時載りリンネ! 1 はじまりの本

時載りリンネ!〈1〉はじまりの本 (角川スニーカー文庫)

時載りリンネ!〈1〉はじまりの本 (角川スニーカー文庫)

わくわくするような大冒険がしてみたいな。物語みたいな。悪党に狙われて困っている女の子を颯爽と救うような話が理想ね。日常のの中のふとしたできごとから幕を開けて、しだいに謎が膨らんでいく不思議な展開、中盤はミステリーあり、活劇あり、友情ありの総天然色の大冒険よ。お待ちかねのクライマックスには悪党をやっつけて、もちろん最後はきれいな大団円を迎えるの。すべてが終わったあと、前よりも少しだけ世界が輝いて見えたら素敵よね!」

まさしくそんな素敵な話。
本を読むことを食事の代わりとし、200万時の読書で時間を1秒止めることのできる時載りの少女リンネと、普通の少年久高の繰り広げる物語。時載りなのに読書が嫌いな元気いっぱいの少女と、ちょっと冷めた少年のコンビはなかなかいい感じです。脇キャラもなかなか魅力的ですし。
でも、この小説の一番の魅力は文体というか、語り口が作り出す雰囲気なような気がします。児童文学っぽさを感じさせるような、少年少女のわくわく感や無邪気さが伝わってくるような感じがして、とても読み心地が良いです。平易な文章に見えて、嫌味にならない程度に衒学的な知識が散らばっていたり、凝った言い回しをしてみたりするのが良いのかも。
物語の方は、児童文学っぽさに、異能バトル要素や、魔女っ娘要素、ミステリー要素などが混ざっていて、中盤からはちょっとごちゃついて混沌としていたような感じも。これはこれで面白かったのですが、個人的には、序盤の雰囲気を大事にして、日常のちょっとした不思議な出来事などをメインにしてくれた方が好みかなぁとは思いました。
まだ1巻ですし、爺ちゃんにリンネのパパに凪の秘密にと、この先も隠された謎は多そうなので、この先も楽しみ。時載りの時間に対する感覚がちょっと読んでいてよく分からなかったのですが、この先もリンネが変わらずにいてくれたらなぁという淡い期待を込めて。
満足度:A-