SHI-NO -天使と悪魔- / 上月雨音

SHI‐NO―天使と悪魔 (富士見ミステリー文庫)

SHI‐NO―天使と悪魔 (富士見ミステリー文庫)

目指している場所はなんとなくわかるんですが、ちょっとそこに届いてないかなぁという印象。
志乃が関わる事件と僕が関わる事件を平行して進みます。ただ二つの事件の関連性はなく、志乃の事件のほうは次の巻へ続く模様。そしてこの巻からメインで描きたかったテーマに入るようで、事件がおきてそれを解決するという流れの他に、志乃と僕の間の関係性について描かれています。その関係性を描くために真白と大垣というキャラクターという同じ構図の二人を配置してるのですが、このあたりのテーマ関係はあんまり上手く描けてないような感じです。「死」とか「生」とか「悪」とか「正義」とか、そういう観念的で哲学的なことを扱うにしては、ちょっと薄いというか、凄みが足りないみたい。そういった説明が冗長なために、ストーリーやキャラクターで楽しむのも難しいですし。やっていることがメフィストファウスト系に近いのですが、あの辺と比べると切迫感があまりありません。真白のキャラクターにもう少し得体の知れ無い恐さみたいなものがあれば、また違ったのかもしれませんが。
あと、ラストで語られる話があまりに突飛に思えたのがなんとも。関係性とか設定そのものは面白いと思うのですが、それを無理やり納得させるだけの吸引力には欠けていたかなというのが正直な印象です。
色々言ってますが、なんだかんだでちゃんと面白く読めるし、この手の話は嫌いじゃないので、前後的な関係になるという次の巻には期待しています。真白と志乃の掛け合いはもっと増量して欲しいかなぁ、なんて思ったり。あと、このシリーズはイラストが素敵です。本編にも良く合っていると思います。
満足度:C+