っていて、殺人は発生し、絶望は蔓延し、世界は壊れていて、世界観が語られ、哲学が語られ、物語は閉じる。それでも、その設定過剰は空転を続けてなにもかもむなしくうんざりで致命的。いろんな要素を与えられ舞台で踊る魂のない人形劇の様。物語なんてどうせこんなもんだ的な虚無主義。そんな感じ。
とりあえず読んでて楽しいものじゃないです。気の滅入る議論やうんざりする展開の連続。読み終わった後の時間を無駄にした感。うーーん。
満足度:D