バニラ A sweet partner / アサウラ

バニラ―A sweet partner (スーパーダッシュ文庫)

バニラ―A sweet partner (スーパーダッシュ文庫)

世界に拒絶され、世界を拒絶した二人の少女の、身を寄せ合っての逃避行。
手にしたものは、銃という世界に抗う力。
求めたものは、二人の刹那の幸せ。
扱っているテーマも、描かれるものも、個人なに好みに直撃な一冊でした。両親や兄弟に問題を抱えて、当たり前の世の中で生きることも、大人になることも拒絶するナオとケイという二人の少女の逃避行は、しかし当たり前のように追い詰められて行きます。たとえ銃という銃を手にしても、世界は壊せない。それでも、少しでも今の幸せを、二人の時間をという二人が切ないです。この世の中に背を向けて、どんどん苦しい状態になっても、その逃避行の中で感じられる不思議な高揚感が良かったです。
この小説だと、その子供である少女に対して大人である二人の刑事が対比するように描かれるのが特徴的。少女たちを追い詰めながら、本来は救わなければならないはずだったと苦しみもがく二人の姿が、やるせなさを感じさせます。そして、そこが描かれるからこそ、二人の少女の、幼稚で刹那的でも濃密な閉じた世界を感じさせてくれるのだと思いました。
ただ、好みなだけにもうちょっと、物語にあと一歩の吸引力がほしかったなというのも感じるところ。心に痛みを感じるほどの悲痛さや、触れれば壊れてしまいそうな繊細さというものを、もっと強烈に感じさせてくれるともっと良かったと思います。それから、ナオとケイの関係の描写がちょっと表面的に感じた、といったら贅沢でしょうか。
極めてどうでもいいのですが、こういう少女の逃避行を読んでいるとt.A.T.uのAll the Things She SaidやNot Gonna Get Usを思い出します。私だけ?
満足度:B+