レジンキャストミルク6 / 藤原祐

ついにラスボス格が現れ、謎の多くが明かされた第6巻。
この小説は、基本的には王道の能力者バトルものだと思うのです。今回の展開も、味方サイドと敵サイドに能力者たちが別れ、つい敵の大ボスが現れ、そして自分たちだけですべてを背負おうとした主人公達を、今までの仲間達が支えるという、それだけを聞いたらかなり王道な展開。
ただこの小説、キャラクター造形もその思考も設定も展開もどこか悪趣味に歪んでいて、それが王道を1回半捩ったような独特の味になっています。私はこの感覚が好きでたまりません。
話としてはついに現れた城島樹の口から、多くの真実が語られると言う前回に続いての急展開。そして今まで自分がしてきたことを逆に突きつけられる形で、晶は追い詰められていきます。ただ、敵側の城島樹の目的も思考も、味方側の晶の目的も思考も、どっちにしろ釈然としないというか、何かがおかしい感じがするのがレジミルらしいところ。どちらも真っ当な「正義」ではないような。親子喧嘩が世界の命運を巻き込む展開も別に珍しいものでは無いはずなのに、どこか釈然としない引っかかりを感じます。そして、父親越えの物語は数多くても、家族丸ごと敵に回すのは珍しいかも。でも、この気持ち悪さがこの作品の魅力なのだと思います。
バトル面では、ピンチに訪れる強力な仲間というベタベタなシチュエーションのカタルシスはやっぱり良いものがあります。特に今回はネア。今までただの変なキャラだという印象しかありませんでしたが、今回は格好良い所を見せてくれます。
すべてを奪われても、残されるものは絆。まだ伏せられたカードはあるだろうクライマックス、どういう展開が来るのか、楽しみです。
満足度:A