サマー/タイム/トラベラー 2 / 新城カズマ

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

2巻まで読んでよかったです。
とても普通な時間に関するSF小説で、これ以上ないほどにストレートな青春小説。もうしばらくは青春小説はおなか一杯というくらいに、青春小説を読んだなぁという気分で一杯です。
1巻で感じた頭の良すぎる高校生達へのイライラや、膨大なSF文献の羅列、頭でっかち気味な理論の応酬などの読みづらかった部分も、2巻を読み終わればそのこと事態に意味があったのだなと感じました。なんとなくな不安や不穏さばかりが募っていった話が、2巻で綺麗にその実の姿を見せて、きっちり収束するところに収束したという感じ。
結局「プロジェクト」は砂糖菓子作りの閉塞したユートピアで、そこに留まろうとしても、時間の流れはそれを許さなかったというような話なのだと思いました。悠有はその象徴として時の彼方へ跳んでいって、主人公は未来への不安に決着をつけて。何とか保とうとした息の詰まるような、それでいて悪くない現在を、それでも希望のない未来へとすすんでいくために解体したような。
もやもやした感触や過剰に感傷的な雰囲気は最初は気持ち悪さを感じましたが、読み進めるうちに惹き込まれるような感じでした。主人公や響子の考え方や性格は好きじゃないですが、そういう傾向が自分にもあるだけに引き付けられてしまってなんとも。この高校生達は頭が良すぎですけど。
それにしても作者は頭が良いというか、キャラクターたちが口にする理論をよくこんなにほいほいと考え付くものだなぁと思いました。作家というのはそういうものなのでしょうか。
満足度:A-