クジラのソラ02 / 瀬尾つかさ

クジラのソラ〈02〉 (富士見ファンタジア文庫)

クジラのソラ〈02〉 (富士見ファンタジア文庫)

そんな気はしていたけど、ちょっと遠くへいっちゃたかな。
今回はワールドグランプリということで、浮遊する島ヴァレンタイン島での世界大会が描かれてます。アウターシンガーと一口に言ってもまだまだ上があるということがわかったり、智香の思いが描かれていたり、ジュライの弱点が提示されたりと《ゲーム》という競技を闘う少女たちのスポーツものとも見れますし、新キャラのアリスが聖一に近づいたり、郁恵が聖一にべったりだったりして、ちょっとムカっとっしている雫とか恋愛ものに持っていけそうな空気もありつつ、本題は別の方向へ。異星人の存在、宇宙へ旅立った雫の兄を含めた過去の優勝者達、そして白いクジラの存在とアウターシンガーの謎。アウターシンガー同士の戦いとなった《ゲーム》の最中、雫や冬湖には隔されていたそれらの要素が繋がり、話は新たな局面へ。
しかし、この設定というか話の展開はちょっと強引かと思います。全くの予想外な訳ではなかったし、理解できない訳でも無いのですが、強烈なスケールの拡大に個人的には呆気にとられてしまいました。確かにどうしてこんな《ゲーム》が異星人によってもたらされたかの解答ではありますけど。
そう感じた理由は、そんな大きくなった話に巻き込まれていく雫たちの気持ちがちょっと分からなかったというのが大きいかも。たとえその先に死のリスクがあるとしても自分には《ゲーム》こそが全てだと考える冬湖の気持ちはわからくもないですが、雫に対しての言葉は一緒に闘って死んでくれと言っているように聞こえます。見返りとして得るものがあまり提示されてないからかもしれませんが、《ゲーム》に関わる人間がどうしてここまでのリスクを背負うのかちょっと謎です。
ただ、この何かを目指すキャラクター達のまっすぐさは素敵だと思います。基本的に前向きで真っ直ぐな感情が表に出ているので、割と悲壮な設定でも明るく読める感じです。文章のシンプルさもそういった印象を強くしているところかも知れないと思います。
なにはともあれ迎えた新局面はこれはこれで魅力的ではあるので、どのような話に展開していくのか待ちたいと思います。
満足度:B+