ネコソギラジカル 下巻 / 西尾維新

ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)

ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)

すごい。他に言葉も無いです。
今までのキャラクターや伏線を総動員して、いーちゃんの成長物語が描かれているっていうと普通な感じですが、なんかもう色々すごいです。圧倒的。こんな言葉は陳腐でしかありませんが、西尾維新は天才で、戯言シリーズは傑作だと思います。
過剰に装飾された文章とか、記号的なキャラクターとか、しっかり計算されていることのうかがえる構成とか、技術的な部分での巧さもありますが、ともすればそれによって薄っぺらくなりかねない内容の部分の凄み。記号的で過剰なキャラクターには血が通ってるように見えますし、あまりにも突飛なはずの物語からは心に響くようなリアリティを感じられました。
玖渚との依存しあうような奇妙な関係の清算から始まる下巻は、その玖渚との会話が既に圧巻。その後も様々な伏線を回収し、気になっていたことを片付けながら、あくまでもいーちゃんの物語として話は進み、つけるべき決着へ。生きること、死ぬこと、他人と自分、親と子。過去、未来、傷。壊れたような世界の中で繰り広げられるのは、あまりにも真っ当なそんなこと。まさしく新青春エンタといった感じ。キャラクター達もやっぱり魅力的。いーちゃんは前向きに進みだし、哀川さんは人類最強で、その他数え切れないキャラクターたちが生きている様が素敵です。


戯言シリーズを知って読みだしたのが去年。そしてこの物語を大学生という時間でリアルタイムに読めたことに感謝。この物語にここまで没頭することは今でしか出来なかったような。読んでいると色々考えさせられてしまいます。戯言シリーズに引きずり込まれる感じは、自分自身に向き合わざるをえないようであまりうれしくない感じでしたが、それでも、今これを読めて良かったとしかいいようがありません。


さぁ、僕の隣には誰がいる? 僕の周りには誰がいる?


満足度:A+