ヒミツのテックガール ぺけ計画と転校生 / 平城山工

着地点に何があるのか、着地点があるのかどうかすら定かではないけれど、とりあえず飛んでみよう。

筑波音高専というおかしな学校を舞台に、エキセントリックな工学少女たちが繰り広げるドタバタコメディ作品。
とにもかくにもこの、「とりあえず作る! だって面白そうじゃん! どうなるかは知らない!」なものづくりスピリットが全体に溢れている感じがとても素敵な一冊でした。理論よりも確証よりも、とりあえずそうやって動いてるからそれをどうにかしちゃえ的な勢いといい加減さとノリが大変好み。
とはいえ、これだけ常識外れな科学力を持った少女たちに、こんな発想でホイホイと発明をされた日には、世界の終わりはすぐそばにありそうな感じもして非常に恐ろしくもあるのですけれども。
そんな感じでとにもかくにも勢いのある作品。身の回りでおかしなことばかり起こる少女ハルミが筑波音高専に放り込まれて物語はスタートするのですが、そこからのアクセル踏みっぱなしノンストップ具合が凄いです。変人奇人揃いなクラスメイト&先生に、色々自由すぎる場所の数々、そして巻き起こる混沌の名がぴったりな大騒動。
ブレーキなんかいらないとばかりに暴走を続ける物語は、そこかしこに作者の信念と愛が詰まっているような感じ。とにかくカオスではありながらむやみやたらと楽しそうで、何か読んでいてこっちまで楽しい気分になれるような勢いがありました。
ただ、カオスっぷりが魅力な物語ではあるのですが、勢いが良すぎて空転している感じもかなりあるような気がします。何が起きているのか把握しづらい文章の読みづらさや、キャラクターたちの感情の流れが唐突でついていけないような感じもあったりで、その辺りが奨励賞作品な所以なのかなとも思いました。
とはいえ、読んでいて非常にわくわくさせてくれるような、可能性を感じる一冊でした。この作者のこれからの作品に期待大です。