円環少女 ①バベル再臨 / 長谷敏司

円環少女 (角川スニーカー文庫)

円環少女 (角川スニーカー文庫)

非常に面白かった!
でもまだまだこれだけじゃもの足りません。早く続きを! もしくは番外編を! 外伝を!
初っ端から過剰なまでの設定の渦と、読みやすいとは言い難い文章にちょっと辛いかなという印象を受けますが、そこさえ乗り切れば後は素晴らしい娯楽大作です。
魔法の無い世界地球における魔術師達の戦い…のような気もしますが、細かい設定は上げると本当にきりが無いので読んでみてくださいとしか言いようがありません。様々な魔法体系や、世界設定の魅力は十分。一冊の中に説明をこれほどに詰め込んだ上でまだ説明不足を感じてしまうような膨大な設定ですが、そこまで細かいことを気にしないでもこの世界に浸れます。ただページ数の都合で入らなくなったという世界や魔法などの設定の解説は、次巻には是非ともつけて欲しいところです。
キャラクターも十分魅力的。主人公の仁の周りに集まるのが、幼なじみの上司京香に無口な同僚の高校生係官瑞希に素直な新米魔導師高校生きづなに面倒を見ている刻印魔導師でサディスティックな少女メイゼルとヒロイン大展開になってくるともはやサービス精神が旺盛なのかあざといのかよくわからなくなってきますが、それぞれのキャラがそれぞれの思いを胸にそれぞれの戦いを生きる姿は魅力的。敵方のキャラクター達もそれぞれ魅力的です。
ストーリーは表面上の幸せな生活を描きつつその裏の過酷で残酷な現実を描き、最後のやるせない戦いに続いていく感じ。奇跡というものを巡る悲壮感と残酷さとやるせなさと、そういう風にしか生きられない人間の弱さと、それでも貫く強い思いが胸を打ちます。独特の言い回しの文章もわかりくくはありますが、リズムよく読めて好みでした。
ただ、設定の詰め込みすぎか心理描写が飛んでる気がしたり、そこまで詰め込んでいても設定でよくわからないところがあったり、キャラの背景をもっと書き込んで欲しかったりと、もっといろいろ書けそうなのにと思う点もあり。もっとこの世界の物語がたくさん読みたいです。小学校を舞台にした仁とメイゼルの話であっても、高校を舞台にした瑞希ときづなの話であっても、神聖騎士団の話でも、公館の話でも、ジェルヴェーヌの話でもなんでもいいですから。娯楽大作になる可能性を十分に持った物語だと思います。
満足度:A