黄昏色の詠使い4 踊る世界、イヴの調律 / 細音啓

前の巻から見えてきていたクルーエルと名詠に関する大きな謎が少しづつ明らかになってきた4巻。話としては、あまり大きな動きがあった訳でないので繋ぎの一冊という感じもするのですが、謎の見せ方が巧くてぐっと惹きつけられるものがありました。
5色の名詠、そしてセラフィノ音語という言葉に関する、キャラクター達だけでなく読者にも常識として与えられた知識を、様々のキャラクターに視点を入れ替えながら、少しづつ覆していく辺りは見事。謎が明らかになる中で話は大きくなりながらも、クルーエルとネイトの二人の絆という軸がぶれないのが良い感じ。むしろこうなってくるからこそ、二人の絆が試されるという感じ。
そしてその中でも、今回はネイトの頑張りが見どころ。クルーエルの言葉にまだ返事はできなくても、クルーエルを守るためにこんなに強くなれるというのは素敵です。2人がお互いを信じて支え合い、周りの友人や大人たちもそれを見守っているという関係はいいものだなと。
この巻で<夜>や<その約束に牙剥く者>が登場し一気に謎は核心に迫ってきた雰囲気。名詠に関する話が世界や存在を巡るちょっと抽象的で観念的な話に踏み込みそうなのが少し心配な気もしつつ、次の巻が大きな話の区切りになるようなので、楽しみに待ちたいと思います。
満足度:A−